- 学長通信 -

三重大学長ブログです。

私たちは変わります

 「私たちは変わります」が今回のメッセージです。病院関係者は記憶に残っていると思います。6年前に病院機能評価を受けるに当たっての標語がこの言葉でした。それが書かれたピンクのワッペンを胸に着け、診療や病院業務に従事しました。おおむね良好な評価でしたが、中には「何がどのように変わるの」と皮肉混じりで揶揄されることもありました。ショッキングピンクで色鮮やかでしたので、熟年男性には少し気恥ずかしさもありました。しかし、共通の認識を持つことや外部への情報発信には大いに役立ったと憶えています。

 個人や組織は常に自らの力で変革を遂げなければなりません。そのために必要なことを考えてみましょう。ちょっと大げさかもしれませんがローマを参考にするとわかりやすいのではと思います。ローマはアテネの教訓として「一人の人間の力量に頼る社会は危ない」と考えました。そのため平民からも優れた人材を集めて、元老院を中心とした統治体制の中でそれらの人材を活用していくやり方を取りました。大学などの既存の組織においての運営は学長一人に依存するのではなく共通の認識を持った大学人によってなされるべきでしょう。大学という組織が衰退するのは、人財が払底するのではなく、その人財を活用するメカニズムが狂ってくるからでしょう。絶えず人財を生かすことを議論しながら、間違いを犯さない運営を図らなければなりません。まずは教職員、学生が三重大学に共通の認識を持つことを形成することから取り組みましょう。

 次は優先順位を考えることでしょう。問題のあり方が分かったとしても、複数の問題を同時に解決できるわけではありません。しかし、人は時として、それらを同時に解決しようと焦って失敗したり、あるいは最初に片づけるべき問題を後回しにしたため、かえって状況を混乱に導いたりすることはしばしば経験することです。鳩山前総理大臣の間違いはここに起因していたのでしょう。たとえ時間がかかろうとも、一つ一つの課題を優先順位に従ってクリアしていくことで確実にゴールにたどり着くことができるはずです。ローマはこのことを着実に実践し、栄光を築き上げました。

 大学人にとって運命共同体としての意識も重要です。特に、法人化後はこのことが強く求められています。主要幹線375本、全長8万キロにも及ぶローマ街道は各地との文化の交流を促進し、軍事面以外でも敗者を同化する役割も努めました。同じ古代帝国であった中国にも街道が存在していましたが、それを張り巡らせるよりも万里の長城のような強大な防壁の建設にエネルギーを注ぎました。人の往来を絶つ防壁と人の往来を促進する街道と両者の生き方は全く違いました。そして、ローマ街道網はパクスロマーナ、ローマの平和につながりました。このことは各学部や研究科の密接な連携の重要性を教えてくれています。人事交流はもとより研究を共有することを積極的に推進しなければなりません。そのことが大学運営を円滑にし、新たな展開を生むと信じます。

 運命共同体としての組織運営であるにしても、やはりそのリーダーは最も重要であります。リーダーの条件として人を率いる才能と同時に人に慕われる才能を持っていなければ、周囲はリーダーとして認めないでしょう。たとえ苦い現実を語っても、教職員が逆に元気が与えられ、明日への希望をえた気分になる話ができるリーダーが求められています。私自身そのようになるように精進を重ねますのでよろしくご協力お願いします。さらに、次代に向かって、地域のイノベーションをリードする人財を育てていきたいと考えています。

 三重大学を強く意識して情報発信をしてくれている教職員、学生が多くいます。

 三重大学の学生は温和しいと評価する向きもありますが、なかなかどうして積極的に自らの変身に取り組んでいるグループもたくさんあります。環境ISO学生委員会、ユネスコクラブ、献血推進サークル、テーブルフォーツーサークル、ロボコンクラブ、かめっぷり、BBS、応援団などあげ出すときりがありません。(これ以外にも多くのサークルが活躍してくれています) 週末に大学内を回ると、至るところで学生達の元気な声が響き渡っています。運動部、文化サークルともに練習の成果を発揮して欲しいと願っています。その活躍が三重大学何々クラブとして新聞、テレビやネットで踊ることを夢みています。

 ダーウインの「種の起源」に「もっとも強いものが生き残るのではなく、もっとも賢いものが生き延びるのでもない。変化できるものが唯一生き永らえる」とあります。われわれが生き残るために変わらなければなりません。