- 学長通信 -

三重大学長ブログです。

還暦を迎えた大学の新しい歩み

 先日、開学60周年の記念式典、記念講演会、学生による祝賀演奏会、祝賀懇談会を開催し、今後益々の発展を誓い合いました。特に、学生達の活躍や盛り上がりには大いに勇気づけられました。その時のメッセージを皆さんに送ります。

 東洋の世界での60年は還暦で、十干十二支が一巡し、原点に戻ることを意味します。もう一度生まれ変わり、新しい人生を意義あるように送るために魔よけの赤色の産着を贈る習慣ができたといわれているのはご存じの通りです。三重大学はこれを契機に赤ん坊のような素直な気持ちで新しいものの創成に立ち向かおうではありませんか。西洋では「還暦のお祝い」という習慣はないようですが、60周年のお祝いや象徴がダイヤモンドのようです。三重大学は人財ダイヤモンドの宝庫です。それを見つけ、磨いていくことが大学の使命と考えています。

 三重大学発足の歴史を振り返ります。昭和24年(1949年)に国立三重大学として発足しました。それから60年が経ちました。三重高等農林学校からの農学部と三重師範学校と三重青年師範学校からの学芸学部の2学部でスタートし、その後学芸学部は教育学部に改称されています。昭和44年(1969年)工学部が設置され、昭和47年(1972年)には三重県立大学の国立移管により医学部と水産学部が加わりました。昭和58年(1983年)に地域の強い要請もあって人文学部が新設されました。昭和62年(1987年)には農学部と水産学部を改組して、新たに生物資源学部ができました。
平成16年(2004年)に国立大学が独立行政法人化され、教学に加えて大学の経営が任されることになりました。そして、平成21年(2009年)地域イノベーション学研究科が新設され、現在の5学部6研究科となりました。
これまでの伝統をふまえて「三重から世界へ:地域に根ざし、世界に誇れる独自性豊かな教育・研究成果を生み出す。~ 人と自然の調和・共生の中で ~」という三重大学の基本目標を実現していきます。

 三重大学の良き伝統は、教員、職員、学生の一体感です。この精神的根源は現在の大学の前身に由来しています。昭和20年7月の戦災で大学や病院が焼失したとき、教職員が一体となり数日後には授業再開に漕ぎ着けたと大学史にあります。さらに、戦後大学の設置基準をクリアするため、学生が図書の寄附を求めて先輩の家にお願いに廻ったり、演劇やダンスパーティーで資金集めに協力したともあります。その後もこの素晴らしい伝統は連綿として受け継がれ、幾多の大学の危機を救ってくれました。

 三重大学は、教育に力を入れる大学です。考える力、感じる力、コミューニケション力を通して生きる力を涵養することを教育目標として、その達成のためにいろいろな試みを行ってきました。特に教養教育ではスタートアップセミナーとして課題探求型少人数教育をはじめました。「三重大学は良い学生を育てるなー」と多くの皆さんから評価されるようになることを目指します。

 研究では地域の企業との共同研究を積極的に推進しています。平成19年度は中小企業との共同研究件数は全国3位でした。地域での地盤を確固たるものにしています。基礎研究や応用研究で世界に情報を発信できる研究も多く、何人かの先生は世界的な賞を受賞しています。今後は三重大学としての研究の特色を鮮明にするため、研究テーマを絞って大学を挙げて支援する体制を整備します。

 社会貢献についても、県や市の審議会や委員会に多くの先生方が関係していますし、市民への啓発活動も積極的です。日本経済新聞社が調査した平成21年度「大学の地域貢献度」で全国14位、国立大学では6位、東海地区で1位と評価され、地域への貢献度の高さが認められています。附属病院は県民から強い信頼を集め、三重県の医療の中心的役割を果たしています。本年度より東海、東南海地震に備えて三重県と共同で防災コーディネーター養成のための「さきもり塾」を立ち上げ、この方面でも強い指導力を発揮しています。

 伊勢湾に面しているという優れた立地条件を生かして世界一の環境先進大学を目指し、そのための人財育成、研究、社会貢献に精力的に取り組んでいきます。特に学生達が積極的なのは頼もしいかぎりです。

 三重大学への本年度の入学者の40%は三重県出身です。愛知、岐阜、静岡の東海4県を合わせると82%です。まさに地域圏の大学です。これからも地域の皆様に強い信頼をえられる知の拠点としてさらに進化していきましょう。
皆さんが新たな気持ちで2010年が迎えられることを願っています。