- 学長通信 -

三重大学長ブログです。

「コミュニケーション力と愛校心」

   最初の何回かは堅い話が続きますがお許しください。最初からくだけすぎると学長の品格が疑われてもいけませんので。それが済めば、私本来の地を出した楽しいメッセージをお送りしたいと思っています。

 大学、特に国立大学の社会的責任は,自らの規範に従って教育や研究の活動を進め,その水準の向上を目指すことであり、そのために組織として機能的に経営されることが求められます。経営と言いますと多くの人が企業の営利体制をイメージしがちですが、本来の意味はそうではありません。経営の「経」は織物のたて糸ですので物事の道理で普遍的な部分、大学の本来の使命に相当するものです。従って大学経営とは教育・研究・社会貢献に力を尽くすことです。法人化後の大学はこの目的を達成するために自らの財政的基盤を安定しなければなりません。

 多くの大学において,教員が学内の各種運営会議に多くの時間を取られ,本務である教育研究活動、それらを通しての社会貢献に大きな支障を生じているとの指摘がなされています。教学組織(教員の組織)と事務組織の作業分担と連携の関係を明確にして、教員の教育研究に当てる時間を確保し,専念できる体制を作らなければなりません。 それには、教員と事務職員が相互理解の上に協同作業を行うことが大切です。三重大学の教育目標の一つに「コミュニケーション力」をつけることが掲げられていますが、これは、われわれ教職員にも当てはまることは言うまでもありません。

 「コミュニケーション力」の基本となる重要な要素の一つはギブアンドテイクの互恵性でしょうか。人類は進化の過程で自分が協力した場合の損得を計算できる能力を身につけ、全くの赤の他人を極めて近しい親族のように扱えることができるようにもなりました。他人を信用するということをいとわないという気持ちがなければ、人類はコミュニティーを形成することはできなかったでしょう。この高い信頼度にオキシトシンという脳下垂体後葉ホルモンが関係していると考えられています。年をとって懐疑心にさいなまれるようになったり頑固になるのは、ひょっとしてこのホルモンのせいかもしれませんね。

 人々が一致団結して協力するには信頼することが欠かせませんが、それに便乗して良いとこ取りを目論む人がいると困ります。それを排除しないと社会は崩壊します。しかし、人類はそれに対応する策を既に作り出していました。それは宗教です。社会的に結束させるということが宗教の本来の役割と考えられますので、宗教により団結力が高まります。われわれに当てはめるとすれば

「三重大学への愛校心」

でしょう。それがわれわれの結束力を飛躍的に高め、意識改革にもつながります。学園祭などのファイアーストームで火を囲みながら旧制高校の寮歌や母校の校歌を歌い踊りながら同級生や仲間と気持ちを一にしたことを想い出す人も多いでしょう。
学長を中心とする大学本部は、学内のコンピュータネットワークやホームページ,広報誌の活用や,各年代の教職員との懇談などにより,大学運営の問題について,意見を聞くとともに,執行部の考え方を十分説明することが必要であると認識しています。

 また,特に教育内容や学習環境などについては,学生側の立場の意見が重要であり,授業評価やアンケート調査などを通じ,広く学生の意向を把握するよう努める必要があります。 そのため積極的に皆さんとの話し合いを持ちたいと考えていますのでよろしくご協力ください。

 市民の皆様との交流を深めることも大切であると考えています。開かれた大学を目指している三重大学が有意義な社会貢献を果たすためには必要な情報となります。オープンキャンパスなどの機会に多くの方と話を通して、市民に開かれた「知の拠点」を目指します。