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第十一回授業紹介特別編 「心の復興」のための建築学・災害都市計画について、イラン出身・ゲゼール准教授に聞いてみた!

2026.2.12

三重大学広報・渉外室インターンシップ生です!

未来の受験生の皆さんに向けた「おもしろ授業・実習紹介」、第十一回も特別編として、工学部のゲゼール・イェガネ准教授にインタビューへ伺いました!

ゲゼール先生はイラン出身で、2025年度から三重大学の教員を務めていらっしゃいます。海が近い三重大学では、防災や災害復興の研究にも力をいれていますが、今回はゲゼール先生が災害復興のための都市計画を研究テーマに決めたきっかけから、故郷イランでの学生時代のエピソードまで、幅広く語っていただきました。

ぜひ最後までお楽しみください!

ゲゼール先生

―海外出身の先生の目から見て,三重大はどんな印象ですか?

ゲゼール:私は工学部の教員なので、工学部の印象を話しますね。学生はみんな友好的で、なおかつ意欲的な印象です。教室から海が見えるのも嬉しいです。イランの大学も日本と同じように、街によってキャンパスの雰囲気は大きく違います。私は首都のテヘラン出身で、かなり都会的な雰囲気だったので、三重大学とは少し雰囲気が違いました。私の卒業したキャンパスは、昔から都市が整備されている歴史のある道の通りにあったので、日本の都心部の大学のように授業によってキャンパスを移動する学生生活を送っていました。イランでも、地方によっては三重大学と同じように、大きな広いキャンパスがあって、自然と建物がよくミックスした風景の大学もあります。

―三重大ではどんな授業を受け持っていますか?

ゲゼール:学部生向けの授業については、建築計画・都市計画と、都市地域計画、防災都市工学と防災街づくりを教えています。私の専門は災害復興都市計画なので、院生についてはこの分野を専門的に教えています。現時点で私の授業を工学部以外の学生が受講したことはないですが、もし希望があれば他の授業と同様に、申請することで他学部の学生でも受講できます。

―災害復興の都市計画の研究をされているということですが、この研究分野を選ばれたきっかけはありますか?

ゲゼール:大学を卒業した後、イラン国内の建築事務所で何年か働いていたのですが、その当時イランの農村部で大きな地震がありました。その後建築事務所では、被災者のための仮設住宅や仮設の学校の設計や計画を行っていたのですが、政府とNGOによる災害復興のマネジメントがうまくいかず、十分に復興を進めることが本当にできなかったんです。そのことがきっかけで、建築学を通して災害復興や防災に携わりたいと思うようになりました。その後日本に渡り、神戸大学大学院で博士号を取得しました。

―日本の大学で防災を学ぶことを決めたのにも何か理由が?

ゲゼール:元々日本の都市計画や建築には興味があり、大学院入学以前にも何度か訪れたことがありました。大学院博士課程に進むと決めた際に、防災に関する研究が進んでいる大学を探したときに、特に盛んだったのが神戸大学と東北大学の二つだったので、それがきっかけです。日本は防災に関する研究がかなり進んでいる国だと感じています。

 イランにも防災に関する研究をしている大学はありますが、日本を含めた他国と比べると大学の設立や研究が始まってから日が浅く、大学で学ぶ内容・実際に起きる災害・政府の対応の3つがうまく連携できていない部分があります。なので防災については日本が世界で一番研究が進んでいると思い、日本の大学院に進学しました。

 イランもかなり災害の多い国で、断層のある地域があるので地震はほぼ毎年起こっています。また気候変動による大雨や浸水などの被害もあり、日本に少し似ているかもしれません。

ゲゼール先生ゲゼール先生

―今、ゲゼール先生が研究されている具体的なテーマについて教えてください。

ゲゼール:災害復興のための都市計画と街づくり、そしてコミュニティ作りについて研究しています。特に今行っているのは、公共空間や広場などのパブリックスペースと、災害復興後の被災者のウェルビーイングに関する研究です。建築学・都市計画といっても、比較的「人」に寄り添った学問です。

災害が起こる前、人々は街で普通の生活を送り、地域のコミュニティセンターなどに行けば周囲の人同士で交流できる状態にあります。そこからもし災害が発生して、街を復興するとなった場合、もちろん最優先は仮設住宅や公営住宅などによる身の安全の対策です。でも復興された街はそれだけじゃない。人と人との関係性も大切なんです。災害発生後、被災者はセンシティブな状況にありますが、パブリックスペースがあれば他の被災者と交流することができます。災害の経験を話して、災害が起こる前と変わらない普通の生活を送ることで、心の復興を進めることができます。

「都市計画」というとゼロから街を作っていくように聞こえるかもしれませんが、災害復興はゼロから作り直すわけではありません。昔の人の経験や、災害前の生活やそれに密着してきた場所の影響を大きく受けます。「どこにどんな建物があったか」そのものも大切ですが、それ以上に「その建物・場所で地域住民がどんな活動をしていたか」「そこで人々がどんな経験をしていたか」が大切です。パブリックスペースがあれば、人々が交流できる場所となり、社会的な活動をすることができます。例えば、日本の「祭り」文化は地域やそこに暮らす人々にとって大切ですよね。祭りをする場所がなくなってしまった場合、その地域の人々は居心地が悪くなってしまいます。そうした施設や場所を作る・再生することも復興においては重要です。地域住民が復興の計画に参加して、自分の意見を出せるようにすることで、「ここが私の街だ」という帰属意識が生まれます。だから私の研究では、パブリックスペースと場所作りにフォーカスしているんです。

昔から地域で大切にされてきた場所や建物を再生しつつ、「将来この街に何が欲しいか」を考えてアップデートすることが大切です。未来のイメージがあれば、街は復興できます。例えば東北の場合、復興された街に作られたスケートボードパークが人気です。災害以前はありませんでしたが、その後オリンピックでスケートボードが人気になったことで、復興する際にスケートボードパークを作ろうという動きがあり、今では地域にとっても大切な場所になっています。

―人によっては大学受験の際にやりたい学問が特になく進路選択に悩むこともありますが、先生は「建築学を研究したい」という気持ちはいつ頃から決まっていましたか?

ゲゼール:私もストレートには決まりませんでした。高校生の頃は、デザインとアート、あとはディープシンキングと問題解決が好きでした。叔父が建築家だったので、子供の頃から建築模型はよく見ていたので、私自身もだんだんと建築学に興味を持つようになったのかもしれません。その後大学で建築学を勉強しはじめたとき、建築学を通して社会的なアプローチをすることに興味が湧いてきました。そこで大学院修士課程では都市デザインを専攻することにしました。

イランでは実践的な経験が重要視されていて、大学生や院生が学生のうちから企業に所属してフルタイムで働くことが多いです。なので私も大学3年から修士課程修了まで、大学に通いながら建築事務所で働いていました。その頃は大学の課題提出だけじゃなく、デザインコンペなどにも興味があったので、色々なことに興味を持って参加していました。ただ、それでも私にとって一番大切だったのは、都市問題と社会的な問題でした。その後イランで大きな地震が発生して、建築学の中でも特に防災に関わる分野を学びたいと思ったので、現在のテーマである災害都市計画を研究するようになりました。

学生のインタビューを受けるゲゼール先生

―ちなみに、先生の子供の頃の将来の夢は何だったんですか?

ゲゼール:子供の時は、ダンサーになりたかったです。あとは子供の頃からデザインや物づくりをすることが好きだったので、そういった分野の仕事がしたいと思っていました。ただ、イランでは大学で学べることや就ける仕事の選択肢は狭くて、エンジニアと弁護士と医者がメジャーです。法学や生物学はあまり好きじゃなかったので、アートに一番近い分野だと思い、建築学を選びました。

―学生時代にやっておいた方がいいと思うことはありますか?

ゲゼール:色々な経験をした方がいいと思います。ワークショップに参加したり、外国語を学んだり、自信と勇気をもって新しいことにチャレンジしてほしいです。大学生活は、専門分野の勉強だけじゃないです。自分の興味と専門分野をうまく混ぜて学び楽しむことで、大学生活や将来の仕事が充実したものになると思います。

特に、外国語を学ぶといいと思います。私の母国語はペルシア語ですが、大学院生の頃にかなり英語を学んだことで新しいアイデアをたくさん得られたので、新しい道が開けたと感じています。都市計画についても、最初はペルシア語で学んだり調べたりしていました。でもペルシア語で書かれた文献や論文はどれも似たような内容や分野を扱っているものが多かったんです。それが、英語で調べられるようになると、世界中からいろんな人のアイデアを学べるようになりました。例えば日本人が書いた建築学の文献にも、英語に翻訳されたものがたくさんあります。英語が使えるようになったことで、世界中の新しいアイデアを得られるようになり、自分自身の考え方もより洗練されていったように思います。母国語は深い思考をするために重要ですが、英語に限らず外国語を使えるようになることは、知識を広げるためにとても大切です。言語は考え方そのものです。日本語と英語とペルシア語では考え方や色々なやり方が違います。恥ずかしがらずに、ちょっとでも学んでみると良いと思います。

―最後に、これから大学を受験する高校生に伝えたいことはありますか?

ゲゼール:好奇心と勇気を持って、新しいものを学んでください。そしてどんどん質問をしてください。悪い質問はありません。日本人は文化的に、あまり質問を積極的にしない学生が多いですが、恥ずかしがらずに、教員にも他の人にもぜひ質問をぶつけてください。

ゲゼール先生とインタビュアーの学生