グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

授業紹介特別編 進化のロジックから昆虫の不思議を解明! 鈴木准教授にぶっちゃけインタビュー!

2026.2. 5

三重大学広報・渉外室インターンシップ生です!

未来の受験生の皆さんに向けた「おもしろ授業・実習紹介」第十回、今回も特別編として、生物資源学部の鈴木紀之准教授へインタビューを行いました!

昆虫と聞くと「標本」や「新種」といったキーワードが浮かびがちですが、三重大学で学べるのは一ひねりある角度からのアプローチ、「昆虫生態学」。今回はその生態学の面白さから三重大の印象まで、鈴木先生に忌憚なく語っていただきました!

ぜひ最後までお楽しみください!

鈴木先生

―2025年春に着任されて半年ほど経った頃かと思いますが、三重大学にはどのような印象をお持ちですか?

鈴木:三重大に来る前は高知大学にいたのですが、地方の国立大学で同じ農学部系、またキャンパスの近くに海と山があるということもあって、なんとなく雰囲気は似ているなと感じています。もちろん違う部分はあって、例えば、高知大学は農林海洋科学部だけキャンパスが離れていたので人が非常に少なかったのですが、三重大は一箇所に全学部がまとまっているので、高知大よりは人が少し多いように感じます。人が多くてキャンパスが賑わっていると、何かするにしても選択肢が増えるので良いですね。ただ、まだ赴任して日も浅いので、正直なところ、あまりこれといった印象はありません(笑)。

―三重大学の周りは比較的緑が豊かですが、昆虫学の先生から見て三重大周辺の環境はどうですか?

鈴木:テントウムシやチョウが研究対象なのですが、今は使えそうなフィールドを探しているところです。都市部に住んでいるとちょっとした調査をするにもフィールドが遠くて大変ですが、三重大の周りには畑や田んぼといった里山の環境がありますし、少し行けば山もある。特に生態学のようなフィールドワークをするなら、自然が近いこの環境はすごく良いと思います。アクセスの良さはデータの質や量にも影響してくるので、様々な環境があるのはありがたいことです。生物を研究するなら、フィールドが近く調査しやすいというのはメリットだと思います。

―先生の研究テーマを教えてください。

鈴木:最近は沖縄の西表島に生息するハラアカナナホシキンカメムシというカメムシについて研究しています。西表島のマングローブ林には魚やカニがたくさんいる印象があると思いますが、そこに住む昆虫にも固有のものがいます。僕が調べているこのカメムシは、熱帯の中でもマングローブという特定の環境にしかいない珍しい種類で、彼らが特殊な環境でどう適応しているのか、なぜそこにしかいないのかを調べています。

 注目しているのは、マングローブでなければいけない理由があまりないということです。昆虫の餌になる葉っぱはどこでも得られますが、現実には彼らはマングローブにしか生息していません。沖縄にはこのハラアカナナホシキンカメムシ以外に、よく似たきれいなカメムシがもう一種いるのですが、この2種は見た目がそっくりなのに生態だけが劇的に違います。特定の生息環境にしかいない生物というのは様々に存在しますが、マングローブには特に印象的な種類がいるので、それを調べています。

ハラアカナナホシキンカメムシ

 元々はクリサキテントウというテントウムシで似たテーマを調べていました。普通のテントウムシは色々なアブラムシを食べるのですが、クリサキテントウは野外ではマツの木に付くアブラムシしか食べないんです。さらに面白いのは、飼育下で「これを食べろ」と野外で食べない餌を与えたら、それを食べてくれます。でも野外では特定のアブラムシしか食べないので、何らかの選択をしているんでしょうね。

 こうしたカメムシやテントウムシのように、見た目は似ているのに、生態や食べている餌、野外で生息している環境が違うということがあります。体の大きさも似ているので、餌などをめぐって競争しても互角のはずです。そうすると何が問題かというと、違う種類同士でも交尾が起きてしまいます。交尾が起きた場合、定義上は種類が違うので基本的に子供は産めません。似たもの同士が一緒にいると求愛のエラーが起きてしまい、子孫を残せなくなってしまうため、別々の場所に生息しているんです。つまり、餌自体はどの餌でも本来食べられるのですが、繁殖するときに他種とバッティングすると不具合があるので、結果的に分断が起きているんだと考えられます。

クリサキテントウ

―三重大学で今後担当される授業はありますか。

鈴木:前期は、分担している農林統計学の授業を3回ほど担当しました。後期は昆虫学の授業を塚田先生(同じく昆虫生態学研究室教員)と分担で担当する予定です。昆虫学は他学科の学生でも、受講したい人は受けられます。

 昆虫学の授業ではポケモンGOでポケモンを捕まえ、その多様性を解析する予定です。Rというデータ解析ソフトを使ってプログラミングの練習として行います。学生にはポケモンGOで大量のポケモンを捕まえてもらい、誰が何匹捕獲したかなど、生物の群集(種類が集まったもの)の類似度や傾向を解析します。本来は昆虫や魚を実際に捕まえて行うと良いのですが、授業で、それも冬場にとなると難しいので、ポケモンを使っています。

 プログラミング作業は研究を行う上で必要不可欠ですし、生物群集の多様性の考え方などのトレーニングも兼ねています。通常の講義よりも実習に近い形で、実際の生き物は使いませんが学生が手を動かして参加できるような講義内容にしたいと思っています。実験や授業も、なるべくアクティブラーニングに近いような形に変えていきたいです。

鈴木先生

―三重大学の昆虫生態学研究室の学生さんはどのようなテーマで研究されていますか。

鈴木:現在の研究テーマとしては、先ほど話したマングローブのカメムシの研究や、イモムシが鳥に食べられないための擬態の研究などがあります。昆虫を対象に、つまり天敵や相手との相互作用を通じて、生き物の形質がどのように進化するのか、その結果として生態系の中で多様性がどのように維持されているのかなどを研究しています。

僕ならチョウやテントウムシなど、教員の得意とする研究対象があるので、昆虫についてなら何でも自由に研究しているというわけではありません。あくまで昆虫の「生態学」の研究室なので、新種を見つけて記載する分類学的な研究も行なっていません。

昆虫に詳しく、昆虫採集や標本作りを趣味としている学生にはもちろん来てほしいと思っています。ただ、大事なのは虫そのものだけでなく、生態学のテーマに興味があるかどうか。逆に、虫にはそこまで詳しくなくても、種間の相互作用や多様性、外来種問題などに興味がある学生も歓迎します。「とにかく虫が好き!」という人だけでなく、そうしたテーマに関心のある人にも向いていると思います。

―「研究」は大学生活の醍醐味だと思うのですが、鈴木先生から見て大学や教育機関で研究することの面白さは何だと思いますか。

鈴木:やっぱり、自由にテーマを選べることが一番の面白さだと思います。例えば卒業して外部の研究所などに就職すると、上から与えられるテーマを研究しなくてはいけなくなってしまいます。研究所では応用課題が増え、実学に即した研究が多くなります。社会的な使命や、学問的に重要である場合もあるので、それはそれで大切なことです。ただ、大学はそれよりもう少し基礎寄りの研究ができるので、昆虫の多様性がどう決まるかといった、実用的ではないことも堂々と研究できるのは魅力だと思いますね。

それに、卒業研究や修士研究を一生懸命やることは、やがて就職の準備にもなるはずです。研究する上で欠かせない、プレゼンテーションや文章の作成、統計解析、論理的思考力などは、社会人になっても役立つ汎用スキルのトレーニングにもなると思います。だから学術の道に進まない人も、そういったスキルやテクニックを身に着けるという意味でも、学生のうちにきちんと研究しておくと良いと思います。

―鈴木先生は昆虫の進化や食性の変化などを研究されていますが、昆虫の進化や変化のどこに、特に魅力を感じていますか?

鈴木:「意外性」に面白さがあると思います。マングローブ固有の生物がマングローブの餌でしか成長できないとか、マツの木に来るテントウムシがマツのアブラムシでしか成長できないのであれば、ストレートに納得できるけれど、実際はそうではない。そういった、人間の第一印象や素直な直感に反することがあるところに面白さを感じますし、それが学問的な問いにもなってきます。

鈴木先生

―先生は元々昆虫がお好きだったとのことでしたが、大学進学前から昆虫を学びたいと思って進学先を決められたのですか?

鈴木:そうです。小学校の時から決めていましたね。他の人からしたら真似できないと言われるかもしれませんが(笑)。

―現在、先生の専門はチョウやカメムシ、テントウムシなどですが、個人的に元々好きだったのもこれらの種類でしたか?

鈴木:チョウが好きですね。昔から蝶々マニアでした。テントウムシは論文をたくさん生み出してくれるいわばビジネスパートナーです(笑)。

 研究内容にもよりますが、昆虫は飼育ができるので、野外で採集して室内で実験するということが可能です。ただ一口に昆虫と言っても、飼育するにも種類によって癖があるので、困難な場合もあります。チョウなどは羽が柔らかくてボロボロになってしまうこともあるので、扱いが難しいんです。それに対して、テントウムシのような甲虫は扱いやすいという理由もあって、研究対象にしています。

 単純に趣味で昆虫をコレクションするアマチュアの人もいますが、研究はそれとは違い、進化の原理や生態学といった課題にアプローチするには、一歩踏み込んだ抽象的な思考が必要になってきます。僕自身は生態学や進化そのものといった、そのメカニズムの部分にもかなり興味があって、それを検証するために何が良いかと考えた時、テントウムシはやりやすいというのがあります。本当はチョウの研究をしたいんですけどね(笑)。同じ昆虫と言っても、分類学、生態学、遺伝学と分野がたくさんあります。昆虫と言っても広いので、「どのアプローチで学びたいか」と少しだけ分野を絞ったうえで、進学先を選んでもらえるといいと思います。

―学生時代のエピソードを教えてください。

鈴木:ひたすらチョウを捕っていました。通っていた京都大学にチョウのサークルがあって、そこに所属してチョウだけを採集しに日本全国を飛び回るのが生きがいでした。三重大学にも魚釣りや昆虫採集などのサークルがありますが、趣味の採集でフィールドの感覚をつかむことは後の研究にも役立ちます。卒業して社会人になると、時間の問題でどうしても採集に行くモチベーションは下がってくるので、僕も特に海外のフィールドなんかは学生時代にもう少し行っておけば良かったと思うこともあります。なので虫は学生のうちに採っておいた方がいいですよ。

―受験生や高校生に伝えたいことはありますか?

鈴木:昆虫の生態研究をしたければ、三重大学は良い環境だと思います。また昆虫に限らず、色々な動物の進化や生態に元々興味がある人も歓迎します。もちろん昆虫生態学研究室なので昆虫が対象にはなりますが、そういった研究をしてみたい人が来てくれたら嬉しいです。興味は人それぞれなので、自分に合う大学と巡り合ってくれれば良いと思います。高校生が「大学 昆虫」「大学 生態学」で検索した時に、この記事を見つけてくれるといいですね。

鈴木先生とインタビュアーの学生