災害から生き延びるために~「我が事」として考える~

2019.2.22

今回は、地域イノベーション推進機構の水木 千春(みずき ちはる)助教にインタビュー取材を行いました。

20190129_研究室探訪(水木千春先生) (1)

‐先生の研究活動について教えてください

水木普段は三重県・三重大学 みえ防災・減災センターにいるので、現場に出て県内の住民の方たちと接しながら防災の啓発活動や講演会を行うことが多いです。

‐防災教育に詳しいとお聞きしましたが、学校などでも講演を行っているのですか?

水木はい。小さなお子さんだと児童館での防災啓発活動や県内の小学校で1年生から6年生を対象にした講演会を行うことがあります。お子さん向けの講演では、学年によって理解度や集中力が異なるので、1・2年生でも理解できる言葉使いでスライドを作成したり、5・6年生の興味が湧く質問を投げかけてみたりなど、その都度講演内容を工夫しています。

‐防災意識の低い人たちには、どのような工夫をして防災意識の大切さを伝えていますか?

水木永遠のテーマですね(笑)三重県の置かれている状況が、南海トラフを震源とした巨大地震が今後起きると言われているので、「我が事」として思ってもらえるような啓発を心がけています。三重県で過去に起こった災害や近年の被災地のことを事例に出して、自分の地域ではどういった問題が発生するのか、またすでに発災前からある地域の問題が、災害後に顕在化するということについてなど、その人が置かれている立場で考えてみてもらえるといいですよね。例えば、ご近所に障がいをお持ちの方や高齢の方がいたら、津波が起きた時に地域の中でどのような避難行動が取れるのかなど、自分を含め、身の回りの状況を想定しておくことの重要性を伝えています。

‐女性の防災についてはどのような啓発活動を行っていますか?20190129_研究室探訪(水木千春先生) (3)

水木女性目線で見た場合の避難所での課題を、行政や住民の方々へ伝えています。阪神・淡路大震災から24年が経ちましたが、その際に起こった避難所での女性の不自由さが、近年の避難所で解消されているのかというと、そうでもないですね。例えば、授乳されている方への配慮や、更衣室がなく布団をかぶって着替えを行うなど、東日本大震災の際も女性にとっての避難所での課題がありました。いざ避難所運営マニュアルを策定しようとなったときに、意見を出し合う場への参加者が男性の方が多いことがよくあるのですが、女性にもマニュアル策定に参加してもらって、避難所のレイアウトや役割分担などについて話し合ってもらうようにしています。今までの災害の際に起こった避難所での課題を提示して、それに対しても自分たちの避難所ならどうするかということを地域で考えていただいています。

‐平成は震災が多かった年と言われていますが、ここ数年で変化してきた防災意識や防災対策などはありますか?

水木平成というかこの30年を世界も含めて広い目でみると一部ですが、1993年北海道南西沖地震、1995年阪神・淡路大震災、2004年インドネシアのスマトラ島沖地震とそれによる津波の発生、また同年の新潟県中越地震、2011年の東北地方太平洋沖地震など、確かに大きな災害が発生したと思います。震災が発生すると地震のメカニズムなど、発生した災害についていろんな側面から検証されますが、私の研究分野に近いところでは、阪神・淡路大震災が発生した際は、住民自らによる消火や救助活動で数多くの人命が救われた一方で、通行可能な道路に多くの車が集中し緊急車両などが通行不能となった事態が起こるなど、住民の初期対応行動に関するリスク論的検証や「コミュニティ」の問題に焦点が当てられました。復興の過程でコミュニティがばらばらになってしまったことなどについて、耳にされた方も多かったと思います。また、ボランティア活動に焦点が当てられたのも24年前の阪神・淡路大震災のときです。スマトラ島沖地震の際は、避難意識や避難行動に関する研究などが盛んに行われました。東日本大震災のときは、津波に対する非難意識や行動について調査結果をまとめましたが、その他にも、その後の復興や学校としての課題などが大きなテーマではないかと考えています。大きな災害が起こると、さまざまな課題点について、多方面の専門分野から調査や検証がなされるようになります。都度、クローズアップされる、それらの課題に触れることによって人の意識や考え方も影響を受けると思うので、より多くのことを学んだり感じ取ったりした30年であったと捉えることができるなら、30年前と比べて人々の防災意識も変わってきているのではないでしょうか。

‐防災研究について関心を持ったきっかけを教えてください

水木きっかけの一つは、北海道大学大学院在学中に東日本大震災が起こったことです。それまでは、水害のことをテーマに研究を行っていましたが東日本大震災が発生後、すぐに現場へ調査に入って、震災の現状を見て、今後は研究者になる上で災害についての研究を行いたいと強く思いました。

もう一つのきっかけは、研究の世界に入る前に、旅行会社に勤めていたことがあり、その際に添乗員として同行した国で大きな水害にあったことです。この水害が、自分が実際に被災した初めての経験で、とてもショックを受けた出来事でした。この経験が心のどこかにずっとあって、大学院での研究テーマも水害でした。その後、東日本大震災があり、津波、震災についての研究に広がっていきました。

‐今後の防災活動の目標について教えてください20190129_研究室探訪(水木千春先生) (8)

水木わたしが所属している「三重県・三重大学 みえ防災・減災センター」で関わっている取組みに「みえ防災・減災アーカイブ」があります。「みえ防災・減災アーカイブ」では三重県内の災害に関することについて、データベース化して次世代に残していく取り組みで、過去の被災体験の証言や現在各市町で取り組んでいる防災活動、今後起こるかもしれない災害のデータや資料を公開しています。

アーカイブを通じた活動を始め、講演などで県民の方たちに自分の地域に関連した災害に関する資料を示して、災害に対する意識をよりリアリティをもって感じてほしいです。みなさんに「我が事」として防災を考えてもらえるよう、今後もっとアーカイブの認知度を上げるとともに、災害についての啓発活動や研究を進めていきたいと思っています。

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【研究者情報】

地域イノベーション推進機構 地域圏防災・減災研究センター助教 水木 千春(mizuki chiharu)

専門分野:集落地理学、自然地理学、歴史地理学、行動科学、地域防災論

【参考】

みえ防災・減災センターHP http://www.midimic.jp/about.html

教員紹介ページ(水木 千春) http://kyoin.mie-u.ac.jp/profile/3177.html