インタビュアー:みえみえ学生広報室の学生
今回は、医学系研究科 生命医科学専攻 基礎医学系講座の村田 真理子(むらた まりこ)教授にインタービュー取材を行いました。今回のインタビューアーは、みえみえ学生広報室(教育学部1年 坂口莉菜)です。
-はじめに、先生の専門分野・研究テーマを教えてください。
村田社会医学系と言われる分野である環境分子医学の研究をしています。端的にいうと、人が環境の中でどのような影響を受けるのかというのを研究する分野です。職業病などがあるように、DNAやたんぱく質などの体の中にある物質が外からの影響をどのように受けて、病気になったり健康になったりするのかを研究しています。人と外からの影響との関係を調べるために、細菌やウイルスなどの生物的環境であったり、化学物質などの物理・化学的環境であったり、職業や宗教や人と人との関係などの社会的環境であったりなど様々な面から病気の現象を研究しています。また、病気にならないようにという予防を含めた健康な人にもアプローチしていきたいという側面がある研究分野です。
-研究をされていく中でおもしろいと感じるのはどのような時ですか。
村田実験をした時に、予想される結果がでた時には「やったー!」と言いたくなるような嬉しさを感じます。
-今までにそのような嬉しさを感じた研究にはどのようなものがありますか。
村田今、病気の予防に使えるのではないかとアミノ酸の一種であるタウリンに興味を持っています。タウリンは疲労回復などに良いとされてドリンク剤などに使われています。生活習慣病になる過程や進行中では、体の中に炎症が起こっており、その炎症をタウリンが抑えるといわれています。そのような特徴をもつタウリンを用いた動物実験が印象に残っています。発癌を起こす薬を与えたネズミにタウリンを飲ませると、0にはならなかったのですが、癌の発生数が下がりました。今まではタウリンの効果について疲労回復がうたわれていたり、ミトコンドリア病などの重い病気を患っている人たちの薬に使えることが承認されていたり、肝臓の調子が悪い人がタウリンを飲むと肝臓の機能を保護するために使われていました。そのタウリンが癌にも効く可能性があるのだとわかり、タウリンの新たな面を発見できた喜びを感じられた実験でした。
-研究を通して人々の生活にどのように関わっていきたいと思われていますか。
村田病気がどのような原因で起こるのかだけではなく、最終的には、病気の予防ができると良いと考えています。例えば、炎症を抑えるようなものを摂取することは、生活習慣病の予防に良いのかどうかなどを研究していきたいと思います。
-今後の目標や予定を教えてください。
村田動物実験から癌に効きそうだとわかったタウリンを老化が早く進むと言われる老化促進マウスに摂らせると、老化の進みが少しマシになります。この現象に関して2つの観点からさらに研究を進めてみたいと考えています。1つは、脳の中のアルツハイマー病の原因になるだろうと言われる物質が少なくなるかに関して今研究を進めています。もう1つは、共同研究者の先生がやってくださっているローターロッドというテスト(ネズミを回る棒の上に乗せた時にどれだけその上に乗っていられるかというテスト)で、筋肉や運動能力が高いとその時間が長くなります。このテストの結果からタウリンを飲ませた方が少し頑張れるという結果が出ています。この結果から筋肉や神経系などにタウリンが影響を与えているのかなと思っています。そこで、そのあたりのことをもう少し明らかにできたらおもしろいかなと考えています。もともと筋肉とかの保護作用はあると言われているので、あたりまえのことかもしれないけれど、なぜそのような結果になるのかを解明することをやっていきたいと考えています。
-最後に何か学生に伝えたいことはありますか。
村田私が講師をしていたときに、当時教授であった先生のもとにタイから胆管癌の研究をするために留学してきた方たちがいるのですが、教授になってからもその方たちとのつながりがあり、一緒に研究をしています。また、上咽頭癌の研究において、中国の広西医科大学と共同研究をしています。医学系研究科には、国際推薦制度という留学生への奨学金制度があり、これまでに8人の留学生の方が来てくださいました。このように、様々な形での交流を通して人の輪が広がっていったと感じているので、ぜひみなさんも海外へ出てみるなどしていろいろな人とのつながりをつくられるとよいと思います。
研究者情報
医学系研究科 生命医科学専攻 基礎医学系講座
教授 村田 真理子(MURATA,Mariko)
専門分野:環境衛生学
現在の研究課題:環境因子による発がん機構の解明に関する研究
【参考】
医学系研究科HP https://www.medic.mie-u.ac.jp/
教員紹介ページ(村田 真理子) https://kyoin.mie-u.ac.jp/profile/1777.html