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学びのしくみのおもしろさ

2023.12.11

インタビュアー:みえみえ学生広報室の学生

今回は、教育学部 学校教育コースの中西良文(なかにし よしふみ)教授にインタビュー取材を行いました。今回のインタビュアーは、みえみえ学生広報室員(教育学部1年 坂口莉菜)です。

中西先生

-はじめに先生の専門分野・研究テーマを教えてください。

中西心理学の中でも学習心理学と呼ばれる分野を研究しています。研究を通して、人の学びについて心理学の観点から考えています。研究テーマは、主に3つあり、1つは、やる気やモチベーションともいわれる「動機づけ」についての研究です。他には、「学習方略」という学習のやり方についての研究をしています。さらに、「協同学習」についての研究もしています。具体的には、人と人が関わり合いながら学んでいくことで、学習の効果が上がっていくということがあるので、どのような課題をどのようなグループで取り組むと効果があるのかというのを研究しています。

-学習のやり方にはどこまで研究として踏み込まれるのですか。

中西「学習方略」の研究には、いろいろな学習場面に応用できるようなものがあります。一般的によく言われる例をあげると、ただ丸暗記をする勉強法は良くないと言われる一方で、理解をしながら学習をしていくやり方は効果的だとされています。他には、自分がやったことをしっかり振り返るというようなモニタリングと呼ばれるやり方が効果的だと言われていたり、学習をする前にどのようにやっていくのかというような見通しを立てて、その見通しを踏まえて進めていくと学習の効果が上がりやすいと言われていたりします。その一方で、文章を読解する際にどのようにすれば効果的な読解ができるかというような教科や教材に合わせた「学習方略」の研究もあります。

-教科別の学習方法まで踏み込む際に、先生があまり深く研究されていない分野に直面することがあると思いますが、どのようにアプローチされているのですか。

中西たしかに、専門ではない部分は、なかなかわからないところがあったりするので、そのような時は、その分野の専門家の方と一緒に協同でやるなどして研究を進めていますね。

-国語の専門家や理科の専門家などいろいろな専門家の方と交流する機会が多いのですね。

中西そうですね。教育学部には、教科の専門家の方が集まっているので、その方たちと話しをしている中でいろいろなヒントをいただけたりします。

-研究をしていく中でおもしろいと感じるのはどのような時ですか。

中西心理学は、データを分析して、その分析した結果から様々な議論をする学問です。データをとり、分析してわかった結果をみておもしろいなと感じる時があります。「やっぱりそうだったのか」と思うような結果もあれば、「あれ、これって常識とは違うんじゃないのかな」と思うような意外な結果が出てくることもあり、それについて「どうしてこの結果がでてきたのだろう」と考えたりするのがすごくおもしろいと感じる時間です。

-具体的におもしろかった研究はありますか。

インタビューの様子

中西今、「自己効力感」についての研究を進めています。「自己効力感」というのは、自信のようなものです。新しいことを学ぶときに自分の考え方を変えられる自信を持っていると、その自信の高さが学習の成果につながっていきます。しかし、自分の持っている考え方が正しいという自信があると、考え方を変えなければならない学習をするときに、逆に足を引っ張ってしまうというような結果がみられました。自信というものが良い影響をするだけではなくて、良くない影響も与えることがあるのだとわかったのがおもしろかったですね。
考え方を変えなければならない学習とはどのようなものかを説明する際に、「さかなはさかな」(著 レオ・レオニ)という本がよく取り上げられます。どのような話かというと、さかなが小さいころ、おたまじゃくしと友達になります。その後、そのおたまじゃくしは、大きくなりかえるになって、池から出ていきます。そして、さかなに外の世界で見たことを教えてくれるのですが、さかなはさかなしか知らないので、たとえば人間という生き物をさかなに足が生えた生き物だとイメージしてしまいます。この話から、新しいものを学習するときには、今まで自分が学んできたものを土台として学んでいることがよくわかります。そして、われわれが学ぶものの中には、今まで学んできたことから離れないと理解できないものもあり、そのような学習は難しいので、それを研究しているという感じです。

-学習心理学や動機づけの研究が学校教育の現場でどのように活かせると思われていますか。

中西学校の中で一番多くの時間を過ごすのが授業だと思います。授業の中で学習についていけないと子どもたちが辛い思いをすると思うので、そのような思いをする子どもたちが少しでも少なくなるようにしたいと思っています。「動機づけ」に関わることだと、やる気があると授業も楽しく受けられるということがあるので、授業を受ける時間を楽しいものにすることにつながっていくと思っています。また、学校の授業を受けるのは学ぶためなので、そこでの成果が高くなっていくということにもつながっていくと思います。それから、教職大学院にも関わっているので、大学院生(現職の先生や大学を卒業してすぐに大学院に進んだ学生)に学習の話や「動機づけ」の話を伝えていくことを通して、学校の現場の先生にもそれらを活用してもらえるのではないかと思っています。

-普段、どのように研究を進められていますか。

中西アンケートや実験を通して実際にデータを取って進めていきます。

-先生の研究では、データの対象は、どれくらいの層になりますか。

中西学校での学習に注目しているので、小学生、中学生、高校生、大学生ですね。ちなみに大学生は、かなり難しいことをやってくれるので、大学生が研究対象になることは多いです。小学生や中学生だと知り合いの先生の学校にアンケートをお願いしたりします。

-なぜ研究者の道を選ばれたのですか。

中西先生

中西初めは、小学校6年生の時の先生の授業がとてもおもしろく、「勉強するのっておもしろいな」と思ったので、小学校の先生になろうと思っていました。その時、面白い授業ができる先生になりたいなと思ったので、心理学がそのようなことをやっていそうだと思い、大学で教育学部の心理学のコースに入りました。そこで学ぶ中で、『「おもしろい」とか「やる気」とかをもっと勉強したかったけれど、思っているほどそのような勉強ができなかったな』と感じていました。「おもしろい」とか「やる気」に関して自分が知らないことがまだまだあるだろうという思いがあったので、研究の道に入ってそのあたりをさらに研究していきたいなと思って研究の道に進んでいきました。
三重大学教育学部の出身なので、教育実習を経験して、やっぱり先生になりたいと思ったこともあったのですが、大学院にもいきたいなという思いもありました。当時、現場の先生が大学院に来られていて、その先生に「自分は教師になって大学院に行きたい」と話したところ、教師になってから大学院に行くのは運も影響するから、絶対に行きたいのであれば、卒業してそのまま大学院に行った方がいいと言われて、それだったら大学院に行こうかなと考えました。その時に「やる気」とか「動機づけ」の話を追求したいと思ったので、そういった研究をされている先生がいる大学院に行くことにして、その先生の研究室に入り、研究者の道に進んでいったという感じです。

-大学院に進んでからは小学校の先生になりたいとは思われなかったのですか。

中西大学院で研究者としてやっていっても、学校の先生ではないけれども、子どもたちとは関われるかなという風に思っていました。それに、小学校の先生で研究の世界にどっぷりつかることはできないだろうなとも感じていました。小学校にも関われるし、研究にも関われるというポジションだと研究者なのかなと思ってからは研究者として進んでいましたね。でもやっぱり学校の先生への魅力というか子どもと関わることができたらいいなという思いはずっとありました。この研究テーマ(「やる気」や「動機づけ」)で研究を続けていて、三重大学に着任して学校現場と関われているのはすごく幸せだなと感じています。

-最後に今後の目標や予定を教えてください。

中西学校現場において、子どもが楽しいと思ったり、おもしろいと思ったりしながら成長していけるような環境を作っていくところに研究者として貢献できるような関わりができればいいなと思っています。


研究者情報


中西先生

教育学部 学校教育コース

教授 中西 良文(NAKANISHI, Yoshifumi)

専門分野:学習心理学・動機づけ

現在の研究課題:学習動機づけに関する研究、学習方略に関する研究、協同学習に関する研究、大学教育改善に関する研究

【参考】

教育学部HP https://www.edu.mie-u.ac.jp/

教員紹介ページ(中西 良文) https://kyoin.mie-u.ac.jp/profile/1079.html