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美術・絵画の面白さに触れる 心に響け 美術の世界

2022.11.28

インタビュアー:みえみえ学生広報室の学生

今回は教育学部美術教育講座の関 俊一(せき しゅんいち)教授にインタビュー取材を行いました。今回のインタビュアーは、みえみえ学生広報室(教育学部2年 加藤ひろな、医学部2年 山羽葵)です。

インタビューの様子

-はじめに、先生の専門分野・研究テーマについて教えてください。

絵画を専門分野にしています。研究テーマはいくつかあり、一つ目は「サカナの博物画的細密表現」で、過去には東京都葛西臨海水族館の種ラベルのイラストレーションを担当しました。二つ目は「西洋古典絵画技法」で、油彩による古典的な絵画技法をもとに独自の表現を試み、静物画や動物画を制作しています。三つ目に、昆虫をモチーフにした紙切りの方法を研究する「紙切りでの昆虫づくり」があり、実際に大学の授業やワークショップで実践しています。

-なぜ、この分野を研究するようになったのでしょうか。

幼い頃から絵画に興味があって、写実的な表現に魅力を感じていました。幼少の頃より通っていた絵の教室で、絵が褒められて嬉しく感じたことが、このように絵画に触れるようになったきっかけなのかもしれません。仕事として志したのは、高校2年生の時に、美術大学を目指して本格的に絵画の基礎を学びはじめた時でしょうか。現在は、リアリティとは何か、ということを考えながら制作しています。

-紙を切って昆虫を作ることは難しそうですが、ワークショップではどのように教えているのでしょうか。

蝶の形を切る関先生形を切って完成した蝶を持つ関先生

いきなり昆虫の形を切るのは難しいと思うので、大学の授業では、初めに円などの簡単な図形を切る練習をしてから取り組むようにしています。その後は、まず昆虫の形の下書きをさせて、それを切る練習をします。次に、下描きをしないで切る練習をさせることで、学生さんも短時間で昆虫を切れるようになります。私の場合、半分に折った色画用紙を切ってシンメトリーの図形を作っていきます(紙切りの実演をして頂きました)。はさみを切るだけの右手の動作、紙を持って動かす左手の動作、両方の動きを学生に見せながら、デモンストレーションをします。学生は、初めは驚きますが、練習をしていけば誰でも出来るようになりますよ。

-絵本を出されたということですが、どのようなものでしょうか。また、商品になってご自身の作品が世の中に届いたとき、反響などは感じましたか。

絵本を学生に見せる関先生

以前から絵本を出せたらいいなと思っていたところ、葛西臨海水族園等での私の作品が目に留まった出版社の担当者が声をかけて下さって、ホホジロザメについての絵本を出すことになりました。文を担当されたシャークジャーナリストの沼口麻子さんから頂いたテキストを見てイメージを膨らませ、絵本の画面を自由に描かせていただきました。イメージから構成、色付けまで好きにさせてもらって、とても楽しいお仕事でした。お子さんの絵本というと、可愛らしくほのぼのとした印象があるかもしれませんが、この本は、科学的な見解に基づいた絵柄と内容を目指して作りました。そのため、その中に並んだときに強いインパクトがある絵本に仕上がったと思います。本が出版され、SNS等でも幼い子から大人まで反響をいただいており、ありがたく思っています。

-想像をして自由に描かれたということですが、出来るだけ事実に基づいたリアルな生態や、躍動感のある瞬間を捉えた絵は、何を手掛かりに描いているのですか。

関先生が描いたサメの絵

いい質問ですね。今は、インターネットなどで画像を検索できますが、何が大事かというと、やはり絵は写真や画像とは違うものである、ということだと思います。絵は、良いアングルによって、写真よりさらに強烈でインパクトのある一瞬をとらえるよう、考えて表現しなければならないと思っています。あとは、小さい頃からの知識や経験がすごく役に立っていて、水と触れ合ったり、泳いだり、ダイビングをして水中で過ごしたり、船の上で波を見たり、そのような海との関わりがあることで、イメージしやすいのかなと考えています。

-写真と絵の違うところについてお話がありましたが、先生は、絵のどのようなところに魅力を感じますか。

絵を描いていて、だんだん画面のなかに描いている対象の立体感が出てきたり、輝くような色彩や光が見えてきたりすると、ときめくというか、制作をしていて一番楽しい部分です。油絵などの絵というものは、平面ではなく、絵の具というものが画面に乗っかっているものです。そのため、絵の具の質感だったり、量だったり、透明感のある色の発色だったりが平面に奥行きを与え、その質感の変化が魅力的だと思います。そのへんが、写真と大きく違う点だと思います。

-ブドウを描いた作品がとても綺麗ですが、描くモチーフはどのように決めているのですか。

ブドウの絵を見せる関先生

昔は、魚や生き物を描く作品が多かったですが、最近は果物などのみずみずしいもの、あとはお花など、飾りやすいものをモチーフにしています。例えばブドウが木になっていて、ブドウを透過して見えてくる光や、透明感、そこから見えるみずみずしさの見え方がとても良い現象だなと思っていて、目の前にあるものをただ描くというよりは、そのへんをテーマに描いています。知り合いのブドウ畑に行って撮影をさせていただいたり、実際に自分でブドウ狩りをして食べてみたり。自分で取材をして直接見るということは、モチーフに対する思いや、作品に対する意欲になっていくと考えています。

-今後の目標や取り組みたいことなどを教えていただきたいです。

美術の教員を目指す学生に、絵画の基礎・デッサン力を身に付けていただきたいです。あとは、学生個々の表現のバリエーションを増やしていけるように提案していけたらと思います。苦手意識を払拭させて、図工を苦手だと思わせないような児童生徒を育てられるような教員になってほしいと願っています。自分の研究では、油彩による古典的な絵画技法をもとに、静物画や動物画を制作して、今後また作品を発表できるように制作を進めていきたいと思います。


研究者情報


関先生

教育学部 美術教育講座

教授 関 俊一(SEKI,Shunichi)

専門分野:絵画、イラストレーション

現在の研究課題:西洋古典絵画技法とアクリル絵の具による表現

【参考】

教育学部HP https://www.edu.mie-u.ac.jp/

教員紹介ページ(関 俊一) https://kyoin.mie-u.ac.jp/profile/2718.html