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終わりのない歴史学研究のおもしろさ

2021.8.23

インタビュアー:インターンシップの学生

今回は教育学部社会科教育講座の藤田達生(ふじた たつお)教授にインタビュー取材を行いました。今回のインタビュアーは、教育学部3年の米本早織さんです。

藤田教授

-はじめに、先生の専門分野・研究テーマについて教えてください。

藤田戦国時代から江戸時代にかけて、広く研究しています。特に、織豊時代の政治史研究を行っています。

※織豊時代:(織田信長、豊臣秀吉の名から) 安土桃山時代の別称。 

-今の研究を始めるようになったきっかけを教えてください。

藤田教授(右)とインタビュアーの学生(左)

藤田学生時代は、日本中世の自治村落(惣村)の研究をしていました。村落について研究していく中で、村の本質を知るためには、中世の権力(幕府や守護・戦国大名)について知る必要があると思い、新たに研究を始めました。権力について研究していく中で、特に信長・秀吉が作った政治が江戸時代を規定し、その時代に形成された統一国家が日本の近代を大きく形作ったことがわかり、天下人たちの政治政策や天下統一過程に興味を持ちました。彼らについて勉強することは、現代の自分たちをよく知ることにもつながるのではないかと思い、戦国時代から江戸時代にかけての研究を続けています。

-どのような方法で研究されていますか。

藤田はじめに、研究テーマを決めます。そのテーマに関連する古文書(史料)を調査し、あわせてテーマに関する先行研究(論文・著書)を学びます。そこから研究テーマに関する仮説を立てて、その検証をしていくという流れです。歴史的事実と照らし合わせながら確認をし、矛盾のない説を立てていきます。

-研究していく中で、面白いと感じるのはどのような時ですか。

藤田教授の著書

藤田一番おもしろいと感じるのは、新しい事実に出会えた時です。良質な史料が一つ見つかると、今までの通説が崩れてしまうことがあります。そうした史料に出会えることは、一生にあるかないかの確率です。幸い、何回か経験しましたが、これは研究者冥利に尽きますね。
また、研究を進めていくと、自分なりのその時代の時代像が生まれてきます。それを論文や論集・一般書などとして発表し、ある程度学界や社会からその見方が認められたと実感できた時は嬉しいです。反対に、そのような反響がない時が一番怖いです。

-では、研究していく中で、難しいと感じるのはどのような時ですか。

藤田教授

藤田年齢を重ねてからでないとわからないことがあまりにも多いので、そこが難しさです。歴史について研究を進め、自分ではわかったつもりになっていても、年齢を重ねると違った見方が出てくることがあります。例えば、史料を正確に訳すだけでは、執筆者の真意や心情はわからないことが少なくありません。「眼光紙背に徹する」とは言いますが、なかなか難しいことです。経験を積まないと、心を柔らかくしないと、真意や心情はもとより、政治や時代像などはわからないものだと、しみじみ思います。


-最後に今後の目標を教えてください。

藤田今までの研究(織田政権論)をまとめたり、本(藤堂高虎評伝)を書いたりと、定年までの宿題を提出して気持ちよく卒業したいです。今後も、研究テーマについてゆっくりと研究を続けていきたいと思います。


今回のインタビューの様子をYouTubeで公開しております。
こちらからご覧ください。


研究者情報


藤田教授

教育学部 社会科教育講座

教授 藤田 達生(Fujita,Tatsuo)

専門分野:日本近世国家成立史の研究

代表的著書
『日本中・近世移行期の地域構造』(校倉書房、2000年)
『日本近世国家成立史の研究』(校倉書房、2001年)
『城郭と由緒の戦争論』(校倉書房、2017年)
『藤堂高虎論─初期藩政史の研究』(塙書房、2018年)
『本能寺の変』(講談社学術文庫、2019年)
『藩とは何か─「江戸の泰平」はいかに誕生したか』(中公新書、2019年)
『天下統一論』(塙書房、2021年)など

現在の研究課題:日本中世・近世移行期の国家像を、織田・豊臣・徳川政権論から追究する。あわせて江戸幕府の確立過程を、藩の形成から論じる。

【参考】

教育学部HP https://www.edu.mie-u.ac.jp/