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なぜ今、 地域イノベーションなのか?

2023.9. 5

地域イノベーション学研究科・教授 松田 裕子

松田裕子教授の写真

県南部が消滅!?人口減少の脅威に立ち向かうカギとは

2040年までに「自治体の半数が消滅する」という衝撃の報告があります。私たちが住む三重も例外ではなく、南部は軒並み赤信号。いまや、様々な社会問題が次々に顕在化しています。
しのびよる人口減少の脅威に立ち向かい、地域を次世代に引き継いでいくためには、「持続性」×「イノベーション」の考え方が不可欠です。
いくつもの要因が連鎖する地域の課題は、決して一人の研究者の力だけで解決しうるものではありません。組織や世代、あるいは地域や分野の枠を越え、多様な主体が結合し、地域を共創していく意識づくりや体制づくりが重要なカギになります。

県南部が消滅!?人口減少の脅威に立ち向かうカギとは

大切な「食べる」を考える

日本の食料自給率の推移
食生活の変化と食料消費

私たち人間の生存に欠かせない「食」。古来「御食つ国」の異名を持つ志摩地方をはじめ、県南部は食の素材の宝庫です。

ところが今、我が国の食料調達の指標となるカロリー自給率は4割を切り、農山漁村はどこも衰退の一途を辿っています。この背景にあるのが、地産地消ならぬ、Eat Globallyの実態。なんと、私たちの毎日の食卓に上がる食料の6割は、遠い国や地域から来ているのです。

こうした生産と消費のアンバランスを説明するとき、農業経済学の枠組みが有用です。食の供給側である生産現場の実態と、食の需要側である消費者の嗜好・購買行動の両面に目を向けることによって、日本農業の活性化に向けた課題を洗い出し、解決策を探っていくのです。

「専門を極めたい」人より、「社会を変革したい」人を育てる

地域振興の実践では、農業を深く知ることももちろん大事ですが、市場の仕組みやマーケティング、地域の歴史・食文化、観光、情報通信、健康医学など、多業種と結び付け、学際的に考える力がもっと重要になってきます。
なぜなら、実社会には文系・理系の線引きや、学問領域による境界線はないからです。

現在、コロナ・パンデミックとウクライナ侵攻をきっかけに、行き過ぎた国際化の弊害が露呈し、全世界がフードショックに見舞われています。持続可能な地域づくりだけでなく、我が国のフードセキュリティの観点からも、食の生産と消費のアンバランスを是正する契機と言えるでしょう。

地域固有の価値やコミュニティが本来持つ社会的機能に改めて注目しつつ、社会・経済・環境のバランスをどう取っていくべきか。私たちの地域を未来につなぐため、現役世代だけでなく、将来世代の利得までを考慮に入れた政策や社会の仕組みづくりに取り組んでいきます!

多業種連携が拓くイノベーションの可能性

【この記事は『三重大X(えっくす)vol.46』(2022年12月発行)から抜粋したものです】