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忍者文学作品から作られた忍者イメージの謎を追う

2023.9. 5

人文学部・教授 吉丸 雄哉

吉丸教授の写真

黒装束・黒覆面と手裏剣が忍者の表象の定番となるまで

私はもともと江戸時代の文学作品、とくに戯作と言われる庶民向けの娯楽小説を研究していました。三重大学が2012年に忍者研究を開始してから、小説や演劇に出てくる忍者を調べるようになりました。山田雄司先生・高尾善希先生によって忍者の実像が明らかになる一方で、黒装束に覆面で手裏剣をつかうという忍者の姿は史実と異なる虚像で、18世紀中頃の演劇から発生、定着していったことがわかりました。

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さまざまなメディアから忍者の文化史的な面を考える

書物等の写真

作られた忍者像を研究するにあたって、小説・浮世絵・マンガ・映画のDVDなどを収集し、文化史的な面から考察しています。そのほか、コンピューターを使わない非デジタルのアナログゲームで、忍者が登場するものを集めています。ゲームは抽象化されているため、忍者の何をどのように表現しようとしているのかを明確に理解することができます。大正時代のすごろくから、海外で作られたものまでさまざまなゲームが存在します。

海外に日本の忍者を伝える

講座・講演会の写真

研究に加えて、国内外で多数の講座・講演会に登壇してきました。2012年より毎年一年に一回は伊賀市で行われる忍者忍術学講座で新しい知見を披露しています。2023年3月の伊賀市の忍者忍術学講座では忍術書・兵学書に記された暗号についてお話しします。海外講演はコロナ禍でここ2年間お休みでしたが、2022年9月にはタイに行ってチュラーロンコーン大学などで川上仁一先生、山田雄司先生と講演を行いました。

忍者とは何か

忍者とは、現実に存在した忍びをもとに、人間の豊かな想像力が作りだしたものです。忍者とは、時代や地域によって忍者像は異なり、人々の超人願望を受け入れる器になっています。人々が忍者に望むものが変われば、それに従って新しい忍者像が登場するでしょう。ここ10年の研究成果を『忍者とは何か― 忍法・手裏剣・黒装束』(KADOKAWA、2022年4月)という本にまとめていますので、よろしければご覧ください。

書籍「忍者とは何か」の表紙

【この記事は『三重大X(えっくす)vol.46』(2022年12月発行)から抜粋したものです】