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現代の福祉国家研究と、その地域課題への応用

2021.6. 2

現代の福祉国家研究と、その地域課題への応用

人文学部・教授 深井 英喜

深井教授の写真

ポスト福祉国家の資本主義社会を考える

現在、経済成長を実現する経済的な効率性と、格差(不平等)や貧困に取り組む社会的な公平性は、対立するものと考えられています。しかし、1980年代までの福祉国家体制では、この2つの間にはある種の調和がありました。それが崩れたのは、産業構造が変化し、それにともなって私たちの働き方や暮らし方が変わったためです。現代の資本主義社会において、経済的効率性と社会的公平性とを調和させる方法を考えることが求められています。

80年代までの福祉国家体制の図と文献の写真

研究に関係する参考文献

図:社会的包摂と社会的排除

社会的排除という社会問題に注目する

経済的効率性と社会的公平性との調和を考えるとき、目指す社会像が問題になります。今注目されているのは、社会的包摂を達成した社会です。「誰1人取り残さない」ことを原則とする社会といった意味です。社会的包摂の反対が社会的排除という状態で、これが最先端の貧困の定義です。貧困とは、単に所得が低いというだけの問題ではありません。さまざまな理由から、"普通"の暮らしをする機会が正当に与えられないため、生活困窮に陥ります。

もやい「いきいきショップ」オープニングセレモニーの様子

令和元年8月1日 間崎島での、もやい「いきいきショップ」オープニングセレモニーの様子

地域課題に対する取り組みに応用

三重大学にいると、さまざまな地域課題に取り組む機会があります。地域福祉や買い物困難そして地域の移動困難といった地域課題に取り組んでいます。社会的排除を研究することは、社会の構造や特徴を把握し、人々の選択や行動について考えることです。これは、地域課題に取り組む時に役立ちます。遠回りかも知れませんが、地域の構造や特徴と、その地域の人たちの考え方や行動を知ることで、地域の人々を包摂する取り組みが生まれると思っています。

イラスト:えっくんくすくん

【この記事は『三重大X(えっくす)vol.44』(2021年1月発行)から抜粋したものです】