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風力発電の制御の研究

2020.5.25

風力発電の制御の研究

工学研究科・准教授 鎌田 泰成

鎌田准教授の写真

三重大学の風車前にて

風力発電の特徴

風力発電は、有望な再生可能エネルギーとして注目されています。風力発電は、風からエネルギーを取り出して電力に変換するものです。風のエネルギーは、ロータ※(風車の回転する部分)といわれる部分で取り出されます。風速が2倍になると風車を通過する風のエネルギーは8倍になり、風車を回す力は4倍になります。風は、気温や周りに建物があるかどうかによって常に変動し、風車の受けるエネルギーと力は大きく変動しています。この変動する風からいかに安定して故障なく発電するかは、風車にとって重要です。風車は回転数と羽根の取付角度を適切に制御し、故障なく安定な電力を得ています。

※羽根を3枚まとめてロータと呼ぶ

イラスト:風車

流入風(りゅうにゅうふう)観測による風車制御

風車の回転数と羽根の取付角度は、電力や観測された風向風速計(ふうこうふうそくけい)に基づき制御されます。風車の出力は、羽根の受けた力で発電機を回して得られるので、少し前の時刻(約0.1秒前)、つまり過去の風で決まります。よって風速が急に変化すると、風車の制御はすばやく対応できず、過剰な電力や外部からの力を受けます。風車に入る少し未来の風がわかっていれば、より高精度に出力を制御でき、過剰な電力や外部からの力を少なくできます。現在、風車に入る前の風を測る装置と組み合わせた風車制御を研究しています。

図:流入風観測による風車制御
図:風車の取付角度の調整
イラスト:えっくん

高精度な風車制御により期待される効果

高精度な風車制御技術は、風車の外部から受ける力を低減でき、風車出力の安定化などをもたらします。風車は回転面の大きさでエネルギーを得ています。単純に風車を2倍にすると回転面の大きさは4倍になり、風車全体の重さは8倍になるので、発電コストが増加します。外部から受ける力を低減できる制御は、より軽量な設計を可能にし、大型化を可能にします。それらを広大な洋上で運用することで莫大なエネルギーを得られます。風力資源は、地球上の広範囲に存在しているので、国や地域で格差のない公平なエネルギー供給を実現できます。

【この記事は『三重大X(えっくす)vol.42』(2019年6月発行)から抜粋したものです】