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DNAで創る、動かす ~ようこそ分子工作の世界へ~

2023.9. 5

工学研究科・准教授 鈴木 勇輝

鈴木勇輝准教授の写真

DNAナノテクノロジーとは?

「遺伝情報を担う物質」というイメージが強いDNAですが、実は、ナノテクノロジーや材料科学の分野でも非常に注目を集めている分子です。DNAを素材として、ナノメートル(=10-9m)オーダーの精度でさまざまな形状の人工物を創り出す技術は、「構造DNAナノテクノロジー」と呼ばれ、さまざまな研究分野で多種多様な応用展開をみせています。

DNAナノテクノロジーとは?

DNA=「情報をコードしたプログラマブルなポリマー」

DNA=「情報をコードしたプログラマブルなポリマー」

構造DNAナノテクノロジーでは、「分子そのものが塩基配列というかたちで情報をコードする」というDNAの性質をフルに活用しています。例えば、DNA origami*1と呼ばれる構造作製手法では、多数の短い合成DNAによって長い一本鎖DNAを折りたたむことで、望みの形状のナノ構造を創り出します。200本余りの異なるDNA鎖それぞれが、それ自体の塩基配列に従って、結合すべき相手と結合すべき場所で塩基対をつくることで、デザインした構造へと組みあがります。まさに、プログラムされた自己組織化による構造構築といえるでしょう。

*1:ロズムンド博士によって考案された手法

DNAでできた分子装置

最大の利点は、デザインした形状を比較的手軽に実現できることです。カプセルのような中空構造も、回転子のような機械要素も、配列設計したDNAを混ぜ合わせるだけで作製できます。作製した構造の内部や表面には、DNA以外の分子を並べることもできるため、アイデア次第でさまざまな機能や動作を実装することができます。例えば、私たちは、分子信号や溶液環境に応答して変形するような分子スケールのアクチュエータの開発に成功しています。これらを応用して、生きた細胞上のタンパク質分子を操作することにも挑戦しています。

DNAでできた分子装置

【この記事は『三重大X(えっくす)vol.46』(2022年12月発行)から抜粋したものです】