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ウィルスで感染症を予防し、がんを治療する

2023.9. 5

医学系研究科・教授 野阪 哲哉

野阪哲哉教授の写真

風邪のウイルスを改変し、遺伝子とタンパク質の運び屋に

ウイルスというと悪者のイメージがありますが、遺伝子を運ぶ便利屋としても使えます。便利屋は通常、遺伝子を運ぶだけですが、当教室とベンチャーのバイオコモが共同開発したBC-PIVは、元は子供の風邪のウイルスですが、遺伝子改変により、体内で増えなくした上で、遺伝子とタンパク質を同時に運ぶ便利屋に仕立てました。運ぶものを換えることによって、ワクチンや抗がん剤等、様々な医薬品に様変わりします。

風邪のウイルスを改変し、遺伝子とタンパク質の運び屋に

鼻スプレーワクチンで新型コロナウイルス感染を防御

鼻スプレーワクチンで新型コロナウイルス感染を防御

新型コロナウイルスは次々と変異し、ブレイクスルー感染を起こします。BC-PIVから作った鼻スプレーワクチンは、ハムスターを使った新型コロナウイルス感染実験では、鼻と肺のウイルス増殖をほぼ完全に抑えます。鼻スプレーワクチンは痛みがなく、感染自体を防ぐので、欧米でも開発が始まっています。欧米のワクチンは体内で増えるタイプですが、BC-PIVは体内で増えないので安全性が高い上、少量で良く効くので実用化が待ち望まれます。他の感染症ワクチンにも応用できます。

免疫を活性化し、がん細胞を根絶

体の中にがん細胞ができると、T細胞という免疫細胞等ががん細胞を攻撃します。そこにはアクセルとブレーキがあり、近年、ブレーキを弱めることで攻撃力が上がることを利用した治療により、治らないがんが治るようになってきました。BC-PIVはウイルスの表面にT細胞を活性化するタンパク質を搭載することによって、がん組織に注入すると、がん組織に集まってきたT細胞のアクセルを踏み込んでT細胞を活性化し、がん細胞を攻撃します。まだ動物実験段階ですが、副反応が少なく、とてもよく効きます。

免疫を活性化し、がん細胞を根絶

【この記事は『三重大X(えっくす)vol.46』(2022年12月発行)から抜粋したものです】