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基礎研究医養成をめざして

2020.8.25

基礎研究医養成をめざして

医学系研究科・教授 西村 有平

西村教授の写真

ゼミ室にて新医学専攻コース・大学院の学生とともに

基礎研究医の割合は低下している

医学には、患者さんと直接関わって治療や研究を行う臨床医学と、患者さんには直接関わらずに病気の研究などを行う基礎医学があります。大学院に進学する学生の中で、基礎医学を専攻する医学部出身者(基礎研究医)の割合が低下していることが問題となっています。基礎医学では様々な観点から病気を研究するので、理系・文系を問わず様々な学部出身の研究者が協働することが大切です。医学部出身者は実習を通して実際に患者さんと接した経験があるので、病気を具体的にイメージできる強みがあります。基礎研究医の割合を増やすことは、研究者の協働を促進し、病気をより深く理解することにつながります。

グラフ:基礎研究医養成に関する状況

現在の取り組み

基礎研究医の割合を増やすためには、早くから基礎医学に触れることが大切です。三重大学医学部では新医学専攻コースという制度があり、1年生から6年生までの間、好きな研究室で研究し、その成果を発表することができます。私の研究は、様々なデータベースとコンピュータを利用して疾患と薬物の新たな関係を予測し、モデル動物を用いてその予測を検証することが1つの柱となっています。この研究に新医学専攻コースで参加している新川君(1年)、三浦君(2年)、鈴村君(3年)はすでに全国や国際レベルの学会発表を行っています。芦川君(臨床研修医1年目)は10報の研究論文(うち3報は筆頭筆者)を国際誌に発表しました。岡部君(5年)は優れた教育ツールを開発し、私はそれを用いて三重大学ジュニアドクター育成塾※1や高大連携、オープンキャンパスで薬理学の実習を行っています。薬の作用を視覚的に理解できるので実習生にとても好評です。

実習風景
基礎研究医への道のり

※1:三重大学ジュニアドクター育成塾 https://jr-doc.pj.mie-u.ac.jp/
※2:スーパーサイエンスハイスクール

将来展望

基礎研究医を目指す全国の医学部生の交流を深めるため、西日本医学生学術フォーラムや次世代MD研究者育成プロジェクト全国リトリートなどに積極的に参加しています。今年の全国リトリートでポスター発表優秀賞を受賞した弓削君(6年)(三重大X vol.43 P25 学生表彰に掲載)は卒業後、卒後臨床研修と並行して基礎系(統合薬理学)大学院生として研究を続けます。ジュニアドクター育成塾からは2名の中学生が統合薬理学の研究室に来て、すでに育成プログラムの第二段階の研究を行っています。様々な年齢の学生さんが基礎医学の楽しさを実感できる研究室づくりを通して、基礎研究医の養成に微力ながら貢献していきたいと思います。

【この記事は『三重大X(えっくす)vol.43』(2019年12月発行)から抜粋したものです】