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看護技術教育(Nursing Art and Science)を考える
~Evidenceに基づく思考とEmotional Intelligenceを育む~

2022.12.26

看護技術教育(Nursing Art and Science)を考える
~Evidenceに基づく思考とEmotional Intelligenceを育む~

医学部看護学科・准教授 井村 香積

井村准教授の写真

初学者に対する
段階的協同学習の実践

私の専門分野は看護教育学で、学部1~2年の看護初学者に理論と実践の観点から看護技術教育を行っています。学生が理論を活用して自ら学んでいけるように、教育方法を工夫しています。例えば、まず事前学習で技術を悩みながら体験する(ビデオで撮影)→次に学内演習で体験を仲間と振り返る(指摘・分析)→気づきから仮説を立てるという「体験学習循環過程」(津村俊充,1992)を回すという考え方を取り入れています。この方法を段階的に取り入れ、理論と実践をつなぎ、技術をArtにするために学生の感性を育てています。

図:体験学習循環過程

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看護学生のEmotional Intelligence

学生が既習技術を活用して、患者さんに最善のケアを提供するためには、患者さんや医療スタッフとの人間関係が基盤となります。人間関係技能のひとつにEmotional Intelligence(EI)があり、看護学生のEIを育てるための研究をしています。看護師との比較では、看護学生は他者に対する感情は多くもっているものの、看護実践に感情を活用することはできていませんでした。私は「看護学生の人間関係形成尺度」を開発し、EIの発達に貢献できるコミュニケーション教育を推進しています。

教科書の写真
図:Emotional Intelligence(EI)とは?

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附属病院のスキルスラボとのコラボレーション

病院での実習が始まる前に、実践に近い技術経験ができる機会を設けています。複数の患者事例を作成し、それを高機能のシミュレーション人形に設定し、リアリティある学習場面を作っています。学生は人形が呈する症状を観察し、看護問題を考え、どのような技術が必要かを考えて援助を実施します。この一連の過程で考えた内容と技術を実演して学習成果として発表します。

附属病院のスキルスラボは、現場の看護師のための教育の場です。ラボの高機能シミュレーション人形と場所を借り、学生はいつもと違う緊張感のあるなかで、ラボの教育担当看護師に人形の変化する症状の観察ポイントを教わりながら学んでいます。今後、学生のEIを育むために、この演習をさらに発展していく予定です。

演習の写真

【この記事は『三重大X(えっくす)vol.45』(2021年12月発行)から抜粋したものです】