生物資源学研究科・教授 関谷 信人

気候変動は土壌を劣化させる?!
作物はその一生に必要な養分の多くを肥料からではなく土壌中の有機物から獲得しています。しかし、気候変動に伴う地温上昇は、土壌有機物の分解を促進し、短期的には作物の養分吸収を増加させる一方で、長期的には土壌有機物の減少を招く恐れがあります。気候変動が土壌有機物やそれに依存する作物に与える影響についてはほとんど分かっておらず、今後の持続的な作物生産を確保するためには、土壌有機物の動態を詳細に理解することが不可欠です。

科学と経験が交差する共創の場
私達は、研究の出発点から農家圃場に立ち、現場課題と向き合うことを大切にしています。作物学、土壌学、微生物学、食品化学など様々な分野の専門家がチームを組み、農家と対話しながら、問題の本質を見極めていこうとしています。そこには、研究者の科学的知見と、農家の知恵が交差する「共創の場」があります。互いの強みを活かし、試行錯誤を重ねる中で、現場に即した解決策を導き出していきます。大学の研究室や試験圃場だけでは得られない、生きた知見がそこにはあると信じています。

Global + Local = Glocal
三重大学とJICA(国際協力機構)は、本年度から国際資源植物学研究室の在学生や卒業生を海外協力隊としてガーナへ派遣することで合意しました。日本の農村での研究活動とアフリカの農村での協力隊活動の経験を融合させ、唯一無二のGlocalな視点を養ってもらいたいと思っています。Think Globally, Act Locallyを研究室の理念に掲げ、地域に根差しつつも、広い視野を持った人材の育成に力を注いでいます。

【この記事は『三重大X(えっくす)vol.49』(2024年10月発行)から抜粋したものです】