異常気象の原因を地球規模で探る

2018.3.12

インタビュアー:広報室

今回は、生物資源学研究科の立花 義裕(たちばな よしひろ)教授にインタビュー取材を行いました。

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-立花先生はどんな研究をされているのですか。

立花専門は気象学です。気象学、おもしろいですよ!

-先生にとって気象学のどんなところがおもしろいのですか。

立花いつもと違うめったにないことが起きると、誰もが興味を持つと思います。特に僕は科学者なので、普通でない事が起きると、どうしてそうなったのか知りたくなります。わからないことが起こったら、わかりたいと思う気持ちが人より強いんだと思います。なので、異常気象が起こるとなぜ起きたのか理由を考えたくなります。
特に、地球の反対側で起きた現象が日本の気象にも影響を及ぼすとか、その異常気象の原因が思いもよらないところにあることを発見することは楽しいですね。

-原因は思いもよらないところ、、、2010年の記録的な日本の猛暑もどこか遠いところの影響だとニュースで見て驚いた事があります。確かヨーロッパも猛暑だったんですよね。

立花2010年の猛暑については様々な原因がありますが、僕も、当時の修士課程の大学院生の大富さんと一緒にその原因の一つについて論文を書きました。
2010年の猛暑の原因のひとつは、カリブ海を含む大西洋の海水の温度が高かったからです。なぜ海水の温度が高かったかというと、シベリア、ヨーロッパ付近でその前の冬が寒かったためです。

-寒い冬だったから、次の夏に海水の温度が高くなった、、、どういうことでしょうか!?

立花冬、寒い時は北風が吹きます。大西洋の上に強い北風が吹き、赤道付近にまでいってまた戻ってきます。すると海も赤道付近の温かい水が北へ流れます。アフリカ周辺の温かい海水が大西洋に流れ込み、大西洋の海水の温度が上がったのです。水は冷めにくく温まりにくいので(空気はすぐ冷える)、海の水もいったん温まるとしばらく温かいままで、夏まで持ち越して、水温が温かいままだったのです。

少し専門的な話になりますが、入道雲は暖かい海からよくできます。水温が温かかった大西洋の上にはたくさんの入道雲ができました。入道雲の中の上昇気流がどんどん上がり、対流圏にぶつかり、北に流れます。その気流の温度が下がって空気が降りてききます。下降気流は高気圧になり(雲が押しつぶされて消え、天気がよくなる)、晴れ渡ってヨーロッパ―が猛暑になったのです。

-そういうことですか、、、ヨーロッパが猛暑になるのはわかりましたが、でもどうして日本まで猛暑になったのですか。

立花その理由は、偏西風(西から東に吹いている風)が高気圧の発生により蛇行し始め、ヨーロッパからの熱い空気が日本にも運ばれてきたことが原因です。

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高気圧の発生と偏西風について説明してくださる立花先生

-そういうことだったんですね!ということは、2010年の日本の猛暑の原因は、その前の冬のヨーロッパ周辺が寒かったことが始まりなのですね。
普通では考え付かないことだと思いますが、どうして発見されたのですか。

立花まず、仮説を立てます。もしかしてこうなんじゃないかな、と思う事を調べていきます。インスピレーションもありますが、子どもの頃から好奇心が旺盛で、なにか起きると、なぜ起きたかということを考える癖があります。そういうこともあって、ひらめくのかもしれません。
人がやらないこと、思いつかない事をなんとかして思いつきたいと思っているし、よく言われている事じゃない事がなにかないか、といつも考えています。

-最近はどんな研究をされているのですか。

立花北極振動(偏西風の振動・吹き方のこと)の研究をしています。
何らかの原因で北極振動がプラスになると南風が吹き、マイナスになると北風が吹きます。なぜプラスになったりマイナスになったりするのかを研究しています。それがわかると、猛暑や寒波のと良さなどが予測できるようになります。
大西洋の海の温度の変化も原因のひとつですし、北極温暖化の影響で冬の寒波が強まることもわかってきています。

-先生は最近北極の温暖化についての論文を発表されていましたね。

立花北極の温暖化が急速に進んでいるひとつの理由を僕の研究所の研究員の小松さんとともに発見しました。
(プレスリリースページ http://www.mie-u.ac.jp/R-navi/release/cat-1/post-9.html )
この論文についての記者発表をした際、温暖化の影響で北極振動がマイナスになり、偏西風が蛇行して日本の寒波が強まるということについても説明しました。

-三重県では何か研究されていることはありますか。

立花僕の研究室で、鈴鹿おろし(鈴鹿山脈から吹く北西の季節風)がなぜ吹くのか、四日市にはどういうときに雪が降るのか、などを研究している学生がいます。
鈴鹿おろしについては、三重大学の伊賀サテライトや、三重大学附属農場や、青山高原の頂上で気球を上げました。
地域でも、グローバルにも研究をしています。

せっかくの人生なので、おもしろく感じる事をしていたいと思っています。
ただ数年前から、せっかくの研究結果も知ってもらわないと意味がないのでは、と思うようになりました。今後は研究結果を多くの人に知っていただいて、役立てていただければと思っています。気象や気候は、僕ら基礎研究者では考えつかないような、思いもよらないところに影響があると思います。気象を知ることでビジネスチャンスが広がると思います。

研究者情報


20180227_Rナビ立花先生 1 大学院生物資源学研究科・生物資源学部 共生環境学専攻 
 地球システム学 気象・気候ダイナミクス 

 教授 立花 義裕(Tachibana, Yoshihiro)

 専門分野:気象学・気候力学
 現在の研究課題:異常気象に関係する様々なスケールの気象現象、
 偏西風の蛇行、北極振動、海洋や海氷が気象や気候に及ぼす影響
 

【参考】
 個人HP http://www.bio.mie-u.ac.jp/kankyo/shizen/lab1/
 教員紹介ページ(立花 義裕) http://kyoin.mie-u.ac.jp/profile/2504.html