目を見ればわかる!?
  魚の知られざる行動や生態を目の機能からさぐる!

2017.7.10

目を見ればわかる!?
  魚の知られざる行動や生態を目の機能からさぐる!
生物資源学研究科・准教授 宮﨑 多惠子

宮﨑准教授の写真

実験室にてトラザメと

目の構造はカメラと同じ!

私たちの目は「"カメラ"眼」と呼ばれます。カメラボディ(=眼球)の中に、光を1点に集めることができる性能の良いレンズ(=水晶体)と像を映すフィルム(=網膜)を持っているからです。脊椎動物※1の多くは環境情報の8割以上を視覚によって得ていると言われていて、人にとっても魚にとっても、目はとても大切な感覚器です。魚は種類によって住んでいる水深や水域が違い、また捕って食べている餌も違います。生息環境や行動が違えば、視力がいちばん効く方向や色覚も違ってきます。私たちは魚が水の中でどんな生活をしているかを一緒について行って観察することはできませんが、目を調べることでおおよその生活様式を推定することができます。

※1:魚類、鳥類、両生類、爬虫類、哺乳類からなる、背骨を持つ動物のこと。

図:目の構造はカメラと同じ
図:魚は生態によって視軸が違う

魚の目の秘密!

目の機能の中で一番に思いつくのが「視力」です。魚の視力は水晶体の直径(=レンズの焦点距離)と網膜の細胞密度(=フィルムの画素数)から計算することができます。値は0.1~0.4程度で"近視"です。「そんなに悪いの?」とよく聞かれますが、水中では光の減衰が大きいため、とても澄んだところで、どんなに大きな物体でも見える距離はせいぜい40mです。したがって魚は高い視力を持つ必要がないのです。また、網膜の中には細胞が少ないところと多いところがあり、密度が一番高いところと水晶体の中心を結ぶ方向が視力が一番きく方向で「視軸」と言います。水深100~400mの層を高速で泳ぎながらイワシやイカの群れを探しているクロマグロの視軸は前方の斜め上方向です。一方、岩礁に潜んで目の前を通り過ぎる餌生物を待ち伏せるマハタの視軸はほぼ前方を向いています。

図:紫外線を見るマイワシ

紫外線(UV)を見る魚!?

人の網膜には赤、青、緑を最も吸収するタンパク質(視物質)を含む"錐体"という細胞があり、これら3種類の細胞で400~800nm※2の範囲の色を見分けています。脊椎動物の祖先はさらに360~400nmの紫外線を吸収する"UV細胞"も持っていたのですが、進化の過程で失い、紫外線はむしろ人の目に有害な光になってしまいました。しかし魚の中にはいまもUV細胞を持ち、餌の発見や仲間の見分けなどに利用している種類がいます。UV細胞は紫外線が豊富な浅い場所に住んでいる魚でよく発見されます。例えばマイワシはお腹側の網膜にたくさんのUV細胞を持ち、海面方向からの紫外線をうまく受け取るようになっています。日本の周辺にはマイワシと近縁種で生活様式もそっくりなカタクチイワシとウルメイワシがいますが、いまのところUV細胞は見つかっていません。3種類のうちマイワシだけが春に産卵をし、他の2種は1年中産卵をします。もしかしたら、マイワシは紫外線量が増える春の到来をいち早く察知するためにUV細胞を持っているのかも知れません。

※2:nm(ナノメートル)とは、光の波長を現す単位のこと。

【この記事は『三重大X(えっくす)vol.37』(2017年1月発行)から抜粋したものです】