記憶分子光解析センター

重点リサーチセンター

記憶分子光解析センター

Optical Neurobiology Center

研究内容

これまでの研究で、シナプス可塑性に関わる分子は多数報告されています。中でもグルタミン酸受容体の一つであるAMPA受容体は、シナプス可塑性の中でもシナプス応答の長期増強(LTP)に関わることが明らかとなり、記憶の中心分子であると示唆されました。我々はこれまでに、記憶の獲得には学習に伴い新しくシナプス移行したGluA1/1が重要なことを発見しています(Takemoto K et al. Nat. Biotechnol. 2017)。一方で記憶を獲得した後には、固定化・貯蔵というプロセスを経て情報が長期間・安定的に貯蔵されますが、その分子メカニズムについては多くが謎です。記憶を貯蔵する細胞として記憶エングラムの存在が明らかになりましたが、そもそも無数の神経細胞の中から、どうやって少数のエングラム細胞が選ばれるのかは不明です。また例えば、エングラム細胞同士が混線して記憶がまじりあうことはないのか?など、記憶のメカニズムには未解明の謎が多く残されています。
海馬においてAMPA受容体は、GluA1・GluA2・GluA3といった三種類のサブユニットが発現していますが、それらが組み合わさりGluA1/1・GluA1/2・GluA2/3といった3種類の複合体が存在しています。そこで本センターではAMPA受容体を軸に、我々が得意とする二光子顕微鏡下でのイメージングや光操作・生化学解析など独自の最先端技術を駆使し、記憶貯蔵原理の解明を目指します。まず、記憶の獲得・固定化・貯蔵といった記憶過程におけるAMPA受容体の動態を二光子顕微鏡によるイメージングにより解析し、記憶貯蔵期特異的な分子動態の解明を目指します。次に各AMPA受容体に対し、CALI(Chromophore-assisted light inactivation)を応用した光不活化技術を開発し、記憶貯蔵期特異的に機能する分子を明らかにします。さらに特定した分子について、記憶貯蔵期特異的に生じる生化学的変化を同定し、分子からシナプス、エングラム細胞、個体へと至る階層横断的な研究を進め、記憶貯蔵メカニズムの包括的な理解を目指します。

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