
重点リサーチセンター
ゲノム操作・解析技術開発ユニット
Unit for Genomic Manipulation and Technology Development研究内容
これまでもコピー数変動現象は様々な分野で利用されてきました。しかし,ほとんどの場合において,コピー数変動がどのように生じ,どのように細胞機能と関係するかは理解されていません。本研究の目的は,コピー数変動が引き起こす様々な細胞機能の変化を正確に予測,制御,操作可能にすることであり,それにより特定の生物機能を強化させる品種改良研究が発展すると期待されます。
最近,ユニット代表の竹林は,単一細胞レベルでゲノムDNA複製状態を全ゲノム解析できるsingle-cell DNA replication sequencing (scRepli-seq)法という画期的な技術を独自に開発しました。DNAコピー数の検出を本質とするscRepli-seq法は,染色体異数化の検出への応用が可能です。この新技術を基軸として,下記の研究計画を進めるとともに,scRepli-seq法を応用することで,単一細胞レベルでゲノムコピー数変動と細胞形質を同時に解析できる最先端技術を構築します。これにより本計画を国際的に優位性を持って進め,ゲノムコピー数変動の原理と生理的意義を世界に先駆けて解明します。
- 計画1. 種々の細胞集団におけるゲノムコピー数変動の規則性解明
- 計画2. ゲノムコピー数変動パターンと細胞形質との関係解明
- 計画3. ゲノムコピー数変動パターンを制御する因子の探索
- 計画4. ゲノムコピー数変動理論の構築
本ユニットの目的を達成するために,まず,規則をもったゲノムコピー数変動による細胞機能の多様化の実態を明らかにします(計画1,2)。また,その原理を明らかにして操作可能にします(計画3,4)。同時に,研究計画を遂行するために,新しいゲノム解析技術の開発も進めます。ユニット編成にあたって,医学から応用生物系に渡る広い専門性をもつメンバーを選びました。ユニット代表の竹林はこれまで,新学術領域やJST-CRESTなどの支援を受けて新技術開発を通した先端ゲノム研究を行ってきました。代表的教員の栗谷は,栄養学が専門ですが,動物を用いた実験系や培養細胞の分化アッセイ系などに精通しています。代表的教員の橋詰は,基礎医学と臨床医学の両方のバックグラウンドを持ち,CRISPR/Cas9ゲノム編集技術を利用した新規のダウン症候群患者治療法確立に取り組んでいます。サポート員の奥村は,顕微鏡イメージングによる細胞生物学的解析を専門としており,共同研究などを通してこれまで国内外の多数の研究者と幅広いネットワークを構築していることから,技術的なサポートだけでなくユニット運営への助言を行っていきます。サポート員の籠谷は,三重大学内に設置された辻H&Bサイエンス研究室(辻製油株式会社)において,大学発の研究成果と企業による製品開発をつなぐことに長年取り組んできており,本ユニットから生まれる成果を利用した産学連携活動への助言を行っていきます。また,学術論文発表と並行して,2023年に発足させた「倍数性研究会」や国内外の学会での発表を通して,本ユニットから生まれる成果をタイムリーに発信していきます。

独自に開発したsingle-cell DNA replication sequencing (scRepli-seq) 法
