半導体の結晶科学とデバイス創製センター

卓越型リサーチセンター

半導体の結晶科学とデバイス創製センター

Research Center for Materials Science and Advanced Electronics Created by Singularity

研究内容

コロナ禍を機に、殺菌やウイルス不活性化の手段として深紫外LEDが期待されている。三重大学は、その普及の鍵となる低コストで高品質なサファイア上AlNテンプレート技術を開発した。サファイアを基板に用いたAlN膜は、大きな格子不整合により高密度な貫通転位が発生し、その密度を109cm-2以下に低減するためには、従来から用いられてきたMOVPE法では、パルス法などのバッファ層を用いた場合でも2-3μm以上の厚いAlN層が不可欠であった。我々のグループでは、AlN 膜をRFスパッタ法により成膜(Sputter-deposited AlN; Sp-AlN)して、図に模式的に示す様なFace-to-Face配置の高温アニール(Face-to-face Annealing; FFA)により、簡便に低転位密度のAlN膜が作製可能であることを報告してきた。

現在、市販されている深紫外LEDには、大きく2種類がある(a)(b)。深紫外LEDを実現するためには、サファイア上にAlNのエピエピタキシャル成長を行う必要がある。低温バッファ層技術では、欠陥が少ないAlN結晶を作ることが困難であり、発光効率の向上への障害となっている。一方、AlNの単結晶基板上に素子を形成したLEDも製品化されている。AlN単結晶の高い結晶品質を生かすために発光波長は殺菌により有効な265nmである。殺菌やウイルスの不活化にはDNAでの深紫外光の吸収が関係するが、265nmの深紫外線は280nmよりも約1.8倍多く吸収する。すなわち、同じ光出力のLEDならば、265nmのLEDの方が殺菌効率は高い。ただし、後者は現状では、AlN単結晶ウエハーはサファイアよりも、単価が500~1000倍高く、大口径化が困難であることから、LEDの低価格化は極めて難しい。三重大学では、後述するように、低価格なサファイアを基板に用いて、高品質なAlN結晶を得る技術を、量産性に優れたスパッタ法と高温アニールとのみ合わせにより実現し、そのAlNテンプレートを用いた265nm発光のLEDを開発する(c)。また、さらに発光波長が短い230nm帯のLEDについても開発を進めている。

TOP