clear
大学・市民連携による持続的地域文化運動の構築 ~奥熊野山村古文書の調査と活用Ⅱ~

【活動の概要】
1.活動の背景,必要性,目的
熊野古道が世界遺産に登録されてから今年7月で10周年を迎える。熊野地域は、伊勢神宮と熊野三山双方の影響を受け、海と山に囲まれた自然条件から、熊野古道以外にも多様な文化財に恵まれた地であるが、これまで十分な調査がなされているとは言い難い。特に奈良・和歌山県境に近い育生地区は、山村の生活を現在まで留める極めて個性的な地域で、江戸時代初期の文書を含む貴重な古文書が少なからず残されている。こうした文化財を丹念に整理し、地域の歴史文化を発掘することが、熊野古道の多方面での文化的活用を図る上でも、強く求められている。
2007年に地元市民グループを中心に「熊野古文書同好会」が結成され、崩し字解読の勉強会を中心に熱心に活動を続けている。だが、古文書の取り扱い方や解釈、活用の仕方については習熟しておらず、学術的な指導を依頼されている。
塚本研究室では、2001年以来、東紀州地域での文化財調査を市民と共に行ってきており、1万3千点に及ぶ尾鷲組大庄屋文書を整理し、報告書を刊行したほか、熊野地域については三重大学地域貢献事業支援助成を得て、2008~09年度に大泊町の若山家善根宿納札の調査と展示、成果報告会を行い、引き続き2010年度には五郷町かやのき資料館収蔵湯谷文書の調査と目録作成、2011~12年度には熊野歴史民俗資料館所蔵文書の調査及び報告会の開催と、活動を積み重ねてきた。2013年3月に熊野市民大学として開催した古文書調査の報告会は、約70名の市民の参加を得、大変好評であった。2013年度からは育生町粉所区の古文書調査に着手し、これまで3度の現地での報告・交流会を行っている。それらの様子は新聞各紙に大きく報道された。
こうした活動の実績を受けて、地元では行政・市民の双方から、引き続き三重大学による文化財の調査とその成果公表を求める声が強い。本計画は、そうした地元の期待に応えて、大学(教員・学生)と市民グループ、行政と連携した文化活動を持続・発展させ、三重大学の地域貢献を強固なものとして定着させることを目的とする。

2.活動内容
年に2度(9月と3月)の合同での集中古文書調査が主たる活動となるが、その際に随時、市民向けの古文書解読・解釈・活用の仕方についての指導を行う。また古文書を生み出し、守ってきた粉所区住民との交流を深め、集中調査の最終日には現地での成果報告会を実施する。
市民・学生を交えて、資料的価値が高い古文書を中心に、地元新聞にその内容を紹介するコラムの連載を計画している。既に吉野熊野新聞、南紀新報の担当者とは相談済みであり、歓迎の旨を伝えられている。連載用の原稿も10編ほどを用意した。

→ 平成26年度活動状況報告書