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03_「地域の海をよく知る地域の人が地域の子どもたちに海を教える」 〜三重県南部における地域産業振興と結びつけた自然資源を活用する地域人材育成事業

【活動の概要】

1.本活動の背景,必要性,目的

【背景,必要性,目的】

「氷河と砂漠以外のすべての自然環境がある(植野めぐみ談)」と言われるほど,三重県南部には豊かな自然環境がある.この自然環境を活用した,アウトドア・観光事業,エコツーリズムなどの自然啓発活動を三重県,国内,インバウンドとして海外からのアウトドアアクティビティーに匹敵するポテンシャルがありながら,コース認定,整備,ガイド配置,関連する宿泊施設やモビリティなど,地域が連携したしくみが未発達である(たとえば,「観光立国の正体」 藻谷浩介・山田桂一郎).近年,三重県は県内で「三重まるごと自然体験ネットワーク」を形成し,自然体験ガイド,観光公社,市町などの連携ネットワークを構成した.また,三重県とモンベル社と包括連携を結び,SEA TO SUMMIT, JAPAN ECO TRAKなど連携事業を進めている.自然ガイドを生業とする若手事業者「南三重モビリティの会」「熊野ガイド協会」などの自主組織を作り,三重県南部で連携する機運が生まれているが,人材不足の状況がある.漁業・林業といった三重県南部の地域産業の振興と結びつけた,自然資源を活用する地域人材育成が求められている.

三重大学生物資源学部共生環境学科では,「自然環境リテラシー学」という実践,実感型のカリキュラムを平成30年度より開始した.これは,三重の豊かな自然環境を総合的に理解する能力を身につけ,理解したことを地域内外の人々にわかりやすく正しく伝達・魅力を発信し、自然環境を楽しみ,守り,持続的に保護していく,責任のある行動をとれる「自然環境リテラシー」を身につけた人材育成を目的とする.令和2年度はコロナ禍の影響でカリキュラムとしての実施はせず,研究活動として実施した.この3年間は,多くの学生が,尾鷲市,紀北町,南伊勢町の協力の下で,地域において,プロの自然環境ガイドの方々と共に,安全・危機管理を徹底し,地域の自然や地域のことを,体験・実感の中で学んだ.自然環境リテラシー学を学んだ学生は,各地での地域での諸活動を展開し,大学の実習で学んだ学生が,地域貢献活動に参画する状況が生まれている.

人口減少・少子高齢化が著しく進行する三重県南部では,地域人材育成が地域の急務の課題である.地域において,豊かな自然環境があるにもかかわらず,地域の小学生,中学生,高校生は,ほとんどその自然の中での体験や学習をできていない.小中高校の教諭が,自ら自然の中での体験・実感・知識が希薄で,自然のことを体験的実感的に教えることができない現状がある.子どもたちの親世代も,市町の役場職員も,同様の状況がある.日常的に海に出て漁業を営む漁師も,後継者不足の状況にあり,海のこと,自然のこと,海洋資源のことを伝える世代がおらず,また,自然のことを体験的実感的に教えることができない状況にある.このような状況を受け,「地域の海をよく知る地域の人が地域の子どもたちに海を教える」,地域の産業振興と結びつけた自然資源を活用する地域人材育成を目的として,三重大学「自然環境リテラシー学」を学んだ三重大学学生とともに,市町,および,地域の漁業従事者とが連携して行う事業の展開を継続申請する.

本事業は,確実に成果を生んできており,自然環境人材育成のため,継続的な実施が不可欠である.自然豊かな三重県南部において,その自然を活用したアウトドア・産業の創出・振興を目指し,また,漁業などの地域産業の維持・継承・発展に寄与し,地域の発展・活性化につながる地域貢献事業である.また,三重大学において実施する「自然環境リテラシー学」で学んだ大学生が,自然体験型の地域実習を,地域の小中高校教諭,市町役場の観光関係職員などに学んだこと,体験を伝えていく形態で,大学の実習が地域貢献に結びつける事業である.

2.活動地域と内容

【活動する地域】

令和3年度は,これまでに取り組んできた,尾鷲市,紀北町,南伊勢町,を継続し,新規に,明和町(明和観光商社),大台町,鳥羽市を加えて,活動領域とする.尾鷲市・紀北町では,自然体験ツアーなどを実施している小山ハウス(代表 森田渉氏),尾鷲市商工観光課(芝山有朋参事)と連携してすすめ,市内の小学校,小山ハウス,尾鷲藪漕隊,小川耕太郎∞百合子社,尾鷲ライフセービングクラブ,尾鷲市林業振興協議会,森林組合おわせなどと連携していく.南伊勢町では,自然体験ツアーなどを実施している,サニーコーストカヤックス(代表 本橋洋一氏),漁業・養殖業を営む有限会社友栄水産(代表 橋本純氏),および,南伊勢町役場(小山巧町長,南伊勢町商工観光課 山本高弘課長,弓場悟係長),南伊勢町教育委員会のふるさと教育(片山教育長)と連携してすすめる.

【内容】
  • (1)尾鷲市との連携 "森の国"尾鷲の自然環境人材育成事業
    • 体験プログラム開発・実施の核となる「大学生」育成のための「自然環境リテラシー学」の連携実施
    • "森の国の尾鷲キッズ"育成~「山育・木育・おわせいく」「雨育・川育・おわせいく」「海育・とと育・おわせいく」子どもたちの自然体験プログラム開発
    • "森の国の尾鷲へ"~観光客誘致のための自然体験プログラム開発
  • (2)紀北町との連携 "森・海・清流の国~紀北町"の自然環境人材育成事業
    • 体験プログラム開発・実施の核となる「大学生」育成のための「自然環境リテラシー学」の連携実施
    • "森・海・清流の国~紀北町"キッズの育成~子どもたちの自然体験プログラム開発
    • 森・海・清流の国~紀北町"~観光客誘致のための広告・宣伝企画
  • (3)南伊勢町との連携 「"海の国~南伊勢町"の自然環境活用人材育成」
    • 自然環境活用人材育成の核となる「大学生」育成のための「自然環境リテラシー学」の連携実施
    • "海の国~南伊勢町"キッズの育成~「ふるさと教育」と連動した,子ども自然体験プログラムの実施
    • "海の国~南伊勢町"~観光客誘致のための広告・宣伝企画
    • 「地域の海をよく知る地域の人が地域の子どもたちに海を教える」プロジェクトの実施
  • (4)大台町との連携 「"山と水の国~大台町"の自然環境活用人材育成」
    • 自然環境活用人材育成の核となる「大学生」育成のための「自然環境リテラシー学」の連携実施
    • "山にとまる・水とあそぶ"~大台町自然体験プログラムの開発
    • 三重県立昴学園高校との連携による自然環境プログラムの連携実施
  • (5)明和町との連携 「"生きる力を育む"自然環境リテラシーキャンプの地域展開」
    • 自然環境活用人材育成の核となる「大学生」育成のための「自然環境リテラシー学」の連携実施
    • "生きる力を育む"自然環境リテラシーキャンププログラムの開発
    • 町内小中学校との連携による自然環境プログラムの連携実施
  • (6)鳥羽市との連携 「海洋教育の地域展開」
    • 自然環境活用人材育成の核となる「大学生」育成のための「自然環境リテラシー学」の連携実施
    • "海のようちえん"プログラムの連携実施

3.期待される活動成果等

  • 三重大学・学生の成長(これまで延べ130名の学生参加),年間あたり,地域活動する学生約30名の創出
  • 自然体験インストラクター(プロの指導者の資格)資格取得者20名の創出
  • 地域の小学生の参加・成長,約150名
  • 地域の小学校教諭などの体験プログラム参加,約50名
  • 地域の様々な人材の連携のしくみの創出

→2021年度活動状況報告書