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03_地域における認知症患者の早期診断と地域包括ケアへの紐付の試み

【活動の概要】

1.本活動の背景,必要性,目的

独居や老々世帯の増加に伴い、地域で孤立し地域包括ケアに結びついていない認知症患者が急増しており、ケアに紐付されていない患者に対して、早期介入が困難なため抗精神病薬による治療が必要になりがちである。患者の発見は地域包括支援センターを介した家族や地域からの相談に頼っており、認知症患者がケアに紐づけされないまま放置されていることが多い。

そこで、本事業では、平成28年~令和2年度で、レセプトデータから認知症が疑われるが介護保険の利用歴のない患者を同定し、その背景を明らかにした。ここで抽出された対象者には、玉城町内で開催されているサロンや介護予防教室などに参加いただけるように、玉城町地域包括支援センターや合同会社たまきあいを通じで働きかけを行っている。その際に、地域包括ケアから孤立した認知症が疑われる住民と、介護ボランティアのマッチングを行い、効果的な訪問支援・認知症予防の取組みの方法論の確立を目指す。併せて、玉城町が運用しているオンデマンドバスを活用し、地域の元気ボランティアと協力することにより認知症の人の買い物や通院の足を確保し、患者のライフスペースを維持する。地域に既存する介護予防教室やサロンなどの参加を促すことで、インフォーマルサービスを利用しながら住み慣れた地域で生活を維持できる環境を構築する。

2.活動地域と内容

地域:玉城町

内容:

  •  A)玉城町、たまきあい(合同会社;玉城町外郭団体)、三重大学の三者研究契約のもとに調査を行う。すでに体制は出来上がっており、三重大学医学部附属病院での倫理委員会の承認も得ている (承認番号1766)。三重県度会郡玉城町が管理するレセプトデータを個人情報保護のため完全匿名化後に提供してもらい、抗認知症薬内服患者を抽出する。その中から、介護保険未申請で地域包括ケアに紐づけのない患者を同定し、玉城町、たまきあいが背景調査、介入を行う。今年度は、対象者に対して介入し、介護予防教室などの社会活動の場への参加の声掛けを進める、さらに、地域包括ケアから孤立した認知症が疑われる住民と、介護ボランティアのマッチングを行い、訪問支援・認知症予防の取組みの方法論を確立する。
  •  B)予備調査では抗認知症薬の服薬歴があって介護保険の申請歴がない患者14名が同定されている。これらの患者は運転しないと生活に困難をきたす状況にあった。認知症で運転免許を返納した後の生活支援として、地域の元気高齢者のボランティアグループ(サポーターさくら)と協力し、認知症患者がオンデマンドバスを利用することを支援するシステムを構築する。

3.期待される活動成果等

認知症患者の早期発見が可能となり、介護保険への紐づけやサービスの導入が可能となる。その結果、デイケアの活用による行動・心理症状の早期発見や早期介入ができるようになり、精神科救急での対応が必要となる重度の周辺症状が減少する。 デイケア利用につながるまでに、地域に既存する介護予防教室やサロンなどの参加を促す流れを作り、インフォーマルサービスを利用しながら住み慣れた地域で生活していける環境が作られる。

→2021年度活動状況報告書