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02_日常生活における身近なものと学校授業での知識をリンクさせる事の出来る科学実験

【活動の概要】

1.本活動の背景,必要性,目的

現在,文部科学省の学習指導要領改訂に伴い,小学校の授業時間は平成20年度と比較すると小学校6年間で278時間増加しており,授業時間の増加率は高学年時に対して低学年時がより大きい。また指導要領改訂のポイントに『知識及び技能の習得と思考力,判断力,表現力等の育成のバランスを重視する現行学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で,知識の理解の質をさらに高め,確かな学力を育成。』とある。しかしながら,授業時間増加に伴う習得すべき膨大な知識は,ただ詰め込むのではなく,実生活・実社会と関連付けることにより,初めて質の高い知識となる。

したがって,子供たちが小学校の授業で学ぶ内容が日常生活にどのように関わり,使われているのかを実際に考え認識させることで,子供たちの科学に対する興味や思考力向上につながると考える。

さらに,本取り組みに参加する自然科学系技術部の特色として,技術部を構成する技術職員が多職種にわたっている点があげられ,様々な技術を有した技術職員が企画構成することで多彩な切り口から専門性の高い技術を持ち寄ることができるメリットがある。

2.活動地域と内容

前回同様,三重大学教育学部と親交が深い北立誠小学校を対象とし,昨年の実施経験を生かしてできるだけ年齢・学年に対応した実験内容になるよう工夫する。

実施スケジュールや目的等については,小学校教員および本学教育学部と綿密に打合せを行ったうえで相互理解を図り,協力関係を築く。

低学年は,生活下で自然に親しみ,遊びを通して様々な物事や現象を認識し学ぶことで理科・社会学習につながり,のちの学習基盤になっていく大切な学年でもある。

一方,中・高学年においてはこれまでに学習した見方・考え方を働かせ,見通しを持って観察・実験を行うことで問題を科学的に解決する力を養い,そして日常生活の中で生じる自然現象や物事を様々な側面から考え,解決方法を導き出す力をつけることが求められる。

実験内容案として,低学年用と中・高学年用の二つの企画を用意する。

Ⅰ.浮沈子(ふちんし)で魚がつれるかな?

つり針のついた浮沈子(ふちんし)を上手にうごかして, 魚を釣ってみよう。

小学校低学年は『浮沈子(ふちんし)で魚がつれるかな?』を通し,実生活の中で起きている現象(浮力や空気, 水のかさの変化の違い)に着目し,不思議・面白いといった疑問から問題に対する探究心を養う。例えば,なぜ何十トンもある鉄でできた船は海水に浮くことができるのか?逆に, 同様の金属であっても潜水艇はなぜ海に潜ることができるのか?普段, 何気に見ているものにも原理があって, 一見難しそうな原理が実は身近なものに利用されているということに気づいてもらう。

Ⅱ.ガリレオ温度計を作ろう

物質は, 一般的に暖まると体積は大きく・密度は小さくなり, 冷えると体積は小さく・密度は大きくなる。 しかし, 体積が変化しにくい密閉された浮沈子の密度はほとんど変わらない。 気温が上がると, ペットボトル内の水は温まり密度が小さくなるが, その一方で, 浮沈子の密度はほぼ変わらないので, 相対的に浮沈子の密度の方が大きくなり, 浮沈子は沈んでいく。

水の場合は4℃で一番密度が大きくなり, 温度が上がるにつれ少しずつ密度は小さくなっていくわけだが, ここで各温度(10,15,20,25,30℃)に設定した水の中で密度変化の少ないビーズの入った浮沈子を入れてちょうど浮くように調整し, 密度の異なる浮沈子を作製する。この密度の異なる浮沈子は, ペットボトル内で水の密度変化がおこると浮いたり沈んだりするようになるわけである。つまり気温に応じて水温が変化する=水の密度が変化することを利用したものが, このガリレオ温度計である。

例えば, 暖かいお風呂に冷たい水を入れると,冷たい水が下へ, 暖かいお湯は上の方に移動しているなど身近に経験している現象の一つも, もののかさと密度・温度の関係を表しているものであり, 実際に自分たちで実験してみることで, さらに理解を深めてもらうことができると考える。

3.期待される活動成果等

科学離れが叫ばれている昨今,学校の授業で得た知識を子供たち自らが日常の身近なものとリンクさせながら実験を進める「生きた科学実験」の場を提供することが理科・科学離れの対策の一つになると思われる。そして,科学に対する興味や思考力を向上させることで,実生活での事象について知識の応用力を養うことができ,問題を科学的に解決することができる。さらには,未来の研究者としての第一歩を踏み出せるきっかけを提供することも期待できる。

 これらの活動を三重大学が積極的に行い,子供たちに三重大学の面白さを身近に感じてもらうことにより,これから勉学をさらに頑張り,「三重大学は面白いところだ,将来三重大学に入って学びたい」と言うような積極的な欲求を促し,三重からグローバルに活動できる人材,地域社会の発展に寄与する人材をより多く育成し,輩出するきっかけになることを期待したい。

→2020年度活動状況報告書