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02_歯科のない病院における口腔ケアの現状の把握と標準化の試み

【活動の概要】

1.本活動の背景,必要性,目的

がん患者の周術期等における口腔ケアや歯科治療を多職種が連携・協力して進めることにより、各種がん治療の副作用・合併症の予防や軽減など、がん治療効果の向上およびがん患者の療養生活の質の向上を目指すことを目的とし、平成25年に三重県、三重大学医学部附属病院がんセンターが中心となり活動している三重県がん診療連携協議会、三重県歯科医師会の3者ががん患者医科歯科連携協定を締結し、連携・協力してがん患者が口腔ケアや歯科治療等の口腔管理を行うことができる体制整備を継続して行っている。

近年、口腔衛生状態の悪化による、肺炎や心疾患、脳血管疾患等の発症との関連が報告されており、医科歯科連携による入院患者や在宅患者の口腔ケアの重要性が大きな関心事となり対応すべき対象が広がってきている。

しかしながら、口腔ケアの重要性の評価が定まらない事からも、歯科のない病院における歯科衛生士の配備、常勤配置は現時点ではほとんど行なわれておらず、効果的な口腔衛生管理を行うシステムがないのが現状である。

また、地域包括ケアシステム構築における歯科の体制整備として、平成26年度より各郡市歯科医師会を口腔ケアステーションと位置付け、在宅歯科医療の充実および病院や高齢者施設等での専門的口腔ケアの普及をめざし、歯科医師の指導のもと歯科衛生士による口腔ケアが行なわれているところである。

そこで、医科歯科連携による病院の口腔管理の標準化および歯科医療関係者の配置を目指し、県内の歯科・口腔外科のある病院とない病院の口腔ケアの実態調査を行ったうえで、医療関係者への摂食・嚥下や口腔ケアについての人材育成研修の実施、入院患者への口腔衛生管理指導を実施することとする。

その際、口腔内衛生スコアや二次疾患の発症率などの指標をもって、口腔管理の有効性を示す必要があることから、有効な医科歯科連携ツールの検討も行っていく。本活動は、病院での医科歯科連携推進による口腔管理体制の推進を図るとともに、歯科のない病院への歯科衛生士の配置サポート及び歯科衛生士養成学校での本分野での指導者の養成も含まれ、今後の三重県の医科歯科連携の推進により県民の口腔衛生の向上を目指す画期的な取り組みである。

2.活動地域と内容

病院における口腔管理の標準化を目指し、平成30年度は、県内の歯科・口腔外科のある病院とない病院94病院に対して「病院における医科歯科連携による口腔ケア現状調査」を行った。

また、次年度事業を推進するための関係機関への調査結果の報告および次年度事業の検討、説明を行うとともに、県内歯科衛生士に対して、摂食・嚥下や口腔ケアの講演を行った。

平成31年(令和元年)度は、医科歯科連携の重要性を評価し連携を希望する津市内の病院に対して、口腔衛生及び口腔衛生管理の重要性に関する講演会と歯科衛生士を派遣し、入院患者の口腔衛生管理指導と医科歯科連携研修会を実施した。また、医科歯科連携部会にて本事業計画の内容と計画及びアンケート結果から歯科のない病院における歯科衛生士の派遣の需要が高いことを報告し、参加している病院の代表者に事業への理解と連携協力の依頼を行った。また、口腔内スコア等を活用、データ化し期間内に評価を行なうための議論を行った。

令和2年度は、引き続き、医科歯科連携の重要性を評価し連携を希望する津市内の病院に対して、口腔衛生及び口腔衛生管理の重要性に関する講演会と歯科衛生士を派遣し、入院患者の口腔衛生管理指導と医科歯科連携研修会を実施する。事業の継続とともに、自治体および病院への歯科衛生士の配置への検討について働きかける予定である。

実施にあたっては、三重大学医学部附属病院、行政、三重県歯科医師会および津歯科医師会、三重県歯科衛生士会、歯科衛生士養成学校等が協議を深め、対象病院に対しても十分な説明と理解を得た上で進めていく。

また、歯科のない病院における口腔衛生指導実施前後の、口腔スコアや二次疾患の有無について追跡調査を行なうとともに、口腔衛生指導を実施する歯科衛生士の技術レベルを保つために、歯科医療職者および歯科衛生士養成学校学生への人材育成教育を行っていく。

3.期待される活動成果等

病院における患者の口腔ケアの実施は、口腔を起因とする2次疾患の発症を予防し、生命の安全と医療費の抑制も期待することができる。最終的には県民の口腔衛生の向上が期待できることから、歯科のない病院においても、専門的口腔ケアを実施することができる歯科衛生士を配置することにより、患者の疾病に対する副作用・合併症の予防や軽減など、治療効果の向上および患者の療養生活の質の向上を期待することができる。

県内には、歯科衛生士養成学校が3校あり、養成学校とも連携することにより、本分野における新たな指導者の育成および歯科衛生士の新たな雇用の創出にも繋げることができる。

また、本研究は、三重大学、県内病院、県行政、三重県歯科医師会、三重県歯科衛生士会、歯科衛生士養成学校等と連携し体制を整備することにより、医科歯科連携による地域貢献を目指すものである。

→2020年度活動状況報告書