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02_東紀州地域における小学校外国語(英語)教育のシステム開発と支援活動

【活動の概要】

1.本活動の背景,必要性,目的

新小学校学習指導要領(2017年3月告示)において、中学年(第3~4学年)に外国語活動、高学年(第5~6年学年)に外国語科が導入された。2018年、2019年度の移行期を経て、2020年度より完全実施される。

各学校においては、学力向上を目指した授業づくりや生活指導、様々な課題を抱えた子どもへの対応等による多忙化が問題になっているのが現状であり、さらに「道徳」「外国語」の教科化や「外国語活動」の授業数の増加、「プログラミング教育」の実施という課題がある。小学校教員にとっては、2年間の移行期間を経ても、英語が苦手という教員も多く、教員の持つ不安感が非常に大きいものとなっている。一方、東紀州の各市町は小規模自治体で財政規模も小さく、教育委員会に在籍する指導主事も1名から2名であり、小学校における英語指導についても具体的方策はほとんど持ち合わせていない。また、東紀州地域では40%を超える学級が複式学級であるが、全国的に見れば1.6%であるため、文部科学省による複式学級における外国語および外国語活動の具体的な対策はなされていない。さらに、複式学級率が約10%の三重県においても県教育委員会からは具体的な方策は示されておらず、今後もその予定はないと聞いている。

2018年度、2019年度の本活動は、文部科学省より示されている小学校第3年~4学年、及び第5年~6学年の年間指導計画を濃縮し(第3~4学年は30時間を15時間に濃縮、第5~6学年は100時間を50時間に濃縮)、それぞれの三重大学東紀州サテライト版複式学級用年間指導計画を、2018年度版、2019年度版として作成し、各教育委員会を通して配布した。さらに、この計画に沿って現場の教員が複式学級で効率よく指導できるよう年間約50時間分の指導案を作成し、要望のあった地域や学校で模擬授業等を行ってきた。また、フラッシュカード等(700枚程度×約35校)の手作り教材を作成して各教育委員会に配付し、業者の教材購入が困難な地域の小学校で非常に喜ばれた。

その結果、東紀州地域の複式学級における「三重大学東紀州サテライト版複式学級用年間指導計画」の利用率は100%となって、地域の教育支援の目的を果たせている。

新学習指導要領が本格実施される2020年度は、各地域が教科書を採択し、各教科書会社から指導書や教材(各学年36,000円)も出されるが、東紀州地域で採択された教科書は複式学級に対する具体的な対策がなされていない。これはすべての小学校外国語の教科書に共通している問題である。そこで、本活動の主な計画は、①東紀州地域で採択された小学校第3~4学年、及び第5~6学年の教科書の年間指導計画を濃縮し(第3~4学年70→35時間に濃縮、第5~6学年140→70時間に濃縮)、第3~4学年及び第5~6学年用の三重大学東紀州サテライト版複式学級用年間指導計画を作成し、複式学級をもつ各学校に提供するとともに、②第5~6学年用の複式版指導案(70時間分)を作成し提供する(外国人指導助手も使えるように2か国語で指導案は作成)。③また、出前授業を積極的に行うとともに、校内研修や各地域での研修会に講師として参加し、2倍に濃縮された学習内容をより時短で指導できるように既存のICT機器(PC、テレビモニタ)を積極的に活用した東紀州における小学校英語教育システムを構築し、実施の支援を行っていくことである。④複式版指導案で使用する教材の開発・作成等も行う。

2.活動地域と内容

本事業で予定している活動地域及び内容は次の通りである。

<活動地域>

  • 今年度においては複式学級が多く、特に小学校外国語及び外国語活動の式学級指導に強く支援を希望している紀北町、尾鷲市、熊野市の3教育委員会管内の学校とする。

<活動内容>

  • 複式版年間指導計画の作成と公開
  • 複式版年間指導計画に基づく授業計画の作成と公開
  • 出前授業の実施
  • 市町教育委員会との共催による英語研修会の実施
  • 教材の開発・作成等

3.期待される活動成果等

東紀州地域の各教育委員会が重要課題に挙げている小学校複式学級における英語教育システムを構築することによって、各教育委員会の三重大学への期待に応えることができる。また、2020年度も引き続き「三重大学東紀州サテライト発の複式学級英語授業」として学会等で発表する計画であり(例:2020年10月の小学校英語教育学会全国大会)、三重県のみならず全国にアピールすることが可能である。また、複式学級率の高い三重県の小学校教員を目指す三重大学教育学部の学生や院生にとってもICTを活用した複式学級での外国語指導法を学ぶことが一層重要となるため、2020年度も教育学部の学部や大学院の授業の一環でICTを活用した複式学級での外国語指導の授業を担当し(教育学部須曽野教授から内諾済み)、三重大学に活動を広げる予定である。

→2020年度活動状況報告書