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02_エコフィードの利活用による地域酪農・畜産の振興

【活動の概要】

1.本活動の背景,必要性,目的

1)背景と必要性

1-1) 飢餓と飽食

日本では年間約621万トンの食品ロスが発生していると推定される。これは国際機関による途上国への食糧援助量のおよそ2倍に相当する。また世界で生産される食料の1/3が廃棄されているとの報告もある(FAO,2011)。こうした状況を踏まえ、2015年の国連の持続可能な開発サミットでは、20130年までにフードロス50%削減が決議された。この一方で世界の飢餓人口は8億5千万人に達していることから、"飢餓と飽食"の克服が世界的な課題となっている。

1-2) 貿易自由化の拡大と地域一次産業の脆弱化

TPPに代表される近年におけるFTA/EPAの締結拡大、すなわち貿易自由化の更なる拡大は、比較劣位となる部門の国内からの撤退を強く求めている。一次産業においてこれは顕著で、三重県の一次産業も例外ではない。地域社会・経済の持続可能性を担保するため、国際的な価格競争に対抗しうる生産コスト低減が求められている。

1-3) 資源循環型社会の実現による資源消費・環境負荷の低減

大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とした経済システムは、廃棄物処理による環境負荷のみならず、生産段階で投入された資源の浪費という観点からも環境負荷を高めている。資源循環型社会の構築が求められている所以である。

2)目的

食品廃棄物を飼料として再生利用することは、上記で示した問題のいうちのいくつかを克服する方途として期待が高い。具体的には、食品製造副産物や売れ残りを、家畜飼料として利用することにより、以下の効果が期待される。

  • 2-1.生産コストの削減(既存飼料よりも安価)
    =地域社会・経済の維持
  • 2-2.廃棄物処理にともなう環境負荷の低減(循環型社会の構築)
    =資源の有効活用
  • 2-3.輸入飼料用穀物を代替することによる食料自給率向上

これまで技術的な側面からこれら課題への対応が図られてきた。しかしながら同時に、地域循環のための需給接合・調整についての対応は十分とは言えない。行政のみならず、地域で実際にこれら課題に直面する各経済主体(第一次産業部門, 関連産業部門など)と大学が情報共有・蓄積と評価を図りながら、具体的な取り組みを進めていく必要がある。また、エコフィードの利活用促進を図るためには、消費者におけるエコフィードに対する認知と理解醸成が不可欠である。本事業では10,000名程度の来校者がある大学祭にてイベントを開催することで、県内産畜産物においてもエコフィードが利活用されていることについての認知・理解醸成を図る

2.活動地域と内容

 地域:三重県全域(研究・検討事業)
    三重大学 (広報活動)
 内容:三重県での取り組みに関する情報交換・学習会
    (参加者: 県庁および試験場担当者, 各経済主体, 三重大学)
    啓発活動  大学祭でのイベントによるエコフィード周知
    (対象者:市民, 学生および県内高校生

注:県内の高校生については、2018年度に開催したイベントに積極的に参加があった明野高校の学生による取組報告を計画している。これについては、高校での授業および行事予定等との調整後に参加方式を検討する。

3.期待される活動成果等

本事業で期待される活動成果は以下の3つである。

一つは、県内に賦存する低・未利用食費循環資源のエコフィードとしての利活用促進において課題となる、需給接合・調整システムの構築を、それぞれの経済主体が独自に行うのではなく、行政も一体となった地域的な取り組みとして構築することである。

二つは、消費者におけるエコフィードを利活用した酪農・畜産物に対する認知・理解醸成が図られ、その結果としてそれらの消費が拡大することである。

三つは、調査ならびにイベントの計画・運営について学生が主体となって参画することで、本学が推進するSDGsへの理解が図られることである。

→2020年度活動状況報告書