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02_三重県の素材生産に占める高付加価値材(S材)の流通調査と林業への還元

【活動の概要】

1.本活動の背景,必要性,目的

現在、国内の木材自給率は上昇傾向にあるが、A材需要は低迷しており、林業は依然として厳しい状況におかれている。このような中、今年度4月から国民全体で森の恵み(公益的機能)に対する対価を払うシステム、森林環境税が導入され、荒廃森林の整備や、持続的かつ安定的な木材生産を目指すこととなった。

三重県に目を移すと、バイオマス発電所5基に加え、昨年度から年間原木消費量10万㎥規模の合板工場も稼働し始めた。そのため、A材の低価格帯やB材の需要は安定しつつある。また、㎥単価25,000円を下回るA材は、全国同様、需要も価格も低迷しているが、㎥単価25,000円を上回るA材(S材)、特に元玉の3m材や4m材は、需要も価格も比較的安定している。

そこで本事業では、昨年度に引き続き、S材の流通調査を行うと共に、長伐期林業の可能性、さらには長伐期への投資回収の可能性を探りつつ、三重県の林業の将来を考えたい。今年度はS材から加工された製材品の買い方まで調査添付資料が済んでいるので、次年度以降は、買い方から先の流通について調査を続ける予定である。

2.活動地域と内容

三重県林業研究所と協力して、S材を多く取扱っている尾鷲・美杉・松坂地区の森林所有者および管理者と、尾鷲地区の製材所を対象に調査を行うと同時に、S材の売り先である北陸・山陰方面の買い方の動向を調査する。

【林    家】地ごしらえ(植栽準備)、植栽、下刈り、枝打ち、間伐などの作業状況と経費を調査する。また、最適な植栽密度や、現状流通量が少ない元玉の6m材以上の出材アップの可能性を探る。

【製  材  所】原木から製材への造材・加工費用や、その後の乾燥期間・費用、再製材・接合部加工費用、最終製品価格、原木からの製材歩留りなどを調査する。

【製材品買い方】北陸・山陰方面をはじめとするS材から加工された製材品の買い方を今年度具体的におさえたので、買い方以降の製材品の動向を調査する。

3.期待される活動成果等

全国的な上記課題に対し、優良木を有している三重県においてS材流通のモデルプラン、ざらには林家への還元モデルとして全国に提案でき、国内のトップランナーとして位置づけられるであろう。また、今年度開講された森林総合研究所との連携大学院や、みえ森林・林業アカデミーを通じ、3年以内には三重大学生物資源学部内に「地域森林科学寄附講座」設置を目指したい。

→2020年度活動状況報告書