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02_地域における認知症患者の早期診断と地域包括ケアへの紐付の試み

【活動の概要】

1.本活動の背景,必要性,目的

独居や老々世帯の増加に伴い、地域で孤立し地域包括ケアに結びついていない認知症患者が急増している。デイケアなどの形でケアに紐付されていない患者は、認知症に伴う周辺症状(暴力、暴言、徘徊など)発症への気づきが遅くなり、早期介入が困難なため抗精神病薬による治療が必要になりがちである。対策として認知症患者への早期発見・介入のための初期集中支援チームが全国的に設置されているが、対象者の把握が困難という問題点がある。患者の発見は地域包括支援センターを介した家族や地域からの相談に頼っており、認知症患者がケアに紐づけされないまま放置されていることが多い。

本事業では、レセプトデータから抗認知症薬の処方歴があるが介護保険が未申請の患者、即ち、認知症が疑われるが地域包括ケアに紐づけのない患者を同定しその背景を明らかにする。さらに、玉城町が運用しているオンデマンドバスを活用し、地域の元気ボランティアと協力することにより認知症の人の買い物や通院の足を確保し、患者のライフスペースを維持することを目的とする。

2.活動地域と内容

地域:玉城町

内容:

  •  A)玉城町、たまきあい(合同会社;玉城町外郭団体)、三重大学の三者研究契約のもとに調査を行う。すでに体制は出来上がっており、三重大学医学部附属病院での倫理委員会の承認も得ている (承認番号1766)。三重県度会郡玉城町が管理するレセプトデータを個人情報保護のため完全匿名化後に提供してもらい、抗認知症薬内服患者を抽出する。その中から、介護保険未申請で地域包括ケアに紐づけのない患者を三重大学が同定し、玉城町、たまきあいが背景調査、介入を行う。
  •  B)予備調査では抗認知症薬の服薬歴があって介護保険の申請歴がない患者13名が同定され、そのうちの半数が運転しないと生活に困難をきたす状況にあった。認知症で運転免許を返納した後の生活支援として、地域の元気高齢者のボランティアグループ(サポーターさくら)と協力し、認知症患者がオンデマンドバスを利用することを支援するシステムを構築する。

3.期待される活動成果等

認知症患者の早期発見が可能となり、介護保険への紐づけやサービスの導入が可能となる。その結果、デイケアの活用による行動・心理症状の早期発見や早期介入ができるようになり、精神科救急での対応が必要となる重度の周辺症状が減少する。

→2020年度活動状況報告書