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農商工連携による三重県南部中山間部地域の活性化モデルの提案―地域コミュニティーを連携するためのポータルサイトの構築―

 三重県南部は中山間農村地域ならびに沿岸漁村地域から成り、両地域とも産業の中心は小規模一次産業で、高齢化、人口流出・減少が顕著な地域です。そのため、後継者不足、獣害からくる生産意欲の低下、耕作放棄地の増加などの社会問題の解決、地域に対応した社会の構造、社会の保障の在り方を検討していくことが急務となっています。生産者の生産意欲を向上させるための対策として、生産者による加工食品の製造と直販施設を活用した新たな販売方式が導入され、ある程度の成果が得られていますが、特定の地域に限定しているのが現状です。そのため、共通の社会問題を抱えた地域が広域的・長期的に連携・協力するための仕組みが必要です。
 県南部地域の活性化を目的として、辻製油㈱、地域自治体(大台町役場、多気町役場)三重大学医学系研究科、地域イノベーション学研究科が中心となり、高知県あき農協の支援を受けながら、獣害に比較的強く、栽培が割合容易な『柚子』を新たな農業生産品とし、『柚子』をキーアイテムとした地域活性化に取組んでいます。この取組みの目指すところは、過疎化が進む県南部地域をその地域にあった産品の産地にするため、生産者、地域事業者、近隣地域、関連企業等の関係者が共に夢を分かち合いながら連携・協力するための仕組み作りです。
 本事業では『柚子』をキーアイテムとして、課題を持つ上流側の生産者、地域事業者、自治体と『柚子』活用した製品開発・販売戦略に強みを持つ下流側の地域有力企業とが、同じ意識レベルで地域課題の解決方法を考え、語り合うための『場』としてのポータルサイトの構築を提案します。本事業で構築するポータルサイトは、多気町、大台町、南伊勢町で柚子栽培に取組む農家、栽培活動を支援する地域事業者・地域自治体、製品開発を希望する地域有力企業、全体を統括する三重大学が同じ意識レベルで事業に参画し、柚子という具体的産品を介して、その地域を活性化するための原資をどのように得るかを考える『場』となります。この『場』を介した産学官民の連携体制の構築により、それぞれの有する人材、情報、設備・施設を効果的に活用した「地域特産品」をキーアイテムとする新しい形態の産業の創出とそれによる地域活性化が期待できます。さらに本事業に本学医学系研究科、地域イノベーション学研究科の学生を参加させることで、同研究科が推進している「地域の抱える課題の理解とその解決方法の考察」をテーマとしたOn the Project Training (OPT)形式による実践教育に活用できます。