clear
三重県大紀町野原における安心・安全な里づくりのための支援活動

 地域の「安心と安全」は、地域の「持続的な発展」と「防災力の向上」が不可欠であります。当研究室では、こうした考えの基に、防災ハザードマップ作り等の地域に根ざした研究活動を実施してきました。特に、三重県大紀町での錦地区や野原地区での災害に強いまちづくりに関連した長年の研究活動等が契機となり、昨年11月に、本学生物資源学研究科と大紀町は、相互友好協力協定を締結しました。今後は、防災面だけではなく、農業・林業・水産・畜産等の地元産業がかかえる問題点の調査研究をはじめ、地域の発展や人材の育成を目指した地元と一体となった活動が期待されています。三重県大紀町野原区は、「野原村元気づくり協議会」を結成し、「地元学」のテーマのもとに、既に地域の「持続的な発展」について積極的に活動しています。「あれがない」「これがない」という「無いものねだり」ではなく、「あれもある」「これもある」という「あるもの探し」を、各種のワークショップを通して「地元学」を実践してこられました。
 一方、「防災力の向上」については、一昨年来、大紀町防災安全課の支援のもとに、当研究室と同地区が防災訓練を共同で実施し、さまざまな有益な知見を得るなど大きな成果を上げてきました。また、この活動ではGIS(地理情報システム)と時空間情報処理や二次元バーコードなどを利用した新聞発の技術で、災害時の住民の迅速な安否確認の可能性を探る試みもなされました。本提案では、地域の「持続的な発展」と「防災力の向上」を柱に活動を実施します。例えば、元気なまちづくりのためのフィールドワークや、外部への広報を兼ねた情報作成や提供を行います。こうした情報やデータは、防災力の向上の側面から見ると、まちの情報を常に最新に保ち続けることができ、もしものときの災害時に、正確な被害把握や分析に利用できるはずで、きわめて有益なデータとなりうるものであります。平常時から万が一の災害時を考慮した情報収集やその整理、自分たちの住むまちをよく知るという活動は貴重だといえます。
 本提案活動の役割分担については、「野原村元気づくり協議会」には調査研究フィールドを提供していただくとともに、大学側支援のもとに住民主導の情報収集などの活動をしていただきます。大紀町役場防災安全課には本活動のさまざまな側面で助言をいただきます。当研究室は地区の調査、住民の調査活動の支援、収集した情報データの整理・整備や、システム作成を行います。住民の方々とのタウンウォッチングやワークショップ等のこうした協働活動により、防災ハザードマップをはじめ、その地図の中に「あるもの探し」で得られたまちの資産や資源等のまちを再発見し、広報するためのWebGISを作り上げます。これにより、この地区の自然・産業・文化・歴史等の今ある資源や資産を活かした「里づくり」に少なからず貢献できると考えます。

平成21年度活動報告書