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患者の皮膚を用いた日本紅斑熱の迅速診断法の確立

 我が国におけるリケッチア症の代表はマダニによって媒介されるツツガムシ病でありましたが、1984年に同じくマダニによって媒介される日本紅斑熱の存在が明らかにされました。臨床症状は高熱、発疹、刺し口が特長であり、ツツガムシ病のそれらと類似しますが、治療が遅れると肝機能障害、免疫不全症候群、DCIで死亡します。本症は1984年以降、西日本各地で報告されはじめましたが、三重県においては1988年に伊勢市から1例報告されたのみでありました。しかし2006年頃より伊勢志摩地方から次々と患者が発生しはじめました。本疾患を予防することはほぼ不可能であるので、患者が発生した場合にすみやかに診断し、治療することが大切です。しかし、本疾患の検査は民間の検査機関では行われていないため、当初は県外の研究期間に検体を送っていたために時間がかかり、診断が遅れる事態となりました。さらに、この疾患がこの地方の医師の間にも十分に認識されていなかったために重篤例、死亡例も現れました。そこで2007年からは保健所を窓口とし、検査検体を私の研究室(主に血液を用いたPCR法)と三重県の保健環境部(主に血清中の抗体価測定)の2箇所に集める組織を作り、両者で検査が出来る体制を整えて検査したところ、2007年は22例、2008年は35例の確定診断をすることができましたが、その結果、伊勢志摩地方は日本一の日本紅斑熱の流行地になっていることが判明しました。しかし、臨床症状は本症と考えられますが、検査では陰性になるものがあり、今後、検体及び新たな検査方法を検討する必要が出てきました。上記の背景より、本研究では患者の紅班部の皮膚及び刺し口の皮膚を用いた日本紅斑熱の急性期における迅速診断法を確立すると共に、ツツガムシ病との鑑別診断方法を確立し、この地方の患者及び臨床医の要望に応えることを目的とします。

平成21年度活動報告書