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治験啓発活動~治験の必要性と新薬が生まれるまでのプロセスを学ぶ~

 治験は、新しい医薬品および医療機器の承認に必須のプロセスであり、また臨床研究は医薬品・医療機器の科学的根拠(EBM:Evidence-based Medicine)づくり、さらに疾患治療ガイドライン作成に極めて重要な研究活動であります。治験はGCP(Good Clinical Practice 厚労省令)や薬事法で規制され、また臨床研究は各種の倫理指針により、国民が安心して治験、臨床研究に参加できる体制や治験支援人材である臨床研究コーディネーター(CRC)の活用が義務付けされています。我が国の新薬導入は、欧米各国に比し約1.5年遅れていること(Drug-Leg,Device-Lag)が問題になっており、このような事態を打開すべく厚労省は文科省と共同で2003年度から「治験活性化3ヵ年計画」、2007年度からは新たに「治験活性化5ヵ年計画」を開始しています。三重県では、2003年より地域圏での治験・臨床研究を促進するため、三重県(行政)、三重大学、三重県医師会・県内医療機関が連携・協力して治験を行う"みえ治験医療ネットワーク”(運営事務局:NPO法人みえ治験医療ネット)を構築し、我が国でも有数の治験実績を有する治験ネットワークに成長しました。このような実績が評価され、三重大学病院は2007年度には全国30の治験拠点病院の1つに採択されており、治験・臨床研究のさらなる促進を行うため、臨床研究支援人材の育成、基盤整備を行っています。治験活性化5ヵ年計画の目的は、"世界に遅れることなく、日本の患者様に優れた医薬品を提供する”であり、基本骨子は①治験啓発活動、②基盤整備、③人材育成、④ITCを用いた効率化であります。治験・臨床研究の促進には、被験者である患者様の積極的な自由意志による参加が必須であり、そのためには国民の皆様への治験の啓発活動が極めて重要であります。NPO法人みえ治験医療ネットは国民の皆様への治験啓発活動の一環として2003年より治験啓発パンフレットの作成、治験啓発ポスターを作成し県内各医療機関に配布し、また新聞地方版に治験啓発の生の声を聞くことができないし、それらの意見を反映することも不可能でありました。より効果的で、より積極的な治験啓発活動を目的に、私たちCRCは、feasibility studyとして2009年1月26日より1月30日の5日間附属病院玄関フロア(待合室)で治験啓発キャンペーン活動を行いました。この活動では、①治験啓発パンフレットの配布、②治験に関するアンケート調査、③治験啓発ビデオの放映、④治験啓発パネルを用いてCRCが外来通院患者やその家族にman-to-manで治験の説明を行う、を実施しました。治験の普及啓発活動として非常に良い効果(イメージアップ)が得られました。
 本地域貢献活動は、三重大学病院臨床研究開発センターCRCがみえ治験医療ネットワーク参加MMC基幹病院に出向き、その病院の治験支援担当者と連携・協力してMMC期間病院内(例えば外来待合室で)上記①~④の治験啓発活動を行い、各地域圏の住民の皆様に治験・臨床研究についての正しい理解と治験参加の協力が得られるようにすることを目的とします。また、三重大学病院CRCとネットワーク連携機関の治験支援スタッフと共同で活動を行うことにより、相互理解を深めることができることから治験・臨床研究の共同研究の促進が図られ、最終的には三重県民の健康・医療の増進に寄与することが期待されます。

平成21年度活動報告書