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21世紀の人材育成:「生きる力」とキャリア教育 ~ESDのためのユネスコスクールの取り組み~

事業の概要
(1)事業の背景と必要性
1)「生きる力」をはぐくむ必要性とその背景
文部科学省は、若年者に関わるさまざまな課題解決のために、教育基本法や答申等で「生きる力」をはぐくみ、家庭・学校・地域の連携で育成する必要性を強調している。たとえば、①1997年の中教審答申(第一次答申)「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について-子どもに[生きる力]と[ゆとり]を」、②1998年改訂の小・中学校学習指導要領、③1998年の中教審答申「幼児期からの心の教育の在り方について」、④1998年の文部科学省「新しい時代を拓く心を育てるために-次世代を育てる心を失う危機-」、⑤2001年の生涯学習審議会答申「青少年の[生きる力]をはぐくむ地域社会の環境の充実方策について」、⑥PISA調査の結果報告書、⑦2006年教育基本法改正、⑧2008年~2010年の全国学力・学習状況調査報告書、⑨2008年学習指導要領改訂等である。

2)キャリア教育を推進する必要性とその背景
近年の若年者のキャリア支援に関して、①精神的・社会的自立の遅れ、②コミュニケーション能力の不足、③勤労観・職業観の未熟さ、④社会人基礎能力の低下、⑤ニート、フリーター、早期離職者が合わせて300万人に上ること等が社会問題となっており、国力にも波及する緊急事態となっている。こうした問題を解決するために、2011年度から「すべての大学でキャリア教育を義務化すること」となり、大学設置基準においてもキャリア教育をカリキュラムの中に盛り込む必要が規定された。
現在、三重大学では4つの力「生きる力」「考える力」「感じる力」「コミュニケーション力」を重点目標として全学で取り組んでいるが、これらの力を獲得するために、学生一人一人が将来の生き方や職業を考えるようなキャリア教育を重視し、初年次から実施していく必要がある。そして、社会的・経済的自立を促してアイデンティティの確立を支援するためには、小学校から中・高校、大学へと系統的に繋げて推進することが重要である。

3)ESDのためのユネスコスクールの必要性と背景
ESDは、2002年にヨハネスブルグで開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議」と同年の第52回国連総会において、日本が提案した「持続可能な開発のための教育(ESD、略して持続発展教育)の10年」が採択され、ユネスコ総会は2007年に「持続可能な開発のための教育(ESD)の更なる推進のために、ユネスコ共同学校(現ユネスコスクール)を充分に活用すべき」と決議した。提唱国の我が国でも普及・啓発の推進を実施しており、2010年度末にはユネスコスクール認定校は278校となった。こうした中で、三重大学は2009年8月にユネスコスクールとして認定を受け、2009年2月1日にユネスコスクール委員会が発足した。今後の取組みとして近隣の小中高校と連携して活動することが大きな命題であるので、三重大学地域貢献事業として位置づけることは大いに意義がある。

(2)本事業の目的
①研究者(申請者)が蓄積してきたキャリア教育等に関わる調査研究シーズを活用して、教員対象の研修会、研究大会、見学会等を開催して指導者養成のための機会とする。
②近隣の市教育委員会・小中学校との連携で、キャリア教育プログラムを日々の学校現場で実践して、「感じる力・考える力・コミュニケーション力・生きる力」を備えた児童・生徒が、やがて地域の発展・活性化の担い手になることを目指す。
③国際社会及び我が国が目指す「生きる力を備えた人材の育成」「持続可能な開発のための教育(EDS)」を推し進めることの命題とし、三重大学地域貢献事業として実施する。

       → 平成23年度活動状況報告書