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地域の親子を対象とした科学講座《親子(孫)でたのしむ仮説実験講座》の企画と実施

【活動の概要】
この活動は,親子を対象として,仮説実験授業をまるごとたのしむ科学講座として,2006年からスタートしました。
「仮説実験授業」とは,仮説を立て,実験・検証するという科学の思考パターンに沿って,科学のもっとも基本的な概念と原則的な法則をたのしく学ぶ授業です。1960年代に国立教育研究所の板倉聖宣氏によって開発されて以来,これまでに多くの小中学校で実践され,児童生徒に評価されてきた実績があります。私自身もこの授業を用いて大学の講義を行い,授業改善のためのアンケートにおいて高い評価をいただいています。
仮説実験授業はこれまで主に学校の授業内で行われてきましたが,NPO法人楽知ん研究所では,それをさらに拡張し,親子を対象とした科学講座を企画し,全国各地(昨年は16ヶ所)で同時的に開催してきました。私は当初からこの企画に加わり,開発に協力してきました。
この企画の大きな特色は,多くの一般向け講座が子ども向け,大人向けに対象を限定しているのに対し,小学校低学年から中学,高校生,大人まで一緒にたのしめる科学企画を作り出していることです。『最初は子どもについてきただけの親や祖父母が,子どもよりも科学に夢中になってしまう。もちろん,子どももめいっぱいたのしんでいる様子を大人に見せている』この企画はそんな姿を目標にしています。幅広い年代に飽きさせず,楽しんでいただくには,さまざまな工夫や配慮が必要です。しかし,私たちはそれが必要不可欠だと考えています。その理由は子どもの理科離れが言われて久しいのですが,子どもの理科離れは大人の理科離れとも深く関係していると考えているからです。今後,理科離れや少子化に対応した受験者数の維持には,地域の家族ぐるみの長期的な科学の啓蒙が必要であり,それには講師の個人的な専門にこだわらないテーマ設定やプラン作成が必要だと考えます。
またこの企画のもうひとつの特色は,希望する学生にアシスタントをお願いしていることです。彼らには事前に参加者と同じように講座を受けて,流れをつかんでもらいます。当日は受付や実験助手,ものづくりを手伝ってもらっています。子どもたちが積極的に講座に参加する姿勢は,彼ら自身の学習に対する姿勢を振り返らせ,強く印象づけられるようです。また参加者の感想にはアシスタントの学生に対する感謝が必ず出てきます。このように「自分が楽しんでしたことで他人に喜んでいただける。そして,その他人の笑顔を見て,自分も満足する」という体験をすることは,生きる力を得るという意味でも重要だと考えます。
私は2006年から昨年まで7回,夏休み期間中に2日間通して楽知ん研究所が開発した企画を用いて講座を開催しています。2007年以降は募集後1週間ほどで定員に達し,毎年60?80名の方に参加いただいています。貴支援助成をいただいた昨年はさらに参加希望者が増加し,92名の参加者がありました。また,全体の参加者の3割以上がリピーターであり,中には6回連続して参加されている親子もいらっしゃいます。昨年も継続開催の希望が多く出ており,今年は8月に開催を予定しています。学生のアシスタントは毎年3名から8名の申し出があり,こちらも継続して手伝いを希望される方が多くいます。
毎年,リピーター参加者が多いため,企画を新しく考える必要があります。企画開発段階では試行錯誤も多く,これまでに自己資金でまかなってきましたが,支援助成をいただければ,さらに充実した開発実験ができることが期待されます。

→ 平成25年度活動状況報告書