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学校現場での多文化共生活動 -双方向の「認め合い」を求めて-

事業の概要

日本において国際化が進む中、さまざまな言語や文化背景を持つ人々と共に過ごす空間が増えつつあるが、多文化共生が実践されているとは言い難い。本来の多文化共生とは、お互いの言語や文化を認めた上での歩み寄りや譲り合う気持ちに支えられるべきものだが、実際には外国人側が日本の言語や文化に「合わせている」のが現状であり、我々日本人も外国人側にそれを求めてしまう傾向がある。しかし、幼少の頃から自然に外国の言語や文化に触れ、共に過ごす機会を持てれば、意識をせずに「多文化共生」が実践できる姿勢へとつながるはずである。
現在、学校現場にも様々な言語や文化背景を持つ子どもたちが在籍し、日本の子どもたちと共に学ぶことが特別なことではなくなりつつある。しかし、学校現場においても多文化共生意識を持つことは難しく、子どもたちの間にも言語や文化の違いからくる誤解が原因で様々な問題が起こっているのが現状である。
本活動では、教育学部で受け入れている天津師範大学からの中国人留学生が小学生を対象に中国語や中国文化の紹介を行う。ニューカマーと呼ばれる人々の中で中国人が占める割合は低く、三重県内の小中学校においても日系ブラジル人やフィリピン人の子どもたちが多くを占める。しかし、中国という子どもたちにとってそれほど親しみのない存在の国や文化に触れることで、「○○くんの国」「△△さんのことば」などといった先入観を持たずに、純粋に中国という異国の言語や文化を受け入れることが可能になると考える。そしてこのような活動を通した結呆、どの国の言語や文化も分け隔でなく、そのまま受け入れ、認めるという多文化共生の第一歩へとつながっていくはずである。
本活動の実施場所は一身田小学校の「世界を知ろう」クラブである。このクラブは小学4~6 年生を対象とした月l 回のクラブ活動で、申請者自身も平成20 年のクラブ立ち上げから関わっている。今年度も年間を通しての活動内容について企画の段階から参加している。実際の教室活動は小学校教員(ブラジル人講師)が中心となって行う。日本人学生によるクラブ支援活動はクラブ立ち上げの年度から継続しているが、平成23年度は留学生による活動参加に焦点を当てていきたい。本年度も教員を目指す日本人学生もクラブ活動に参加する予定であり、留学生による中国紹介や子どもたちの反応の観察を通して、学校現場における多文化共生活動を考える貴重な機会となる。多文化共生を目指す本活動は、続けることにまず大きな意義があり、今後も継続可能な協力体制を小学校側と結んでいく予定である。
留学生による中国の紹介は、子どもたちの多文化共生への意識につながるものであると同時に、留学生自身が「自分や自国の存在を日本語で伝える」という日本語学習の根本的な動機を支える活動としての役割も担っている。

    → 平成23年度活動状況報告書