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31_東紀州におけるICTを援用した科学的柑橘栽培支援(継続3年目)

【活動の概要】

1.本活動の背景,必要性,目的

【背景】平成20年度技術革新波及対策事業高品質かんきつ安定生産技術導入事業、平成21~22年度研究成果実用化促進事業(農林水産省補助事業)事業(農林水産省補助事業)で、熊野市金山パイロット事業(農林水産省補助事業)「高品質ミカン生産のためのフィールドサーバ利用技術の確立」を三重県紀州地域農業改良普及センター、三重県農業研究所紀南果樹研究室、JA三重南紀と共同で熊野市金山パイロットを実証区として実施すると共に、これをきっかけに現在も東紀州地域の高品質ミカン生産を目的として普及活動を行っている。平成30年度は5月2日と5月24日に三重県熊野農林事務所・紀州地域農業改良普及センターに事業計画を立案し、ミカンの新葉の展葉が始まり旧葉とほぼ同じ大きさまで生長する6月の終わりから3月まで毎月1回、樹勢の異なる3種類の木のそれぞれを3クラスターに分けた9つの区から採取した新葉・旧葉と果実をクール宅急便で研究室に送っていただき、葉と果実のマルチ分光診断(蛍光X線分析、色素蛍光計測、色彩画像計測)を行った。7月25日と26日、10月12日に熊野農林事務所と金山パイロットで実地検証を行った。3月下旬には、三重県熊野農林事務所・紀州地域農業改良普及センターと共同で、三重県農業研究所・紀南果樹研究室・研修室に柑橘農家を招いて、昨年度の第2回に引き続き「第3回科学的柑橘栽培を支援する光センシング・AI・ICT研究フォーラム」を開催し、平成30年度の6月から2月までのミカン樹体のマルチ分光診断(蛍光X線分光計測装置、色素蛍光計測装置、中赤外分光計測装置、色彩画像計測装置)についての結果報告と平成31年度の栽培支援計画の立案と、これらを踏まえた具体的な普及活動について打合せを行う予定である。

【必要性】ICTを用いた科学的栽培の普及のためには、共同で開発した低価格土壌水分センサのセンサーネットワーク化、およびミカンのマルチ分光樹体診断技術の確立とその方法のAIを援用した栽培体系への組み込みといった「ICT、光センシング、およびAIを用いた科学的栽培の普及」の継続的な普及活動が不可欠である。特に、熊野市の若いミカン農家の期待に応えるためには、金山パイロットでのセンサーネットワーク設置作業、光センシングとAIを用いた高品質柑橘栽培の基礎研修を伴う普及活動など、現場に出向いての現地活動が不可欠である。

【目的】本年度は、生育環境(一次栽培指標)を基にした柑橘のフェノロジー指標(二次栽培指標)構築、新葉と旧葉のバランスと樹体の生理状態の解析、および樹体生理と果実の品質(糖組成と酸組成のバランス)データから導出される三次の栽培指標構築と必要となる現場での実正実験を行うことを目的とする。また、金山パイロットをワークショップの現場とする東紀州地域の若手ミカン農家に対して、IoTとAIの支援による高品質栽培技術の普及活動を行う予定である。

2.活動地域と内容

【活動する地域】三重県熊野農林事務所・紀州地域農業改良普及センターが管轄する柑橘農園、とくに金山パイロットを中心とする東紀州地域の柑橘農家、農業法人を支援。

【活動内容】三重県熊野農林事務所・紀州地域農業改良普及センターが管轄する柑橘農園に設置された鳥羽商船が開発した気象ステーションのデータクラウド化とともに、気象データに基づく柑橘栽培に資するフェノロジー指標について検討する。また、平成30年度に金山パイロットで実施したミカンのマルチ分光樹体・果実診断(蛍光X線分析、色素蛍光計測、色彩画像計測)の結果を踏まえて、新葉・旧葉・果実の診断を基本とするフェノロジー指標(二次栽培指標)に樹体・果実診断を付与した三次栽培指標の可能性を検討する。この新しい栽培手法の検討会を「第3回科学的柑橘栽培を支援する光センシング・AI・ICT研究フォーラム」として東紀州の若手ミカン農家を対象に開催し、新しい手法の可能性とその普及方法について意見交換を行う。あわせて、現地で農業ICTの普及活動を行う。

3.期待される活動成果等

日本で最初に導入された農業用センサーネットワークを、本活動により、鳥羽商船が開発した気象ステーションと熊野農林事務所と共同開発した低価格土壌水分センサーを核とする新たなセンサーネットワークに置き換えるとともに、新しく柑橘のマルチ分光樹体・果実診断を行い、人工知能(AI)の手法を取り入れることで、科学的な栽培指標の実証が可能となる。また、本活動により、三重大学の本研究室がリードしている光センシング技術が柑橘栽培に用いられることに成り、国ベースで農業ICTとAIの利活用の画期的な事例を提供することになる。

→2019年度活動状況報告書