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31_外国人児童生徒の学びの継続を目指す支援活動-キャリア形成につながる大学見学ツアーの実施-(継続3年目)

【活動の概要】

1.本活動の背景,必要性,目的

三重県における日本語指導が必要な児童生徒数は小学校1,487名、中学校614名であり、児童生徒の国籍に関しても、外国籍児童生徒だけではなく、日本国籍の児童生徒の割合も増える傾向にある(文部科学省平成28年度調査より)。2019年度4月から施行される改正出入国管理法に伴い、これらの割合増加は確実視されている。

日本語指導が必要な小中学生の在籍率では、三重県が全国1位であり、津市は県内1位であるように、全国的に非常に高い数値となっている。このような現状を受け、県内・各市町においては学校現場、教育委員会、ボランティア団体等を中心に様々な教育支援や取り組みが先駆的に実施されおり、小中学校での教育の充実は目覚ましく、平成29年度津市における高校進学率は93.4%と高い数値となった。しかし、実際には進学高校の選択肢が限られ、進学後の中退者も少なくなく(平成29年度中退率は9.61%で全体の約7倍)、義務教育終了後の子どもたちの学びの継続性が大きな課題となっている。その背景には、日本語能力、家庭環境、経済面等、様々な要因があると考えられるが、子どもたちが高校卒業後の将来像を描けないため、学びの意欲が維持できないことも大きな要因と考えられる。

そこで、2017年度・2018年度に、上記の活動テーマに基づき、外国人集住都市会議会員都市でもある津市内在住の外国人中学生を対象に「三重大学ツアー」を実施した。2017年度は13名、2018年度は20名の中学生が参加した(津市教育委員会・中学生在籍学校の関連教員も参加)。2018年度は教育学部学生7名も支援として参加し、生徒との交流を通し、学校現場における多文化共生の現状や課題について学ぶ機会としても非常に効果的であった。人文学部と生物資源学部のオープンキャンパスを含めたツアー内容とすることで、漠然ではあるが、中学生が大学での学びをイメージするきっかけとなった。ツアー実施後には、中学生から「大学で勉強したい」「外国のことを知りたい」「魚の勉強してみたい」という発言もあり、高校進学が目標ではなく、大学進学や希望の職業までも考える様子も見受けられ、本ツアーが目指す「学びの継続」につながる活動となった。

2019年度も津市教育委員会と共同し、学部間での連携も行いながら、中学生のキャリア形成の礎となる機会としての大学ツアーを提供していきたい。

2.活動地域と内容

津市内外国人生徒中学生(3年生を中心に)20名程度を対象に、本学のオープンキャンパスを含めたツアーを実施する。2019年度も人文学部と生物資源学部のオープンキャンパスを予定している。その他に、教育学部・人文学部の教室見学、図書館やメイプルホールの見学、学食の利用等も予定している。昨年に引き続き、人文学部の教員とは協力を得られる体制を整えており、また、ツアー内容が確定後には、人文学部・生物資源学部の広報委員会に事前に中学生参加の了解を得る。活動の際には、複数の教育学部学生が中学生をグループ別に案内し、安全の確保につとめる。

3.期待される活動成果等

1.でも触れたが、2017年度・2018年度のツアー後のコメントでは、これまではおそらく想像すらできなかった大学への進学について述べるなど、高校進学、高校卒業後の選択肢として、大学進学も具体的なイメージとして持つことできており、中学校、高校での学びの意欲の維持につながることが期待できる。また、ツアーには支援者として本学学生も参加しているが、外国人生徒との交流を通し、多文化共生化・グローバル化が進む学校現場や地域において必要とされる国際的視野を広げ、異文化理解能力を培うことにもつながっていた(『三重高等教育研究』第25号「学生が「外国人生徒大学見学ツアー」に支援参加することの教育的意義」として掲載予定)。以上の点より、本活動の成果として、外国人生徒だけでなく、本学学生のキャリア形成の一助となることが期待できる。

→2019年度活動状況報告書