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31_日常生活における身近なものと学校授業での知識をリンクさせる事の出来る科学実験(継続2年目)

【活動の概要】

1.本活動の背景,必要性,目的

現在、文部科学省の学習指導要領改訂に伴い、小学校の授業時間は平成20年度と比較すると小学校6年間で278時間増加しており、授業時間の増加率は高学年時に対して低学年時がより大きい。また指導要領改訂のポイントに『知識及び技能の習得と思考力、判断力、表現力等の育成のバランスを重視する現行学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で、知識の理解の質をさらに高め、確かな学力を育成。』とある。しかしながら、授業時間増加に伴う習得すべき膨大な知識は、ただ詰め込むのではなく、実生活・実社会と関連付けることにより、初めて質の高い知識となる。

したがって、子供たちが小学校の授業で学ぶ内容が日常生活にどのように関わり、使われているのかを実際に考え認識させることで、子供たちの科学に対する興味や思考力向上につながる。

さらに、本取り組みに参加する自然科学系技術部の特色として、技術部を構成する技術職員が多職種にわたっている点があげられ、様々な技術を有した技術職員が企画構成することで多彩な切り口から専門性の高い技術を持ち寄ることができるメリットがある。

2.活動地域と内容

前回同様、三重大学教育学部と親交が深い北立誠小学校を対象とし、昨年の実施経験を生かしてできるだけ年齢・学年に対応した実験内容になるよう工夫する。

実施スケジュールや目的等については、小学校教員および本学教育学部と綿密に打合せを行ったうえで相互理解を図り、協力関係を築く。

低学年は、生活下で自然に親しみ、遊びを通して様々な物事や現象を認識し学ぶことで理科・社会学習につながり、のちの学習基盤になっていく大切な学年でもある。一方、中・高学年においてはこれまでに学習した見方・考え方を働かせ、見通しを持って観察・実験を行うことで問題を科学的に解決する力を養い、そして日常生活の中で生じる自然現象や物事を様々な側面から考え、解決方法を導き出す力をつけることが求められる。

実験内容案として、低学年用と中・高学年用の二つの企画を用意する。

  •  Ⅰ.スライム時計を作ろう
    小学校低学年は『スライム時計作り』を通し、実生活の中で起きている現象(物質の状態や変化)に興味を持ってもらうことで、不思議・面白いといった観点から探究心を養う。例えば、スライム独特のひんやりする感触は何によるものなのか、また自分たちで実際に材料を計量することで、物の大きさ・重さを計るにはどうすれば良いのか、同様に時間を計る方法一つにしても多様な方法があることなど、疑問に思ったことを子供達に大人気のスライムから実生活の中に結びつけてもらう。
  •  Ⅱ.不思議!磁石の世界・・スライムが動く?
    中・高学年はすでに授業で学んだ磁石の性質について、スライムを使った実験で応用学習をしてもらう。磁石にくっつく物質(磁性体)を細かい粉にして、液体にまんべんなくまぜることで自在に変形する不思議な磁性体(磁性流体)ができる。今回は、鉄粉とスライムを使って磁石に引き寄せられる磁性スライムをつくり、磁石の性質・特性について学習する。
    磁極間にはたらいている力を磁力といい、磁石の磁力が及んでいる空間を磁界(磁場)と呼ぶが、磁力線はこの磁界を表現するもので、紙の上に広げた鉄粉に裏側から磁石を近づけることで模様ができて、平面的に磁力線をイメージすることができる。今回はこの磁力線をスライムの入ったペットボトルを使って立体的に見てみることで、よりイメージしやすくした。さらに、身の回りにあるものにはこのような磁石の力を利用しているものが、たくさんあるということに気づいてもらう。

3.期待される活動成果等

科学離れが叫ばれている昨今、学校の授業で得た知識を子供たち自らが日常の身近なものとリンクさせながら実験を進める「生きた科学実験」の場を提供することが理科・科学離れの対策になると思われる。そして、科学に対する興味や思考力を向上させることで、実生活での事象について知識の応用力を養うことができ、問題を科学的に解決することができる。さらには、未来の研究者としての第一歩を踏み出せるきっかけを提供することも期待できる。

これらの活動を三重大学が積極的に行い、子供たちに三重大学の面白さを身近に感じてもらうことにより、これから勉学をさらに頑張り、「三重大学は面白いところだ、将来三重大学に入って学びたい」と言うような積極的な欲求を促し、三重からグローバルに活動できる人材、地域社会の発展に寄与する人材をより多く育成し、輩出するきっかけになることを期待したい。

→2019年度活動状況報告書