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31_エコフィードの利活用による地域酪農・畜産の振興(継続2年目)

【活動の概要】

1.本活動の背景,必要性,目的

1)背景と必要性
1-1)飢餓と飽食

日本では年間約621万トンの食品ロスが発生していると推定される。これは国際機関による途上国への食糧援助量のおよそ2倍に相当する。また世界で生産される食料の1/3が廃棄されているとの報告もある(FAO,2011)。この一方で世界の飢餓人口は8億5千万人に達していることから、"飢餓と飽食"の克服が世界的な課題となっている。こうした状況を踏まえ、2015年の国連の持続可能な開発サミットでは、2030年までにフードロス50%削減が決議された。

1-2)貿易自由化の拡大と地域一次産業の脆弱化

TPPや日欧EPAに代表される近年におけるFTA/EPAの締結拡大、すなわち貿易自由化の更なる拡大は、比較劣位となる部門の国内からの撤退を強く求めている。一次産業においてこれは顕著で、三重県の一次産業も例外ではない。地域社会・経済の持続可能性を担保するため、国際的な価格競争に対抗しうる生産コスト低減が求められている。

1-3)資源循環型社会の実現による資源消費・環境負荷の低減

大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とした経済システムは、廃棄物処理による環境負荷のみならず、生産段階で投入された資源の浪費という観点からも環境負荷を高めている。資源循環型社会の構築が求められている所以である。

2)目的

食品廃棄物を飼料(エコフィード)として再生利用することは、上記で示した問題のいうちのいくつかを克服する方途として期待が高い。具体的には、食品製造副産物や売れ残りを、家畜飼料として利用することにより、以下の効果が期待される。

2-1)酪農・畜産物生産コストの削減(既存飼料よりも安価)

 =地域社会・経済の維持

2-2)廃棄物処理にともなう環境負荷の低減(循環型社会の構築)

 =資源の有効活用

2-3)輸入飼料用穀物を代替することによる食料自給率向上

これら課題については、これまで技術的な側面から対応が図られてきた。しかしながら、社会・経済的な合理性については十分に検討されているとはいえない。そこで、行政のみならず、地域で実際にこれら課題に直面する各経済主体(第一次産業部門, 関連産業部門など)と大学が情報共有・蓄積と評価を図りながら、具体的な取り組みを進めていく必要がある。また、消費者におけるこれら取り組みについての理解情勢を図り、消費拡大を通じて経済的基盤が構築されていく必要もあろう。

2.活動地域と内容

地域:三重県全域
内容:三重県内での取り組みに関する情報交換・学習会
   (参加者:県庁および試験場担当者, 各経済主体, 三重大学)
   国内先進事例研究会(訪問調査)
   (参加者:県庁担当者, 各経済主体, 三重大学)
   啓発活動 - 大学祭でのイベント(出店およびシンポジウム)
   (参加者:県内農業生産者, 県庁担当者, 三重大学)

3.期待される活動成果等

本活動により以下の成果が期待される。

  •  1)三重県内の酪農・畜産経営におけるエコフィード(食品循環資源由来飼料)への理解醸成と利用拡大による酪農・畜産の振興。
  •  2)三重県内における食品廃棄物の再生利用事業の拡大と環境負荷の低減。
  •  3)消費者におけるエコフィード利用酪農・畜産物への理解醸成。
特記事項

昨年度事業を基本的に踏襲するが、2019年度は啓発活動のためのシンポジウムを大学祭にて実施。これと同時に特設ブースでの関連商品-畜産物等の試食・販売を大学生との協働にて実施(申請者の演習履修学生など)。これにより広範な消費者への啓蒙活動が期待されるほか、農業生産者、関連食品産業、県と学生との協働機会が提供される。学生にとってはより実践的なインターンシップの機会となると期待される。

→2019年度活動状況報告書