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31_「地域の海をよく知る地域の人が地域の子どもたちに海を教える」~三重県南部における地域産業振興と結びつけた自然資源を活用する地域人材育成事業

【活動の概要】

1.本活動の背景,必要性,目的

【背景,必要性,目的】

「氷河と砂漠以外のすべての自然環境がある(植野めぐみ談)」と言われるほど、三重県南部には豊かな自然環境がある。この自然環境を活用した、アウトドア・観光事業、エコツーリズムなどの自然啓発活動を三重県、国内、インバウンドとして海外からのアウトドアアクティビティーに匹敵するポテンシャルがありながら、コース認定、整備、ガイド配置、関連する宿泊施設やモビリティなど、地域が連携したしくみが未発達である(たとえば、「観光立国の正体」 藻谷浩介・山田桂一郎)。近年、三重県は県内で「三重まるごと自然体験ネットワーク」を形成し、自然体験ガイド、観光公社、市町などの連携ネットワークを構成した。また、三重県とモンベル社と包括連携を結び、SEA TO SUMMIT、 JAPAN ECO TRAKなど連携事業を進めている。自然ガイドを生業とする若手事業者「南三重モビリティの会」「熊野ガイド協会」などの自主組織を作り、三重県南部で連携する機運が生まれているが、人材不足の状況がある。漁業・林業といった三重県南部の地域産業の振興と結びつけた、自然資源を活用する地域人材育成が求められている。

三重大学生物資源学部共生環境学科では、「自然環境リテラシー学」という実践、実感型のカリキュラムを平成30年度より開始した。これは、三重の豊かな自然環境を総合的に理解する能力を身につけ、理解したことを地域内外の人々にわかりやすく正しく伝達・魅力を発信し、自然環境を楽しみ、守り、持続的に保護していく、責任のある行動をとれる「自然環境リテラシー」を身につけた人材育成を目的とする。この実習は、地域において、地域の方々の協力の下、プロの自然環境ガイドの方々と共に、安全・危機管理を徹底して実施、平成30年度は39名の学生が、尾鷲市、三重県の後援、尾鷲市天満浦(東紀州サテライト)および須賀利町の協力の下で実施し、地域の自然や地域のことを、体験・実感の中で学んだ。

その後、自然環境リテラシー学受講学生は,南伊勢町五ヶ所湾での海岸清掃、三重まるごと自然体験フェア(2017、10/27-28)へ尾鷲市の小山ハウスとの連携ブース出展、SEA TO SUMMIT (2017、11/11-12)へ2チーム参加、学生による尾 鷲市職員へのカヤック体験講座の実施(図1)、学生と地域ガイドのDMOの 勉強会(図2)など、地域での諸活動を展開するに至っている。大学の実習で学んだ学生が、地域貢献活動に参画する状況が生まれている。

しかし、地域人材育成が地域の急務の課題である。地域において、豊かな自然環境があるにもかかわらず、地域の小学生、中学生、高校生は、ほとんどその自然の中での体験や学習をできていない。そこには、小中高校の教諭が、自ら自然の中での体験・実感・知識が希薄で、自然のことを体験的実感的に教えることができない現状がある。子どもたちの親世代も、市町の役場職員も、自然のことを体験的実感的に教えることができない状況がある。日常的に海に出て漁業を営む漁師も、後継者不足の状況にあり、海のこと、自然のこと、海洋資源のことを伝える世代がおらず、また、自然のことを体験的実感的に教えることができない状況にある。

このような状況を受け、「地域の海をよく知る地域の人が地域の子どもたちに海を教える」、地域の産業振興と結びつけた自然資源を活用する地域人材育成を目的として、三重大学「自然環境リテラシー学」を学んだ三重大学学生とともに、市町、および、地域の漁業従事者とが連携して行う事業の展開を申請する。

本事業は、自然豊かな三重県南部において、その自然を活用したアウトドア・産業の創出・振興を目指し、また、漁業などの地域産業の維持・継承・発展に寄与し、地域の発展・活性化につながる地域貢献事業である。また、三重大学において実施する「自然環境リテラシー学」で学んだ大学生が、自然体験型の地域実習を、地域の小中高校教諭、市町役場の観光関係職員などに学んだこと、体験を伝えていく形態で、大学の実習が地域貢献に結びつける事業である。本事業は、持続可能な地域づくりため、地元の海を知り尽くしている地域で漁業・水産業を営む漁師が、アウトドア事業にもとりくみ複合的な形態を可能とし、また、新たな次世代の漁師を育成していけるよう、地元の漁師・自然環境ガイド・大学生が連携し、「自然環境リテラシー+地元漁師連携プロジェクト」として意義がある。

カヤック体験講座 DMOの勉強会
図1 図2

2.活動地域と内容

【活動する地域】

平成31年度は、南伊勢町、および、尾鷲市を活動地域とする。南伊勢町では、自然体験ツアーなどを実施している、サニーコーストカヤックス(代表 本橋洋一氏)、漁業・養殖業を営む有限会社友栄水産(代表 橋本純氏)、および、南伊勢町役場(小山巧町長、南伊勢町商工観光課 山本高弘課長、弓場悟係長)と連携してすすめる。平成31年度は、南伊勢町においても関連予算を計上していただくことが決まっている。尾鷲市では、自然体験ツアーなどを実施している小山ハウス(代表 森田渉氏)、須賀利で漁業を開始した(株)ゲイト(代表 五月女圭一)、尾鷲市商工観光課(芝山有朋参事)と連携してすすめる。

【内容】

持続可能な地域づくりため、地元の海を知り尽くしている漁業・水産業を営む漁師が、アウトドア事業にもとりくみ複合的な形態を可能とし、また、新たな次世代の漁師を育成していけるような「自然環境リテラシー+地元漁師連携プロジェクト」を実施する。具体的には、三重大学「自然環境リテラシー学」の参加学生を中心にして、以下の3点に取り組む

  • (a)複合経営(漁業+マリンアウトドア)ワークショップの実施
    事業形態として、漁業を営む漁師が、自然体験ツアーなど、地元の海を知り、守り、育てていくようなアウトドア事業に取り組めるよう、考え方、経験、具体的なとりくみがまなべるようなワークショップを実施する。南伊勢では、宿田曽、五カ所、奈屋浦、神前浦、尾鷲市では、須賀利町で実施する。
  • (b)「自然体験・アウトドア+漁業」体験プログラムの実施
    実際に、自然体験・アウトドア+漁業を体験できるようなプログラムを開発し、実施する。五ヶ所湾、須賀利湾で実施することを想定している。
  • (c)大学生・地元漁師・ガイドによる小中高校での「地域の海学」授業の実施
    「地域の海をよく知る漁師が地域の子どもたちに海を教える」具体的な取り組みとして、地元漁師・自然環境ガイドによる小中高校・高校での授業を実施する。

3.期待される活動成果等

以下のような成果が期待される。

  • (ア)持続可能な地域づくりため、地元の海を知り尽くしている漁業・水産業を営む漁師が、複合経営(漁業+マリンアウトドア指導など)していくことができるようになる。
  • (イ) 「地域をよく知ってる人が地域の海を教える」ことができるような、地域の人々(漁師)による地域の人材育成を、大学と連携して行うしくみができる。
  • (ウ)地元水産業(真珠養殖、海藻養殖、干物業者、かさご漁師など)に関わる地域の人々ともに,コミュニティスクールのように「地域の人々による地域の人々自身が学べる」しくみができる。
  • (エ) 地域の子どもたち、大学生の育成などを通して、アウトドア地域産業創出、エコツーリズムの促進による地域経済の活性化に関するとりくみが生まれる。
  • (オ)地元の漁師・自然環境ガイド・大学生が連携し、地域の小中学校・高校生に対し、子どもたちが地元の自然を愛し、守り,自然の中で生き抜く力の育成を促進するような取り組みを、小中学校・高等学校と連携して行うしくみができる。

→2019年度活動状況報告書