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30_宮川用水のパイプライン内のタイワンシジミ詰まり問題解決に向けて(継続2年目)

【活動の概要】

1.本活動の背景,必要性,目的

中国・台湾原産のタイワンシジミは,畜養や混入などにより日本国内でも1980年代後半から生息が確認され,急速に生息域を広げています。特に,日本原産のマシジミと生息域が重なり,マシジミよりも繁殖能力が高く,マシジミを駆逐する勢いにあり,外来生物法で要注意外来生物に指定され,「ペスト種」として扱われています。このタイワンシジミはアメリカなどでは発電所内のパイプラインを閉鎖する等の被害によって大きな経済的ダメージを与えていますが,日本ではこれまで産業に影響を与える事例の報告はありませんでした。ところが,2014年から宮川用水のパイプラインでの詰まりによって,水田に水が出ないというような被害事例が報告されるようになり,年々被害報告は増加しています。宮川用水を利用している農家は,水田の給水栓から水がでない状況に対して,給水栓を分解して詰まったシジミを定期的に高圧洗浄機で洗い流すという多大な労力で対応している状況にあります。にもかかわらず,タイワンシジミのパイプライン内での生息,繁殖状況もわからず,どのような対応をしていけばいいのかも分からない状態にあります。

 本活動では,このような三重県内の農村地域におけるタイワンシジミ被害に対して,その解決の第一歩として状況把握を行うことを目的とします。状況把握においては,分野横断的に研究連携し,どのタイプのタイワンシジミがどこから侵入し,どのような条件で生息し,どこで繁殖しているのかという生物学的把握と,パイプラインのどのような構造の部分でどのようなメカニズムで詰まっていくのかという工学的状況把握の両面からのアプローチを考えています。

2.活動する地域と内容

活動地域は,三重県多気郡大台町,多気町,明和町,度会郡玉城町,伊勢市です。地元のパイプラインの管理団体である水土里ネット宮川用水や三重県農林水産部農村基盤整備課,東海農政局農村振興部と協力してパイプラインの途中にある排泥工という泥を出す場所から定期的にタイワンシジミを排出してもらい,それをサンプルとして分析していく予定です。また,パイプラインが経由している池内でのタイワンシジミの生息状況や,水を採取して水質を分析することで繁殖や生息の条件を探っていきます。さらに,貝が流れる水の速さや水温,貝のたまりやすいパイプラインの構造把握,給水栓での詰まりの過程の解明などを行う予定です。特に水温については,最近の気候変動との関連から厳しく精査される必要があると考えています。

関連団体との協力関係については,三重大学生物資源学部と東海農政局との連携協定,農業土木系教員と三重県農村基盤整備課との連携協定実績により確実な連携が可能です。

3.期待される活動成果等

アメリカの発電所冷却水パイプライン,上水施設パイプライン詰まりの事例などでも,莫大な事業費をかけながらも抜本的な解決策は未だ確立されていないこの問題は,活動期間内で劇的な解決策の提案が難しいかもしれません。しかし,農家と管理団体や自治体と大学が共同で地域の問題に取り組むことで,宮川用水のタイワンシジミ問題に適した緩和・抑圧策を見出すことができます。国内初の事例であり,今後のタイワンシジミの被害拡大が予想されることもあることから,三重県での研究事例が国内で今後起こるであろう同様な事例の先駆的な研究となり,農業用水事業に限定されない工業用水・水道用水を含む配水事業全体についての予防策あるいは改善策の提案ができるようなることにも大きな意義があります。

→平成30年度活動状況報告書