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30_三重大学オリジナル酒米品種「弓形穂」を活用した多気町地酒ブランド作りへの貢献(継続2年目)

【活動の概要】

1.本活動の背景,必要性,目的

日本酒の消費量は減少の一途を辿っている。低迷する日本酒業界における生き残り策として,全国的に利用されている酒米品種の「山田錦」や「五百万石」とは一線を画し,地域独自の酒米品種を原料として醸造する試みが各地で実践されている。

三重大学生物資源学部附帯施設農場(以下,大学農場)は,三重県在来の酒米品種である「伊勢錦」から「弓形穂」を育成した.「弓形穂」は農林水産省に品種登録され,三重県における醸造用玄米の選択銘柄にも指定されている.現在,大学農場から供給された「弓形穂」の種子を元に,三重県多気郡多気町四疋田の農事組合法人四疋田営農組合(以下,営農組合)が原料米を生産し,同町の河武醸造株式会社(以下,河武醸造)がその原料米から清酒を醸造している。

「弓形穂」で醸造した清酒の人気は高く,酒米品質に対する河武醸造からの評価も高い。
河武醸造は清酒の増産を計画し,多気町役場はこの清酒を地域ブランドとして推進する意向を示している。一方,原料供給を担当する営農組合は,弓形穂の栽培技術が確立していないことから,高品質な原料を安定的に供給する難しさを訴えている。

そこで本活動では,「弓形穂」の高品質安定多収栽培技術を確立し,多気町地酒ブランド作りに貢献することを目的とする。本活動は,平成29年度に三重大学地域貢献事業支援助成を受け,営農組合の栽培状況を調査し,大学農場で栽培試験を実施した。その後,関係者が一堂に会する協議会を開催し,「弓形穂」の高品質安定多収栽培技術について議論した。平成30年度には,平成29年度の活動から浮かび上がった課題を改善するため,新たに現地調査と栽培試験を実施する。

2.活動する地域と内容

【栽培試験:大学農場】
平成29年度に大学農場で実施した栽培試験の結果は,施肥法の改良により安定的に多収を実現できる可能性を示唆した。その一方で,提案された改良型施肥法を実施することで,酒米品質が低下する懸念も示唆された。そこで平成30年度は,改良型施肥法が「弓形穂」の生育,収量,酒米品質に与える影響を調査する。平成29年度と同様に,「弓形穂」の反応を「山田錦」,「神の穂」,コシヒカリと比較する。なお「山田錦」と「神の穂」は,三重県における醸造用玄米の必須銘柄である。コシヒカリは三重県における水稲うるち籾の必須銘柄で,県下栽培面積の約80%を占める主力食用米品種である。平成30年度には,「弓形穂」の酒米品質を著しく低下させる穂発芽を回避するため,早期栽培の可能性を探る計画であった。しかし,高品質安定多収栽培技術の確立には,施肥法のさらなる改善が必須であると判断し,当初計画を変更する。

【現地調査:営農組合(三重県多気郡多気町四疋田)】
平成29年度の作期後に開催された協議会において,営農組合は改良型施肥法の導入に強い意欲を示した。しかし,改良型施肥法の有用性は,栽培試験の結果から理論的に導き出された仮説である。そこで,営農組合の管理する水田の一部で改良型施肥法を導入し,その効果を検証することを提案した。平成30年度には,「弓形穂」栽培開始前に改良型施肥法導入の是非について営農組合と協議する。導入の如何に拘わらず,生育期間中には植物体の生育量を計測し,収穫時には収量および酒米品質を調査する。

3.期待される活動成果等

営農組合における「弓形穂」の栽培技術が改良され,高品質な酒米原料を安定的に供給可能になることが期待される。安定供給が達成されれば,「弓形穂」を原料とした清酒の生産量が増加し,多気町役場は清酒を地域ブランドして広報に利用できることが期待される。

栽培技術の改良により高品質な種子生産も可能となるため,「弓形穂」の栽培面積(栽培農家)が増加する可能性もある。また,調査は申請者の指導生が卒業研究として実施するため,学生が地域農業の実態を肌で感じる絶好の機会となる。多気町役場は,学生が地域の活動へ参加する機会を歓迎しており,学生と地域住民との交流活動へ発展する可能性もある。

→平成30年度活動状況報告書