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30_歯科のない病院における口腔ケアの現状の把握と標準化の試み

【活動の概要】

1.本活動の背景,必要性,目的

がん患者の周術期における口腔ケアや歯科治療を連携・協力して進めることにより,各種がん治療の副作用・合併症の予防や軽減など,がん治療効果の向上およびがん患者の療養生活の質の向上を目指すことを目的とし,平成25年に三重県,三重大学医学部附属がんセンターが中心となり活動している三重県がん診療連携協議会,三重県歯科医師会の3者ががん患者医科歯科連携協定を締結し,連携・協力してがん患者が口腔ケアや歯科治療等の口腔管理を行うことができる体制整備を行っている。

三重県においても,歯科のある病院では主に歯科衛生士,歯科のない病院では主に看護師による口腔ケアが行なわれているが,その効果に対する評価が未だ明確になっていない。

口腔衛生状態の悪化による,肺炎や心疾患,脳血管疾患等の発症との関連が報告されており,医科歯科連携による口腔ケアの重要性が大きな関心事となっているが,口腔ケアの重要性の評価が定まらない事からも歯科のない病院における歯科衛生士の配備,常勤配置は現時点ではほとんど行なわれておらず,効果的な口腔衛生管理を行うシステムがないのが現状である。

また,地域包括ケアシステム構築における歯科の体制整備として,平成26年度より各郡市歯科医師会を口腔ケアステーションと位置付け,在宅歯科医療の充実および病院や高齢者施設等での専門的口腔ケアの普及をめざし,歯科医師の指導のもと歯科衛生士による口腔ケアが行なわれているところである。

そこで本事業を活用し,病院における口腔管理の標準化を目指して,まずは歯科のない病院において,歯科衛生士による専門的口腔ケアが実施されている病院と実施されていない病院間で口腔ケアの実態を調査し,専門的口腔ケアの効果の評価を行う。その結果を受け,歯科医師会,歯科衛生士会の協力のもと歯科のない病院に歯科衛生士を配置し,病院関係者への専門的口腔ケアに対する理解と普及に努め医科歯科連携を図ることによって,患者の疾病に対する副作用・合併症の予防や軽減など,治療効果の向上および患者の療養生活の質の向上を目指したいと考える。

その際,口腔内衛生スコアや二次疾患の発症率などの指標をもって,有効性を示す必要がある。本活動は,歯科のない病院への歯科衛生士の配置事業の設立,及び歯科衛生士養成学校での本分野での指導者の養成も含まれ,今後の三重県の医科歯科連携の推進により県民の口腔衛生の向上を目指す画期的な取り組みである。

2.活動する地域と内容

対象は,県内の自治体所管の歯科のない病院で,歯科衛生士による専門的口腔ケアが実施されている病院と実施されていない病院をそれぞれ3件程度抽出し,患者の口腔衛生管理の実施の有無,管理内容等について,実施者,患者の満足度調査,病院職員へのアンケートを行なう。実施にあたっては,三重大学医学部附属病院,行政,三重県歯科医師会および三重県歯科衛生士会が協議を深め,対象病院に対しても十分な説明と理解を得た上で進めていく予定である。

また,歯科のない病院における口腔衛生指導実施前後の,口腔スコアや二次疾患の有無について追跡調査を行なうとともに,口腔衛生指導を実施する歯科衛生士の技術レベルを保つために,教育された複数の歯科衛生士が,対象病院に同一回,指導する必要がある。

スケジュールとしては,1年目はアンケート調査の実施,評価を行い,その結果をもとに,早ければ1年目の終わり,遅くとも2年目より,作業内容と時間,期間等を決定し歯科衛生士配置事業を進める。配置開始半年後,1年後,1年半後,2年後に口腔内スコア等を活用,データ化し,期間内の評価を行ない,今後,自治体および病院への歯科衛生士の配置への検討について働きかける。

3.期待される活動成果等

歯科のない病院における患者の口腔ケアの実施は,口腔を起因とする2次疾患の発症を防し,生命の安全と医療費の抑制も期待することができる。最終的には県民の口腔衛生の向上が期待できることから,歯科のない病院においても,専門的口腔ケアを実施することができる歯科衛生士を配置することにより,患者の疾病に対する副作用・合併症の予防や軽減など,治療効果の向上および患者の療養生活の質の向上を期待することができる。

県内には,歯科衛生士養成学校が3校あり,養成学校とも連携することにより,本分野における新たな指導者の育成および歯科衛生士の新たな雇用の創出にも繋げることができる。

また,本研究は,三重大学,県内病院,県行政,三重県歯科医師会,三重県歯科衛生士会,歯科衛生士養成学校等と連携し体制を整備することにより,医科歯科連携による地域貢献を目指すものである。

→平成30年度活動状況報告書