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運営費交付金の削減に関して声明を発表しました

2015年12月03日

 本学経営協議会学外委員による「財政制度等審議会における財務省提案に関する声明」及び、本学学長による「運営費交付金による安定的な財政支援の確立について」を公表します。


財政制度等審議会における財務省提案に関する声明


平成27年11月25日

国立大学法人三重大学経営協議会学外委員(50音順)

青木 重孝(公益社団法人三重県医師会 会長)
志田 行弘(三重テレビ放送株式会社 相談役)
鈴木 英敬(三重県知事)
銭谷 眞美(東京国立博物館 館長)
髙木 純一(学校法人鈴鹿医療科学大学 理事長)
西岡 慶子(株式会社光機械製作所 代表取締役社長)
向井 弘光(ICDAホールディングス株式会社 代表取締役社長)
村本 淳子(公立大学法人三重県立看護大学 名誉教授)
渡辺 義彦(株式会社百五銀行 代表取締役副頭取)

 私たちは国立大学法人法に基づき設置されている経営協議会の学外委員として,平成27年10月26日に開催された財政制度等審議会財政制度分科会において財務省が示した今後の「国立大学法人運営費交付金」に関する提案に大きな危機感を抱き,本声明を発表します。

 国立大学に対する基盤的な経費である運営費交付金は,年々削減が続いています。その削減額は,国立大学法人制度が発足した平成16年度以降の11年間で1,470億円,三重大学においても10億円と巨額な規模となっており,教育,研究,社会への貢献など,大学に求められる諸機能を維持していくことがきわめて厳しい状況となっています。

 こうした中,さきの財政制度等審議会財政制度分科会において財務省は,国立大学の運営費交付金を毎年1%削減し,授業料等の自己収入を増やすことを提案しました。

 財務省は,運営費交付金を削減することによってはじめて自己収入確保等のインセンティブが生まれると主張しています。しかしながら,三重大学をはじめとする各国立大学は,これまで,運営費交付金が削減される中でも授業料の値上げは行わず,国立大学に期待される教育の機会均等の役割の維持に努めています。これまでの運営費交付金の削減に対して,各国立大学は,教育や研究に係る経費を切り詰めることで対応しています。これが国立大学の実情であることを,国立大学の経営に関わる者として強く訴えます。

 昨今,「地方の活性化なくして,国全体の成長はない」と言われ,地方創生の重要性が指摘されています。とりわけ,三重県は全国で最も深刻な若者の流出状況にあり,三重大学のみならず県内すべての大学は,地方創生のエンジンとしての役割が強く期待されています。

 このような状況にかんがみ,三重大学では,来年度から始まる第3期中期目標期間の6年間で,三重県内への就職率を大幅にアップさせることや中小企業をはじめとする地域産業界との連携を国内トップクラスに高めるなどの高い目標を掲げ,地域イノベーション大学としての機能をより一層強化していく構想をとりまとめ,全学をあげて改革を推進していくこととしています。

 運営費交付金の削減は,こうした大学の機能強化への取り組みの実現を危うくするばかりか,現状の教育の質や研究の水準の維持すら難しくするものであり,また,経済格差による教育格差の拡大や家庭における費用負担増から更なる少子化の進展にもつながるものとして,強く危惧するところです。

 国の財政事情はきわめて厳しい状況にあると承知していますが,大学における人材育成や学術研究の推進は我が国の将来の持続的発展に不可欠なものです。三重大学をはじめとする国立大学が,地域の「知」の拠点としての責務を果たしていける安定的な財政支援の確立に向けて各方面の御理解を求めるものです。 


運営費交付金による安定的な財政支援の確立について


平成27年11月26日
国立大学法人三重大学
学長 駒 田 美 弘

 平成27年10月26日に開催された財政制度等審議会財政制度分科会において財務省が示した今後の「国立大学法人運営費交付金」に関する提案に大きな危惧を持ち,国立大学法人三重大学の経営責任を負う者として以下のとおり表明します。

 国立大学に対する基盤的な経費である運営費交付金は,平成16年度以降,年々削減が続いています。本学も平成16年度の法人化以降,約10億円(約8%)削減されています。

 このような中,さきの財政制度等審議会財政制度分科会において財務省は,運営費交付金の減少があってはじめて授業料の引き上げなどの自己収入を確保する努力やインセンティブが生まれると主張し,国立大学の運営費交付金を今後15年間毎年1%ずつ削減し,授業料等の自己収入を増やしていくことを提案しました。
しかしながら,本学をはじめ各国立大学では,国からの運営費交付金の縮減の中でも授業料の引き上げは行わず,自律性をもって国立大学の責務である高等教育の機会均等の確保に努めてまいりました。この間,教職員一丸となって経費縮減に努め,難局を乗り切ってまいりました。

 財務省の提案のとおり運営費交付金が削減された場合,本学ではさらに約17億円削減されることになります。この金額は,本学の教員175名分の人件費に相当します。仮に,これを授業料に転嫁した場合,学生一人当たり約26万円の負担増となります。

 少子高齢化が進行し生産年齢人口が減少することが確実な我が国が,将来にわたって持続的に発展していくためには,個々人の能力を高めていくことがますます重要になってきています。また,大学における学術研究を一層推進するとともに,その成果をより広く社会に還元していくことが必要です。このため,本学では,より地域社会の求める人材の育成やより密接な地域社会との連携に向け,平成28年度から始まる第3期中期目標・計画期間の6年間に取り組むべき大学改革構想をとりまとめ,全学をあげた取り組みを推進することとしているところです。

 しかしながら,このたびの運営費交付金の削減が現実となれば,この改革の実現はもとより,現状の教育の質や学術研究の水準を維持することさえも困難となると強く危惧するものです。

 本学をはじめ各国立大学が,国立大学法人法において定められた「我が国の高等教育及び学術研究の水準の向上と均衡ある発展を図る」という役割をそれぞれの地域で果たしていくためには,運営費交付金による安定的な財政支援の確立が不可欠であり,各方面の御理解をお願いします。




PDFファイルダウンロード
 平成27年11月25日「財政制度等審議会における財務省提案に関する声明」(PDF159KB)
 平成27年11月26日「運営費交付金による安定的な財政支援の確立について」(PDF135KB)

(参考)※財政制度等審議会 財政制度分科会
 https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/index.html