2019年03月11日
3月2日(土)、三重大学環境・情報科学館において、三重県内のユネスコスクールが三重大学に集まり、「三重ESDコンソーシアム 三重大学ユネスコスクール研修会2018」を開催しました。
三重大学は、2009年8月21日に日本の総合大学初のユネスコスクールに登録し、ユネスコ持続可能な開発のための教育(ESD)の積極的な推進のため、産官学民との協働体として「三重ESDコンソーシアム」を構築し、日本のトップランナーとして活動しています。三重県内の28校の小中高大学がユネスコスクールとして登録、または、ユネスコスクール登録を目指して、地域特性を活かした多様な活動を行っています。三重県は、南北約170km、海岸線約1000kmの多様な自然環境による多様な文化圏を形成していることから、ユネスコスクールの量的拡大だけでなく、多様な活動による質的向上が期待でき、三重大学は基幹校として、三重県内のユネスコスクール支援活動を行っています。
まず、加納 哲理事・副学長は、国連持続可能な開発目標(SDGs)の達成のため、三重大学が取り組んでいる活動及び1月に国連アカデミック・インパクト(UNAI)に登録したことなどを紹介しました。また、三重大学ユネスコスクール研修会2018を通じて、ESD活動とSDGsとのリンクによる三重県内のユネスコスクール活動の発展的展開を期待したいとの挨拶がありました。
挨拶する加納 哲理事・副学長
次に、朴 恵淑人文学部・地域イノベーション学研究科教授は、三重大学のユネスコスクール活動及び三重県内のユネスコスクール支援活動、日本のサステイナブルキャンパス(CAS-Net JAPAN)主催のSC賞(大学運営部門賞)を三重大学が受賞したことを報告しました。国際活動として、2018年11月30日から12月2日に韓国延世大学で開催された、日本・韓国・中国・タイを含むアジア諸国との持続可能なキャンパスネットワーク(ASCN; Asia Sustainable Campus Network) 構築について報告を行いました。MOU締結の場に、パン ギムン前国連事務総長が出席するほど、ASCNへの高い関心が集まっていることや三重大学のリーダーシップが大いに期待されていることが報告されました。
また、2015年9月の国連持続可能な開発サミットにおいて、世界各国が2016年〜2030年までに最優先で取り組むべき17の目標と169のターゲットからなる持続可能な開発目標(SDGs)が採択されたことに言及しました。特に、質の高い教育をみんなに(目標4)及びパートナーシップで目標を達成しよう(目標17)は、大学の共有価値(SV)の創出に有効なツールとなることを強調しました。さらに、2019年2月1日の三重大学北勢サテライトの開設と共に「SDGs研究会;代表--朴 恵淑」が発足し、行政・企業・学校・NPOを対象とするSDGsの講演会、連続講座などが行われていることが報告されました。
報告する朴 恵淑人文学部・地域イノベーション学研究科教授
続いて、名張市立薦原小学校の食に関わる活動報告、皇學館中学校で実施しているグローバル人材育成プログラムの一環として英語による国際理解教育、伊勢ガイドツアー、海外短期研修についての報告、高田学苑中学校での二酸化炭素測定活動報告、三重県立四日市高校のスーパー・グローバル・ハイスクール(SGH)の活動報告、セントヨゼフ女子学園高校・中学校でのボランティア活動や歩きながら募金活動を行い、シエラレオネ、フィリピン、釜石市への支援活動の報告、三重中学校・高校での伊勢湾最大の干潟である松名瀬干潟での清掃活動及び生物多様性学習による三重県初のラムサール条約登録に向けた活動報告が行われました。三重大学環境ISO学生委員会の3R活動や緑化活動、地域連携活動報告、三重大学男女共同参画推進学生委員会が実施した、日中韓の大学生542名に対する男女共同参画に関する意識調査の結果報告が行われました。特に、日中韓の男女共同参画に関する伝統的な意識(男性が外で働き、女性が家庭を守る)に大きな差が見られ、三重大学生は男女ともに約50%がそう思うとの回答の一方で、韓国と中国の大学生は約80-90%以上がそう思わないとの回答が得られたことが報告されました。三重大学ESD-SDGsクラブからは、中電浜岡原子力発電所の見学を通じたエネルギー安全保障についての報告が行われ、火力発電、再生可能エネルギー、原子力発電とのエネルギーベストミックスについての報告、また、中国のWe Chat(SNSメディア)を活用した三重県の魅力や文化などの発信活動の報告が行われました。三重地区中国人留学生学友会は、日中友好平和条約締結40周年記念イベントの成果として、日本の自治体初となる三重県の「みえグローカル学生大使」制度が創設され、国際交流活動がさらに積極的に行われるようになったことが報告されました。
![]() 名張市立薦原小学校の発表 |
![]() 皇學館中学校の発表 |
![]() 高田学苑中学校の発表 |
![]() 三重県立四日市高校の発表 |
![]() セントヨゼフ女子学園中学校・高校の発表 |
![]() 三重中学校・高校の発表 |
![]() 三重大学環境ISO学生委員会の発表 |
![]() 三重大学男女共同参画推進学生委員会の発表 |
![]() 三重大学ESD-SDGsクラブ(エネルギー・環境)の発表 |
![]() 三重地区中国人留学生学友会の発表 |
終了後、参加者全員の記念撮影が行われ、国内外のユネスコスクール活動のさらなる発展的展開が期待されました。
参加者全員の記念撮影
引き続き、「平成30年度三重大学・中電(株)協働事業エネルギー環境教育報告会」が行われました。平成17年に三重大学と中電(株)との包括協定を締結し、平成19年度から人文学部・地域イノベーション学研究科の朴 恵淑教授と教育学部の松岡 守教授によるエネルギー環境教育が実施され、ユネスコ持続可能な開発のための教育(ESD)と国連持続可能な開発目標(SDGs)とのリンクによる、ESD-SDGsの先駆的事業として実施されています。
朴 恵淑教授は、大学生及び地域の環境リーダーを対象としたエネルギー環境教育;ESD-SDGsの発展的展開」をテーマとする成果を報告しました。特に、企業は、これまでの企業の社会的責任(CSR; Cooperate Social Responsibility)を果たすだけでなく、より積極的な企業の社会的共通価値(CSV; Creating Shared Value)を生み出す価値観の転換が必要であり、次世代を担う若者や地域のリーダー要請が必要不可欠であることを強調しました。
報告する朴 恵淑人文学部・地域イノベーション学研究科教授
続いて、地域イノベーション学研究科の大西昌子氏による浜岡原子力発電所見学を通じたエネルギー政策に関する研究報告、三重県地球温暖化防止活動推進センター推進員の新山勝保氏による浜岡原子力発電所見学を通じた、南海トラフによる巨大地震発生に備えた津波対策に関する報告が行われました。
![]() 地域イノベーション学研究科の大西昌子氏の発表 |
![]() 三重県地球温暖化防止活動推進センター推進員の新山勝保氏の発表 |
松岡 守教授は、三重大学での電気設備見学、名城変電所や西名古屋火力発電所見学会、六ヶ所村内施設見学会の報告及び、平成19年度から現在までのエネルギー環境教育に関わった小中学校の教員が年々増加していること、エネルギー教育プログラム開発、内容の充実化が進んでいることを報告しました。
報告する松岡 守教育学部教授
その後、実施教員による12件の事例発表が行われました。小学校1年生から中学校3年生を対象とした、海に関わる表現活動、身近な自然に対する気づきを高める授業、生活科での授業、目的地に辿り着くゲーム、季節と生物、くるりんペーパー、非連続型テキストに着目したクリティカル・リーディング、人類と地球の未来、プラスチックゴミの削減、中学校理科を中心とするエネルギー環境教育、電気自動車の試作、三重県中学生Ene-1プロジェクト SUZUKAへの挑戦Vol.7など、多様で充実な内容の発表が行われました。
![]() 教員によるエネルギー環境教育プログラムの発表 |
![]() 教員によるエネルギー環境教育プログラムの発表 |
最後に、中電(株)の長谷川真人環境経営グループ長による、低炭素社会・持続可能な経済社会の構築に向けたエネルギー供給源として、中部(株)の戦略となるS;3E、すなわち、安全確保(Safety)、安全供給(Energy Security)、経済性(Economic Efficiency)、環境保全(Environment)について説明の後、次世代を担う学生、地域の環境リーダー、教員の協力による人材育成に大いに期待するとの総括が行われました。本事業は、平成31年度においても引き続き行うこととなりましたので、さらなる発展的展開が期待できます。
総括する長谷川真人中電(株)環境経営グループ長